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4. 白夜 ~ 南南西に進路を取れ


ゼウスを間に挟み、左右にベガとアルタイルが並んでドッキングした。

これで各車、行き来ができる。全員がゼウス内で合流した。

木の温もりを感じさせるダイニング、座り心地の良いベンチシート。

ここが集合した時の会議室だ。


先ほどの鳥獣に対し、ある程度の攻撃をしなければ、いつまでも去らないかもしれない。しかし、無謀な行動は慎むように、と源さんが苦言を呈した。


「でもこれから、どうすんの?」 風太が聞いた。

「うむ……。アマビエたちがレーダーに映らないと、動くに動けんからな」

源さんが腕組みをする。


「だから、サスケを連れてくればよかったんだよ」

風太は不機嫌そうだ。

サスケは鼻が利くので、子泣き爺たちを追跡してくれたのではないか、との考えだ。確かに、サスケやヤッターがいたら、役に立つことがあったかもしれない。


しかし俺は以前、源さんから聞いていた。

(相手が九尾の狐であろうが恐竜であろうが、サスケやヤッターは敢然と立ち向かうだろう。そうなると大変だ。もし、やられでもしたら、風太は黙っちゃいない。自分がどうなろうが、我を忘れて突撃するだろう。あれは、そんな子だ) 


だから、サスケとヤッターは連れて行かない、との源さんは俺に言ったものだ。

その言葉にまったく異論はなかった。



まるで白夜のようだった。

外は明るいが、もう深夜なのだ。

あてもなく動き回っても意味がない。

 

今日はここで泊まることにした。

一晩中シールドするのは、バッテリーを消耗しすぎるから、センサーライトをセットした。恐竜が近づいてきたら、強烈な照明を浴びせるためだ。

俺と茜はそれぞれ、自分の車に戻った。

 


茜が叫んだのは、車に戻った直後だった。

『あ、光った!』 

 

その声に反応して、アルタイル内で俺はディスプレイを見た。

しかし、妖気レーダーには、九尾の狐しか映っていなかった。

ゼウスも同じようだった。

『え? 見えないよ………。あか姉』

『おかしいなあ、さっきは確かに赤く点滅したのよ』

どうやら一瞬だけ、点滅したようだ。

でもこれは極めて重要な情報だ。アマビエたちの誰かをレーダーが捉えたのだ。

なぜ、すぐに消えたのか分からないが……。


見ているのは共通のデータだから、今はどの車もレーダーにも映っていない。

『方向は、分かるかね』 源さんが聞いた。

『——南南西でした』



翌日。

いよいよ出発だ。


就寝中、車は襲われなかったが、センサーライトの点灯は一回で、レコーダーに首の長い恐竜が映っていた。

——やっぱりこの丘にも、恐竜はやってくるんだ。


『グリスホッパー』

各車とも昆虫のように、足を六本出した。バッタのように後ろ足が長く、ジャンプができるのだ。この足のことをグリスホッパーと呼ぶよう申し合わせてあった。

ジャッキアップされたように、車が宙に浮く。

前の足は、物を掴めるように指が付いていた。


『良いか、みんな』

源さんの声に、俺と茜が準備万端を告げた。

茜が一瞬見た赤い点滅に賭けてみよう、というが源さんの判断だった。


『よし、行くぞ。南南西に進路を取れ』

ゼウス、ベガ、アルタイルの順番で、草むらを飛び跳ねるように下っていく。

グラスホッパーの後ろ足はジャンプに最適だ。

次第に、茂みが深くなっていく。足の分だけ高いので、見通しは悪くない。

草むらをかき分ける。車に葉が擦れる。パシャ、パシャ、パシャ。

前方に高い木立の森が見えてきた。



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