3. 鳥 獣
「およそ半径二十キロメートルの島のようじゃな」
源さんは、遠くを見ていた。
そのほぼ中心辺りに、パノラマの丘がある。
「あのね」
俺は二点、聞きたいことがあった。
「まず、レーダーにアマビエたちは、映っていないようだけど」
「確かにそのようじゃ。しかし、わしにもその理由は分からん。九尾の狐は映っておるが………」
源さんは、困惑した表情だ。
二つ目は、座敷童子たちもこの同じ場所に降り立ったとして、すぐに恐竜に襲われたりするのか、という疑問だ。
すぐ近くには、座敷童子が隠れたらしき大きな岩はあるのだが。
「うむ……。同じ場所とは限らんが、どこであろうと、偶然、恐竜と出くわす可能性はあるんじゃないか。それに——」
源さんが言い終わらぬうちに、一瞬さっと天が曇った。
ピピッ、ピピッ、ピピッ、ピピッ。
各車が異変を察知して警報を発する。
頭の上で鳥獣が飛んでいた。
「逃げろ——!!!!」
俺たちは、車に飛び乗った。
屋根のパネルをスライドさせたが見えにくい。
フロントガラスを全面スクリーンにする。
全指向性カメラの照準を鳥獣に合わせる。
プテラノドンのような長いクチバシの翼竜が、頭上に二匹いた。
——もしこれが襲ってきたら、子泣き爺たちも逃げただろうな。
威嚇するかのように、ス——ッと急降下してくる。
『シールドしろ! 地面を掴め!』
源さんはバリアで車を防御して、なおかつ、持って行かれないように、しっかり地面をつかんでおけ、と忠告している。
プテラノドンがベガに掴みかかる。
カシャ、カシャ、カシャ、カシャ。
なぜかベガは、無防備だった。だからプテラノドンの爪を避けきれていない。
『あか姉、シールドしなきゃダメだよ!』
風太が叫ぶ。
プテラノドンがベガをがっちり掴んだ、その時だった。
バチッ!!!!
激しく飛び散る火花。
プテラノドンの足が、ビクンッと縮む。
ベガの放電によって、感電したのだ。
よほど驚いたのか、戦力を喪失して飛び去った。
しかし、もう一匹いる。
アルタイルに掴みかかって来た。俺もシールドを解いた。
『クモ! 糸を飛ばせ!』
アルタイルから複数のノズルが出て、粘着性の糸を吹き付ける。
顔や翼をめがけて一斉噴射。
プテラノドンは意表を突かれ、慌てている。
体に巻き付いた糸をなびかせて、プテラノドンは飛び立った。
もう少し遅ければ、飛べないほどぐるぐる巻きにされていたはずだ。