2. パノラマの丘
車体が激しく揺れた。
ゴオッッッッ——。
地響き、轟音。
閃光が走る。
身体が強くシートに押しつけられた。
数十秒続いたようだった。
静寂が訪れた。
異様な明るさだった。
高台にいるようだった。
『酸素濃度を調べる。しばらく待て』
源さんから、無線が流れた。
結果はすぐに出たようで、風太の声が聞こえた。
『みんな、酸素マスク外してもいいよ』
酸素濃度に異常はないようだ。
『各自、バッテリーの容量を確認せよ』
源さんの声が、車内のスピーカーに流れた。
『アルタイル、異常なし』
『ベガ、異常なし』
車にマイクやスピーカーが付いているが、それぞれの服にもスピーカー兼用のピンマイクが仕込んである。
実に便利だ。無線連絡に支障はなかった。
『ドローンを飛ばすので、しばらく待て』
ゼウスからドローンが飛び立った。地理を確認するためだ。
車内の液晶ディスプレイに地図が描かれていく。ぼんやり眺めていると、周りが黒く塗りつぶされていく。どうやら、ここは島のようだ。
戻って来たドローンが、ゼウスに収納される。
『便宜上、ここを起点に東西南北と緯度・経度を設定する。この位置をナビに設定せよ』
ディスプレイの地図上にゼウスから送られてきた指標が表示される。
これに、現在地を設定する。
俺たちは、島のちょうど中央あたりにいるようだった。
『妖気レーダーと生物レーダーをセットする』
さすがに源さんは、ソツが無い。
妖気レーダーが赤く示すのは、一点だけだ。
九尾の狐だろう。北端にいるようだ。
生物レーダーに黒く映るのが恐竜群で、所々に点在している。
『よし、外に出てみようか』
源さんから許可がでたので、みんな車外で一息ついた。
特に、暑くも寒くも感じなかった。
メノウと同じような不気味な空色。太陽は見当たらない。
この島の一番高い所にいた。三百六十度見渡せる、まさにパノラマだ。
この付近の地面は、まばらに短い草が生えていた。
眼下には遠く広がる森、湖らしきものも見えた。
「パノラマの丘だね」
風太がぐるっと見回しながら囁いた。