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12. 勇者たち


「茜と風太は、すぐ見つかった。身内はエネルギーがパワーアップするから、探しやすかった。逆に、他人同士が近くにいれば、打ち消しあって、妖気レーダーに映りにくくなってしまう」

あと一人どうしても探し出したかったが、なかなか発見できなかったという。 


「そしてようやく、見つかった。妖怪DNAを頼りに追跡して、恐らくこの男で間違いないと連絡を受けたのが……お前じゃ。しかし聞けば聞くほど、なんかピンッと来るものがない」

源さんは、困ったように俺を見た。


(明らかに雲行きが怪しい。勇者じゃないのかよ)

茜と風太は察知したように、顔が笑っていた。


「学校の成績は、たいしたことがない。反射神経や運動神経も、いまひとつ。いろいろ監視させてもらったが、ろくな報告が入ってこん」

「そりゃ、どうも」

俺に対する歪んだ評価だが、反発するのも面倒くさい。


「それに、ちょっと、階段で当たったくらいで、あれほど派手に転ぶとは——」

情けなさそうに、源さんが顔をしかめた。

「あれもかッ!!!! バカじゃないの!」                

もう、擦り傷や打撲は治っていたが、あらためて怒りが込み上げてくる。

一歩間違えれば、大怪我になっていた……かもしれない。


「まあとにかく、これでメンツは揃った。あとは、やるしかない」

源さんは士気を鼓舞するような口調だった。


(え? 俺、いつ了承した?)

茜や風太は納得したんだろうか。

このままでは、源さんに押し切られるような気がする。

まあいいや、そのうち必ず具体的な説明をするはずだから、様子を見よう。


俺はちょっと話題を変えた。

「そういえば、砂かけ婆さんが俺の顔をみて、何か言ってたよね」

「ああ、お前の顔に、源頼光の面影でも見たのじゃろう」

「?」

俺は、訳が分からなかった。



その夜、風太がおれの部屋を案内してくれた。

二階の角部屋。エアコンを入れて、テーブルの上に鍵と紙切れを置いた。

「じゃあね」 風太が自分の部屋に戻っていく。

紙切れは、Wi-Fi接続用のパスワードだった。


俺はこちらの行動を悟られないように、部屋の照明を消して、カーテンを少し開けた。庭で話し声がしていたからである。

外は暗かったが、外灯に数人の人影があった。例のサングラスの男たちだった。


ベッドに倒れ込む。今日は、なんか……疲れた。

ぼんやりと、天井を眺めた。片隅に一輪の花が描いてある。

何部屋あるのか知らないが、湯宿構想もまんざらウソではないのかもしれない。

いつのまにか、俺は、泥のような眠りに落ちた。



翌日、俺たち三人は源さんに従って屋敷の離れに向った。

離れも、大きくて立派な造りで、リフォームしたばかりのようだった。

廊下を曲がって、一番奥の部屋まで進む。鉄扉のオートロックを解除する。


——違和感しかないけど。


その時、同時に、中年の紳士が出てきた。

「あ、どうも」 源さんに頭を下げる。

「どうかね。進捗状況は」

源さんのほうが、立場が上のようだった。

「極めて、順調です」

紳士の言葉に満足そうに源さんは頷いた。

「ちょっと、見せてくれよ」

防火戸のような鉄扉の中は、ガラスで仕切られている広い部屋だった。


俺にだって、何となくわかる。コンピューター室だ。かなり奥行きがある。壁にずらっと並んだ機器類は、小さな光を忙しそうに点滅させていた。

五、六人の背中が見えたが、作業台が五台もあるわりには、閑散とした感じだ。

振り向いた一人と目が合った。今は外していたが、サングラスの男だった。


「出ようか」 源さんは、俺たちにこの部屋を見せたかったようだ。

表に出ながら、俺は源さんに尋ねた。

「あの人たち、誰?」

「システムエンジニアやプログラマーじゃ。もっと大勢いたが、もうほとんど済んでいて、あとは少人数で微調整をしておる」

人類の今後に関わる超極秘大プロジェクトだからな、と言って笑っている。

そういえばこの間、風太もそんなこと言ってたな。



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