エピローグ☆スパイ
私は愛。
一連のゴタゴタの最中に重要書類の入った封筒を紛失してしまった。
探し回って、どう考えても誰かがバッグから抜き取ったのだと結論づけた。
衛藤商事のビルに入る。
エントランス中央の受付に向かう。
2人の受付嬢。
「すみません、この方にお会いしたいのですが……」
病院でもらったあの男の名刺をかざす。
衛藤商事 第二課 部長代理 田中一朗
「これ……は」
受付嬢達が浮き足立つ。
「お客様、大変失礼ですが、この者は先日急病で他界いたしました」
「他界?……亡くなった?」
「はい」
嘘でしょう?
でもそれ以上食い下がれなくてビルから外に出る。
ものすごく、胡散臭い。
「よ!愛ちゃん、ここで何してんの?」
振り向くと、あの男!
「あなた、封筒とったでしょ!返せ」
「ありゃありゃ。俺の心配よりそっちですか」
とぼけた顔で言う。
「死んでないじゃない」
「いやー、俺も参ったよ。まさか取引先のあの人が亡くなるなんて思わなかったから」
「取引先の人の名刺を配り歩いとるんかあんたは!!?」
「そうとも言う」
「何ですって!」
きーっ!ヒステリックに叫ぶ。
「まあまあそんなに怒るなよ。愛ちゃんの産業スパイの最初の仕事、いいところまで行ったんだから」
「?」
「俺は先輩なの。今回の君の評価はBプラス。次回に期待」
「何……?」
怒りのあまりに、男の首を絞めた。すぐ引き離される。
「げほげほ。ほら、言うじゃないか?『007は2度死ぬ』って」
「待てー、ほんとに殺しちゃる!2度死になさい!」
「あははは」
走って逃げた。