第一王子エンド「1か月の恋人」
念の為R15指定です。
「俺はこの人を選びます」
第一王子はすかさず1番美しい令嬢の手を取りました。美しい令嬢に一目で心を奪われたのです。
「よしわかった、ではお前には国境近くの領地をやろう。2人で立派に治めなさい」
「ありがとうございます」
王子様はそのまま令嬢を自分の部屋に連れて行きました。
令嬢は小国のお姫様でした。長年侵略にさらされており、国と民を守る為自ら剣を持ち、戦いに明け暮れていました。
ようやく平和を勝ち取った途端、姫らしくないお姫様を厄介者扱いし、追い払われるようにこの国に嫁入りさせられたそうです。
身の上話を聞いた王子様はいたく同情し、ますますお姫様を愛しました。
お姫様も、優しく受け入れてくれた王子様を愛するようになりました。
2人は自領で狩りをしたり、護衛の騎士たちと手合わせをしたり、楽しく過ごしました。
しかし1か月後幸せいっぱいの筈の王子様が王城に飛びこんできました。
「父上どうか助けて下さい」
話を聞いてみんな驚きました。
お姫様は長年戦い続けた弊害で心を病み、血を見ないと気が済まない残虐な嗜好の持ち主でした。
初めは狩りで気を紛らわせましたがすぐに物足りなくなり、次に護衛の騎士達と手合わせをしましたが、歯止めが利かなくなり大けがを負わせるようになりました。血を見せないようにすると我を忘れて大暴れして、もはや王子様の手には負えませんでした。お姫様が国を追い出されたのも、この性癖が1番の原因だったようです。
王様と重臣達はお姫様を幽閉するか処刑するか悩みました。
お姫様の本性を知っても尚、王子様はお姫様を愛していたので「幽閉にしてほしい、命だけは助けてほしい」と嘆願しました。
しかしお姫様も王子様を愛してたので「正気を失って王子様を手に掛けるのも、幽閉されて生き地獄を味わうのも耐えられない。どうか死罪にしてほしい」と懇願しました。
結局お姫様の要望が通り、毒杯が与えられました。
王子様はお姫様の亡骸にすがって号泣しました。
後を追おうとしましたが「それでは兄上を生かす為、死を選んだ彼女の決意と犠牲を踏みにじる事になる」と弟に諭され断念しました。
その後王子様は身分を返上し自領から弟の治世を助けながら、1か月だけの恋人を生涯偲び続けました。