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超能力者だけど頭のおかしいゴスロリ美少女に脅されて人助けしてる  作者: 日暮キルハ


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いい人病と教室掃除

 掃除。去年、何かの授業で使われたのち放置されて今に至るらしい空き教室の掃除。なんか今年は選択授業の教室として使われるらしく、積もりに積もったであろう埃の処理や並んですらいないであろう机と椅子の準備を委員長は任されたらしい。で、件の教室を見て自分一人では対処しきれないと判断してこの部室を訪れたのだとか。

 そんなもんを委員長一人に任せんなと言いたくなるけれど、どうやら話を聞くにこの手の無茶ぶりは今日に限った話ではないらしい。常日頃から、生徒から、教師から、頼られ頼まれ、そして何だかんだで何とかしてしまう。だから、また頼まれて頼られる。


「もはやここまで来ると一種の病気だね」


 とは安心院の言葉。

 病気とまでは思わないにしても損な性格してるよなとは思う。大体、頼る方も頼る方だ。断らないからってそれに甘えても良いってことじゃないだろうに。

 人間なんだからできることがあればできないことだってある。少なくとも部屋中埃だらけで机と椅子がタワーのように積まれて端に強引に追いやられている教室の掃除なんてのは放課後に女子一人で何とかできる様な事じゃない。何とか出来てしまってもいけない。

 誰が頼んだのか知らないけど、もはや嫌がらせと言われた方がしっくりくるレベル。


 教室の汚れ具合を表すかのごとく真っ黒に汚れた雑巾を洗うために水を溜めたバケツを覗いて思わずため息が漏れた。真っ黒。底が見えないほどに濁った水。これでは雑巾を洗ったところで大した意味もない。

 もう何度往復したか数えてもいない。まだ校舎のこともろくに把握していないのにこの教室の近くの水道の場所はバッチリ覚えてしまった。

 水を交換しようとバケツを持って立ち上がったところで新聞紙で廊下から窓を拭いていた委員長と目があう。


「ごめんね。巻き込んじゃって……」


「や、別にいいよ。そういう部活だし」


 廊下に出ると心底申し訳なさそうな顔で謝られた。

 なるほど。たしかに安心院の言うことも一理あるかもしれない。病気だ病気。良い人病だ。

 そもそも謝るべきは委員長じゃない。委員長だって被害者みたいなもんだ。本当に申し訳ないと思うべきなのは、委員長にこれを丸投げした奴だろう。

 なのに、本気で謝っている。責任すら感じている。なんだそりゃ。


 ◇◆◇◆◇


 教室が、というよりかは床が綺麗になるにつれて雑巾の汚れも減っていく。雑巾の汚れが減ればそれを洗うバケツの水の汚れも減っていく。そろそろ床掃除も終わりだ。まだ水が透き通っていてきちんと底が見えるバケツと埃だらけだったころとは比べるまでもなくツヤツヤと輝く床がそれを雄弁に語っていた。

 一段落着いたので、先ほどから感じる視線の主に声を掛けてみる。


「……つーか、暇なら手伝ってよ」


「……? 見てあげてるでしょ?」


 ……だから?


 ダメだ。話が噛み合わない。

 教卓に腰かけて足を組みながら見下ろす安心院の心底不思議そうな顔を見ていると、苛立ちよりも先に「あぁ、こいつとは一生分かり合えないんだろうなぁ」という諦めの気持ちが湧いてきてしまった。泣ける。


「大体、床掃除は君の担当だろう? どうしてボクが手伝わなくちゃいけないのさ」


「そもそもそれがおかしいんだよ。床掃除と窓掃除と黒板掃除ってどう考えたって仕事量釣り合ってないじゃん」


 掃除を始める前、安心院が効率的に掃除するために担当箇所を分けることを提案した。

 大きく教室を分割して、床と窓と黒板という三つのエリアに分けられ、そのまま安心院がそれぞれの担当も決めてしまった。

 で、俺は床に。まぁ、それはいいんだ。女子がスカートで雑巾がけとかしたらうっかり下着が見えかねないし。そうなったら健全な男子高校生の俺はずっと上向いて掃除する羽目になっちゃうし。

 でもさ、別に床掃除って雑巾がけだけじゃないじゃん。ほうきとかモップとかあるじゃん。仕事量多いんだから手伝ってくれたっていいじゃん。

 ……いや、というかあれだ。この際、俺の仕事が他より大変なのは別にいいんだ。俺が許せないのは早々に自分の担当箇所終わらせて教卓の上で人が必死に掃除してるの楽しそうに眺めてた性悪女な。「これは驚いた。四つん這いがここまで似合う人は初めて見たよ」じゃねーんだよ。張っ倒すぞ。

 

「ごめんね。手伝うよ、六道君」


「え、いやいや、別に委員長は気にしなくていいよ」


 いや、ほんと。あの性悪に雑巾がけさせたいだけだから。


「気にしないで。私もさっき助けて貰ったから、そのお返し」


 にこりと微笑んで委員長はほうきとちりとりを手に取った。良い人が過ぎる。安心院とかいう美少女の皮被った悪魔は是非とも委員長の爪の垢でも煎じて飲んでほしい。

 大体、お返しというならもうバッチリ貰っている。委員長の窓掃除、廊下はともかく外へと通じる窓は危ないので代わりに俺がやったら照れくさそうに「ありがとう」とお礼を言われたのだ。どうせ落ちたって怪我の一つもしないのにただ窓掃除代わっただけであの「ありがとう」だ。もう将来は美少女に「ありがとう」と言われる仕事に就く以外の選択肢が無くなってしまった。


「委員長。甘やかしたらダメだよ」


 対してこの女はどうか。

 黒板の上の方を掃除するのに足場が必要だと言うから嫌々ながらも足場になった。で、一通り掃除が終わった時に言われた。「ほら、踏んでくれてありがとうは?」って。こいつ絶対可愛くなかったら何回か殺されてるだろ。つーか、もう法で取り締まった方がいい。傲慢罪とか人間侮辱罪とかで。

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