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告白と脅迫は紙一重

とりあえず初日なのでこのあとにもう一話投稿します。



六道(りくどう)十六夜(いざよい)君。あのね……」


 わけあって転校初日。放課後、隣の席の女子に校舎裏に呼び出された。


『放課後』『校舎裏』


 訓練された男子高校生ならこの二つの単語だけでこのあとの展開の想像はつくだろう。

 夕日のせいか微かに朱に染まった頬と潤んだ瞳で隣の席の少女、安心院(あじむ)世界(せかい)は伺うようにこちらを見やる。そんないじましい彼女の姿にわずかに心臓が跳ねた。

 彼女は少し恥ずかしそうにはにかみながら続ける。


「君、超能力者だよね。この写真はその証拠。ばらされたくなかったら……逆らわないでね?」


 満面の笑みで脅迫された。


 告白ではない。脅迫だ。たしかに語感はちょっと似てるけど似て非なるものだ。というかおい、これどういうことだよ。泣くぞ。笑顔でして良いことじゃないだろこれ。

 つーか、誰だよ校舎裏で告白とか言い出した奴。ちょっと跳んでみろやとか言われちゃいそうな雰囲気じゃねーか。


「……」


 ……ま、それはそれとして。彼女は俺をなんと脅したか。

 超能力者。端的に言って妄言だ。そんな奴は常識的に考えていないし信じる奴もかなりの少数派に違いない。もっとも彼女はその少数派の存在で彼女なりに俺が超能力者であると断定するだけの証拠も揃ってはいるらしいけれど。


 たしかに、証拠として彼女が持っている写真は少々刺激的ではある。地面に穴が開いていたり壁に亀裂がはしっていたり人がありえない高さまでとんでいたり。まるで漫画の世界だ。

 だがしかし、誰がその写真を見て超能力者の存在なんて信じるものか。せいぜいが加工で作られたネタ画像だと思われるだけだろう。それか奇跡の一枚みたいな。

 

 つまり、そんなもので人を脅迫なんて到底無理な話。ばらしたいならばらせばいい。誰も信じたりしないから。

 俺は表情筋を総動員して「何を言っているのか分からない」といった表情を作ると口を開く。


「あのさ、超能力者って、そんな非現実的なこと誰も信じ――」


「そうだね。じゃあこれならどうかな? 転校生は暴力沙汰の問題を起こして転校してきた筋金入りの不良。ほとんど本当のことしか言ってないし現実味もある。きっと誰も君に近寄らなくなるだろうね」


 とてもいい笑顔で安心院は俺にそう言った。

 ……はっはっはっ。なるほど。悔しいが効果は抜群だ。足がちょっと震えてきちゃった。なんなら小声で「ごめんなさい。何でもしますから許してください」って言っちゃったぞ。

 なんてこと言いやがるこの女。悪魔か。


「嘘つきは嫌いだよ?」


 とてもいい悪魔的笑顔のまま、おそらくは青ざめているであろう俺に向けて安心院はそう続ける。俺にはその笑顔が「ネタはあがってんだよ。てめぇに許された返事ははいかイエスだけだ」って意味にしか見えなかった。言論弾圧反対。


「ボクは全部知ってる。君のことも、君を作った組織のことも。全て、ね」


 安心院はそう言って、柔らかそうな唇の上に小さなピンク色の舌を這わせた。完全に捕食者の目をしていた。

 おかしいよ。なんで放課後の校舎裏とかいうドキドキイベントが起こりそうな場所でこんな目にあってんのさ。たしかにドキドキはしてるけどニュアンスが求めてる奴とは違うんだよ。最初と今じゃ心臓が早鐘を打ってる理由に月とすっぽんレベルの差があるんだよ。求めてるのはこういうドキドキイベントじゃないんだよ。


「あの……何がしたいの?」


 震える声で俺は訊ねる。

 安心院はそんな俺をみて慈しむように優しく微笑んだ。


「ボクは君にどれ……友達になって欲しいだけだよ」


「今奴隷って言いかけなかった?」


「まぁ似たようなものだよね」


「友達なくすぞ」


 言ってることは全然優しくないし慈しみの欠片もなかった。

 なんなら常識と倫理観も欠如していた。


「ところで……」


 安心院が急に忙しなく視線を迷わせ両手の人差し指を付き合わせ始める。

 なにそれ可愛いな。意味わからんけど。


「君、部活はもう決めた?」


 意を決したように下を向けていた顔を上げると安心院は勢いよくそんなことを尋ねる。


「部活? ……とりあえず運動部はなし」


「どうして?」


「どうしてって……俺のこと知ってるなら分かるだろ」


「知ってるからこそ不思議なんだよ。君なら何をやっても間違いなく優秀な結果を残せるだろうに」


「うっかり加減間違えて怪我とかさせたら大変だろ」


 不思議そうな顔をしている安心院に答える。

 怪我ならともかく下手すりゃ死人が出かねない。責任がとれないなら興味本位でスポーツなんてやるもんじゃない。

 安心院は俺の言葉を受けて少し考えるような仕草を見せる。


「まぁ、まだ決めてないってことだよね? それなら何でもいいよ。じゃ、行こっか?」


「行くって……どこに?」


「君が入ることになる部活の部室だよ」


「……?」


 立ち尽くす俺。

 歩き出していた安心院は振り返りそんな俺をみると少し不機嫌に眉を潜める。


「ほら、早く。早くしないと生きてるのが辛くなるようにするよ」


 何されるの怖い。

 俺は慌てて安心院の後を追った。

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