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5 失望

状況説明回です。

今後の展開に都合のいい設定にしてます。

未知との遭遇から半日、明は失望していた。

異世界からの訪問者、かつそれが変身能力を持つ少女(竜)である。

ワクワクの展開が待っているかと思いきや、そんなことはなかった。


コンビニから弁当を買って帰ってきて食事をしながらメイに今後の方針を訪ねたところ、帰ってきたのは

「特にありません」

という言葉だった。


わざわざ異世界から訪問してきたのだから、大事件が起きたのかと思ったのだが、そうではないらしい。

メイのいうことを要約すると、


・メイの本体(黒竜メイガス)が宿敵と戦っていた際、この世界とあの世界を繋ぐゲートが開いていた

・ゲートを経由してエネルギーがメイガスへと流れ込み、それを利用して勝利することができた

・敵が消滅する瞬間、敵の力の一部がゲートを通過したように見えた

・念のためメイガスはゲートが閉じる前にメイ(メイガスの独立子機)をこの世界に送り込んだ

・メイの目的は異世界の協力者に謝意を伝えること、敵の完全消滅を確認すること、消滅していなければ協力を仰ぎ、今度こそ殲滅させること


見ず知らずの自分(黒竜メイガス)に無償で力を与えてくれた存在である。悪いことにはならないだろう、という思惑はあったらしい。

また、敵はゲートに消えた時点で消滅寸前であり、この世界にたどりついたかも怪しい、仮にたどり着いたとしても害を与えるような力は残っていないし、そのような力を取り戻すには長い年月が必要だろう、ということであった。


「俺がその協力者だってどうして分かったの?」

「篠田さんが持つ魔力が決め手です」


異世界のお約束、魔法。

例にもれず、メイのいた世界にもあったらしい。


この世界に来てメイが驚いたことが、魔力を持つ人が非常に少ないことだ。異世界では魔力持ちの数は多くなかったが、割合的には数%はいた。

一方でこの現代において魔力を持つ人の割合は2桁ほど下がり、魔力量も少ない。

総人口が違うので、魔力持ちの人数自体はこちらの方が多いらしいが。


その中で明の魔力総量は群を抜いており、メイも最初は間違いと思ったくらいだとのこと。


潜在能力があることが分かり喜んだのもつかの間、次の言葉で大いに落胆した。


「篠田さんは魔法をつかえません」


魔力がいくらあっても、有効に使えないと意味がない。

その‘使う’回路が明にはなかった。

明を例えるならば、外付けハードディスクのようなものだ。パソコンがなければただの重りである。

計算をするのであれば百均で売っている電卓のほうが役に立つ。


続けてメイは、当分、明のそばにいることを許可してほしいと言ってきた。

もし敵が生きてこの世界にたどり着いていれば、明に対して何らかの接触を持つ可能性が高い、というのが理由である。


「俺が力を貸したってことは、その天使も知っているんだよね?明確に敵認定されているんだし、力を失っている状態でのこのこやって来るのかな?」

「前半は間違いですね。篠田さんが自分の敵対者に力を貸した異世界の協力者であることを敵は判断できません。そもそも、‘私’が力を貸していただいたということすら気づいていないと思います。‘黒竜は力を隠していた’と判断するはずです。‘私’は力を貸していただいたので理解できますが、敵にとって篠田さんは、たまたま開いたゲートの先にいた、魔力が高い現地人、です」

「そうなのか」

「それに、先ほど言った通り、敵がこの世界にたどり着いたとしても瀕死の状態、この世界の小動物にすら殺されるという状況だと思います」

「犬とかに負けるってこと?」

「そうです。生まれたての子猫レベルですね」

「ふーん」


「接触してくるかどうか、という件については・・・すいません、判断が難しいです」

「というと」

「魔法が認識されておらず、全体的に魔力の低いこの世界では、篠田さんの魔力は魅力的です。魔力が多いことで周りに影響を与えます。漏れ出た魔力でもあれば、それを使って傷を癒したとしても、気づかれることはまずありません」

「魔力って漏れるものなのか・・・」

「ええ、まあ」


ここまで聞いて、明はとりあえず受け入れる方向に舵を切った。


基本的に危害が及ぶことがない状態。

狭いワンルームマンションで女児と同居。

何も起こらないわけがなく・・・(ゲス思考)


「分かった、この部屋に住んでもいいよ」

「本当ですか!ありがとうございます」


メイはこれまでで一番大きな声で答え、肩の荷が下りた、という風に大きな息をはいた。


「では、よろしくお願いします」


メイは小さなトカゲに変化した。


「ちょっと、ちょっと待って」


明は慌てて声を掛ける


「もとに戻って」


メイが女児の姿に戻る。

「どうされましたが?あ、先ほど言った通り食事であれば私には不要です。お気になさらず」

「そうなんだ。それは助かる・・・じゃなくて、トカゲになるの?」


当然、という雰囲気でメイが答えた。


「もし私が回りにいると、警戒されると思います。気配は消しておきます」

「あ、そうですか・・・」


メイは明が実家から持ってきていた観葉植物の鉢の中に入っていった。

ワクワクの同居生活は始まらないらしい。

未知との遭遇から半日、明は失望していた。


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