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ラグランジェ編1 作戦会議

「明日の鴨川訪問ですが・・・」


金曜日の夕方、例のごとくメイが計画を話し始めた。

メイとシキは人型形態だ。シキは基本的に部屋の中では人型で過ごしている。


「大洗巡礼時とは目的とやり方を変えようと思います」

「目的とやり方を変える?」

「前回は、敵を排除するために、できるだけ気づかれないように大洗の想いを解析し、準備ができた時点で殴りこみをかけました」

「シキたちはランが仮想現実空間を展開するまでこっちに気づいてなかったよね」


シキが答える


「そうそう。いきなし何事?って感じ」


「今回の目的は、敵の排除ではありません」

「排除しない?」

「シキから得た情報によると、鴨川にいる3体は特に私たちにそこまで強い敵対心を持っていない。であれば、シキを通じて和解も可能だと思うのです」

「和解って・・・まぁ本当に、今後安全に過ごせるようになるならいいけど」


「もちろん口約束だけでなく、きちんと魔術的な契約を行い、私たちに危害を加えられないようにします」

「俺たちだけでなく、他の人にも迷惑かけないようにしてほしいな」

「そこは交渉次第ですが、十分可能だと思います」


メイが自信ありげに答える。その後をシキが継いで説明する。


「アタシ含めて残り4匹の白蛇の今の作戦は'命大事に'だよ。だから聖地に潜んで想いを利用してたの。メイさんたちに襲われるのはヤだもん」

「少し大げさに言うと、これまではお互いいつどこで襲われるか分からないという状態だったのです。が、先週の大洗巡礼で事情が変わりました。こちらはシキを通じで残りの人数や潜伏場所までわかるようになった。圧倒的に有利な状況です」


明の従魔になったシキだが、残りの白蛇の気配は以前同様に分かる。逆に向こうからもこちらの様子が分かりそうなものだが、そこはランの封印スキルで対策しているとのこと。


「シキ達はこの世界ではいわば野良使い魔。明さんがまとめて従魔にしてしまえばいいんです」

「いいのかな・・・」


「イイに決まってるじゃん!むしろ願ったり叶ったりだよ!」

「そうなの?」

「命の心配もなし、何かを強要されるわけでもなし。好きなことを楽しくやれるようになるのが悪いわけないし!」


シキ・・・君はこの数日で何を学んだのですか・・・?


「彼方が正しく現状を認識すれば、おのずと無血開城になるはずです」

「アタシも説得するし!」


むん、と気合を表現するシキを見つつ、明は疑問点をぶつけてみた。


「向こうはそれでいいとして、メイはそれでいいの?」

「私ですか?」

「命のやり取りをした相手でしょ。この際だから殲滅してやる、ってことにはならないのかなって」

「・・・向こうの事情も分かりますから」

「先生、あたしからもお願いします」


シキと暮らすうちに情がわいたのだろうか。明としてはメイの気持ちが知りたかっただけなので、メイがこの方針を納得済みなのであれば、とくに異論はない。


「使い魔を奪う、か。今まで深く考えてなかったけど、他人のポ○モンを奪うみたいで、ちょっと気が引けるな」

「そこは、まぁ、捨てられた飼い猫を拾った、って感覚でいいかと」

「先生が私の飼い主だよ!」


アピールしてくるシキの頭をよーしよしよし、と撫でてみる。


「で、どうやって和解するの?」

「巡礼途中に気配を消すようなことはしません。純粋に聖地巡礼を行い、訪問地に蛇がいた場合は、まずはシキがこちらの窓口として接触します。そこでおとなしくこちらの軍門に下ればよし、そうでなければ交渉ですね。どうなるかは交渉内容次第ですが、交渉決裂時や向こうが問答無用で襲ってきた場合は実力行使です」

「実力行使・・・」

「一発殴れば力量差がわかるはずです」

「消滅させるわけじゃーないよ」

「斃すのは最終手段ですね」


「巡礼先の各場所で‘想い’を観測・解析するのは大洗のときと同様に、引き続きランにお願いします」

「・・・(上下に動いている)」

「‘ラグランジェ’関連の想いですからね。しかも偶然ですが、こちらは3人、あちらも3匹。メインキャラクターの数と一致します。仮に戦闘になった場合は人型兵器を顕現させる可能性大ですね」


現時点でもランは限定的に戦車や軽巡洋艦を再現することができる。今後人型兵器まで再現できるようになると、ランだけで相当の戦力になるんじゃないか?


「それは頼もしいけど、現実問題として、‘ラグランジェ’は再現するにはスケールが大きすぎると思うんだ。宇宙規模の話になっちゃう」

「確かに、明さんの魔力量をもってしても、劇中の規模の戦闘を完全再現することは難しいでしょうね。何らかのスケールダウンが発生すると思いますよ」

「体に負荷がかかるようなことは避けたいなぁ」


メイのいた世界では魔力を使い切った状態になったとしても普段の生活に影響はないらしいが、この世界でも同じとは限らない。なるべくならそういった状況は避けたい。


「結局、相手の反応次第、ってことか」

「そうです」


明はイレギュラーが発生しないことを願った。


「では、明日は宜しくお願いします」

「ああ」


話を終えて、メイはタブレットを操作して調べものを始めた。


明はメイから、PCへと目を移した。DVD鑑賞の準備を始める。

メイたちは'ラグランジェ'を既に全話視聴済だが、明はまだ数話残っている。巡礼場所はメイたちが調査してカーナビが誘導してくれるとはいえ、聖地巡礼の感動を味わうためには、事前の視聴は必須だ。


準備中の明にシキがたずねる。


「先生、飲み物いるー?」

「ああ、お願い」

「かしこまり!」


てきぱきとお茶の用意を始めたシキを横目で見つつ、明はDVD鑑賞を始めた。


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