2 プロローグ side 明
聖地巡礼に入るのは8話あたりを予定しています。
前置きが長いですね。
篠田明は社会人2年目の男である。
もう少しで180cmというそこそこの身長と、親譲りのそれなりの顔と運動神経、有名国立大学卒で大企業に就職、とここまではよいのだが、人付き合いが苦手という致命的な欠点を持っていた。
高校時代は帰宅部、大学でもサークルや部活には所属していない。実験や研究室配属、卒業研究などで他人と強制的に話をする機会ができるまでお一人様行動ばかりしていた。そんな明でも就職面接を突破、社会人1年目を終え、今月から2年目である。本人は大学のネームバリューの偉大さ、周りの人たちがいい人だったことに感謝していた。
2年目のゴールデンウィーク突入1日目、その現象は唐突に発生した。
翌日が休日ということで購入したゲームを夜中までプレイし、半ば寝落ちのように布団に沈んだ明は、鮮明な夢を見た。
剣と魔法のファンタジーといった雰囲気の、とある王国が滅びの危機に陥ったとき、召喚士によってドラゴンが呼び出され、無数の魔物と戦う夢だった。
ドラゴンはレーザーやブレスを用いて魔物を殲滅しようとするのだが、途中で現れた天使に大苦戦していた。
「そういうときは、別属性の攻撃だぞ」
つい先ほどまでプレイしていたコマンドRPGをイメージして明はつぶやいた。
しばらく戦う様子を見たのち、ドラゴンをポインタで選択するように意識を集中させると少しずつコマンドが見えてきた。
[コネクトしますか?]
>はい
[黒竜メイガス
階位:2
属性:炎
固有スキル:炎熱
拡張スキルスロット;空き×3]
「属性は見た目とちょっと違うな、空きスロット3って初めて見たな。色々試してみよう」
[追加モジュールをセット]
>氷、風、毒
セット直後、一瞬震えたドラゴンは、攻撃パターンを変えた。セットされたモジュールの属性攻撃を放つようになった。
「氷や風は効果なし、毒は防具に聞きそうだな。じゃ氷と風を自己強化と呪いに交換だ」
強化された毒攻撃の前に、弱体化した防具がみるみるうちに腐食していく。防具を破壊された天使は攻撃パターンを変えてきた。
「第二形態か、本体には毒の効きが悪いみたいだし、毒と呪いを闇と光に変えよう」
赤、黒、白の3色のレーザーが天使の体を傷つけていく。以外にも最も効いているのは白色のレーザーだ。
ほどなく、ボロボロになった天使は現れたときのように、無数の光の粒になって消滅した。
「案外あっさりだったな」
プレイヤーが指示を出して、AIが自動で戦う、そういうゲームだと思っている明にとって、スキルスロットを入れ替えるだけなのは正直拍子抜けだった。
雄たけびを上げるドラゴンをそのまま眺めていると、残った魔物を全滅させ、その後ドラゴン自身も消滅した。
消滅直前に、なんだが目が合ったような気もするが、気のせいだろう。
その後、コマンドが現れる。
[新たなモジュール‘炎熱’を入手しました
切断します]
>はい
切断確認ボタンを押した明は、気が遠くなる間隔を覚えた。
覚醒が近いらしい。
「あ、これ夢だ」
そんなことを考えながら、明の意識は消えていくのであった。