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異世界転移についての文献は少なくて古いらしく、1週間くらい経ったがたいして進歩はしていないらしかった。ルカは宰相の仕事で忙しくてあんまり俺たちについて調べることにまで手が回らないからより進まないらしいし。分かったのは以前も異世界転移者が来たことがあり、その人は何か精神に干渉する能力を持っていたらしい、ということ。春は異世界チートだっ!と目を輝かせていた。今のところ俺たちにその片鱗は表れてないけどな。
1週間庭と部屋にしか居れないとなるとちょっと飽きてくるわけで…
「アラン〜、ぼくたち街を見て回りたいんだけど、だめ?」
「うっ、その、出してやりたいが、お前たちはこの国のことを何も知らないだろう?危ないからだめだ」
春のうるうる上目遣い攻撃にもめげずアラン王子どのはもっともなことをおっしゃった。
「アラン、この城の図書館とか行かしてもらえないか?俺この国や世界のこともっと知りたいし。それからなら、外に出ても大丈夫だろう?」
「たしかに、それもいいかもしれんな。というかお前たちに教師をつけよう!それならば満遍なくこの国のことを知れるし、」
将来のことを考えると春にはこの国の様々なことを知っておいてもらいたいしなと小声でぶつぶつ言っている王子様は春をお嫁に迎える気満々だなぁ…
春は勉強かぁとちょっと嫌がってたけど、お城に来てくれるだけあってまぁ優秀で面白い先生だった。アルシュタルはやっぱり大きい国で、お城を中心に円状に街が広がっていて、色々な国と交易があるらしい。特に西のイレドや南のソウドという国はアルシュタルに次ぐ大国で、昔はいざこざもあったけど今のとこは仲良しらしい。
そうそう、春が言ってた異世界には魔法がつきものというのは本当らしい。そんなに多数ではないが、この国では自然系の魔法というか、自然にあるものを操ることのできる人がいるらしい。だいたいそういう血筋があって、親から子へは同じ系統の魔法が受け継がれる。ただその種類や力の大きさは人それぞれ。例えば火系統の魔法が受け継がれてる家系でもついている火を大きくするとか口とかから火を吹いて攻撃するとかいった大小様々なものがあるようだ。ただこの国では自然系の魔法しか確認されておらず、前の異世界転移者が使ってたという精神干渉系の魔法は、転移者故のものかもしれない、ということだった。
そのことを知ってから魔法についてもっと知りたくなり、恒例の春とアランのいちゃいちゃタイムの間は図書館で過ごすことにした。図書館は本当に広くて、でもとても整理されているんだからすごく使いやすい。それにほとんど人も来ないから居心地がいい。
1人でお城を歩けるってのも、図書館で1人ひっそりと本を読むのも気分が良いもので、俺はちょっと調子に乗ってたんだ。
それにだいたい本に集中してると、周りの音とか何も聞こえなくなるタイプで…
だから口に何かを押し当てられたと気づいた時にはもう意識がすうっと遠のいていった。