32
「な、なんで!?だってアランにはルカが」
「なぜルカが出てくる!?」
「私は何もしてませんよ」
「ルカはアランをいつも支えてて…僕にはできないから…すごくお似合いだし。それに僕とアランが話してるときいつも嫌そうに見てるよね?」
「それは…」
ルカのことをキッと睨みながらアランは目をうるうるさせている春に近寄り頭を撫でた。
「それはお前の勘違いだよ。たしかにルカは宰相として優秀で俺のことを支えてくれているが、春はいつも俺の心の支えになってくれているんだ」
「そうなの…?」
「そうだ。ルカも俺のことは何とも思ってない」
「でも…」
「そうですよ。……はぁ、そんなに睨まないでください。分かりましたよ。私は…その…可愛いものが好きなんですよ!」
「へ?」
恥じらいながらそう言うルカに思わず変な声が出てしまった。
「可愛い…もの?」
「アラン様が好き?そんな訳ないじゃないですか!可愛いらしい春さんをアランのお手つきにしたくなかったんですよ!」
かあぁっと赤くなる春と、その春をルカから隠そうとするアランが微笑ましい。というかルカのギャップがすごい…
「だからっ…返事は俺が無事帰って来てからでいい!ここで俺の帰りを待っていてくれ」
「うぅぅ…それ、フラグになっぢゃうがら!ぐすっ」
「フ、フラグ??」
泣きながらアランをぽかすか叩く春と戸惑うアランがすごくおかしくて笑ってしまった。
「それぐらいにして、行きますよ」
冷静さを取り戻したルカに諭されて会議室へ向かった。
「セド、援護した俺がいうのも何だが、怜は連れて行くってことでいいのか?」
ちらっと俺を見たセドの真剣な眼差しにドキッとする。ん?てゆうか俺はセドの許可が必要なんだろうか?そりゃあ、セドが俺のことを大切に思ってくれてるのは分かるし、正直…俺はセドのこと…
「怜を連れて行きたくないのと同じくらい怜について来て欲しいっていう俺のエゴなんだ。この前の戦いのとき、怜から的確な指示が出て、ずっと怜は近くで見守ってくれていたんだ。もちろんそれは怜の能力による幻覚だが…それでもすごく心強かった。」
「セド…」
俺がセドを支えられていたなんて…
「特に今回の戦いは国同士の争いで、規模も大きくなってしまうかもしれない。そんな時、俺にとって怜がいてくれたら…と考えてしまってな。怜の能力なら後方からだしついて来てくれたら」
「俺、行くよ!」
「っ…ありがとな」
愛しい者を見つめるかのような慈愛に満ちた笑顔を正面から見れず、思わず顔を逸らした。セドが俺を頼りにしてくれていることが何よりも嬉しかった。
「それにしてもセドが弱みをはくなんて珍しいな。そんなんで第二王子に戻れるのか?」
「そうだな、今だけだ」
からかうアランとそれに応えるセドのやりとりは幼なじみ感がでててほわぁっとしたけど、それと同時に当たり前の事実に気がついた。この戦いが終わったらアランは元の国にもどり、セドは第二王子として即位するのだろう。そうしたら奥さんをもらって子どもを育てて…そんな未来があるんだろう…こころがちくりと痛んだ気がしたが、第二王子に戻れるのはセドにとって幸せなことなんだ、と自分に言い聞かせた。




