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アランのその強い眼差しに圧倒された。春にデレデレしてるのに見慣れてしまってたけど、やっぱりこの人は王子なんだ、と思った。
「頼りにしている」
「任せろ。ようやく魔法も使えるしな」
「セドも魔法使えるの!?」
「ああ。能力は家系で決まるから今まではバレないように使えない体でやってきたけどな」
「それで近衛隊長まで上り詰めたんだから大したもんだよなほんと。」
「何の魔法が使えるの??」
セドはおもむろに手を伸ばすと空気中から水が出てきて俺たちの周りを妖精のようにくるくるまわりだした。
「すごーい!!」
春の頬をつるんっとしたり、俺の指をくるくるっとしたりしてほんとに生きてるみたいだった。そこにアランが手を伸ばし、小さな竜巻を作ると、浮かぶ水と混じって噴水みたいになってとっても綺麗だった。
「やっぱりアランは風なんだね」
「そうだ。俺のはフィリップとは違って激しくて攻撃型だがな」
「セドは水の魔法なんだね。すごく綺麗だった!」
「ありがとう。こうやって操るのが得意なんだ」
そう言って水と戯れるセドはかっこよかった。水も滴る…てはないけどいい男だなぁ。
朝になると慌ただしく人の出入りがあり、ここを拠点として策を進めることになったらしい。
「アラン様、また無茶をなされたようですね」
「大したことはしてない」
国の一大事になるとあって、宰相であるルカは一足先に来ていたが、またというか、アランに小言を言っていた。
「とにかく、作戦会議を始めましょう。怜さんは来てもらえますか?貴方の能力は作戦に組み込んでみたいので」
「もちろんです!」
ここまで何も出来なかった俺が何かできるっていうのがすごく嬉しい。
「待て。怜を巻き込むことはしたくない」
「セド…でも俺だって役に立ちたいんだ!」
「戦線は危険だ。傷つくお前を見たくない」
「セド、怜の能力だと後方からの指示が主になるから前線に出ることはないだろうから大丈夫じゃないか」
思わぬアランからの援護射撃にそうそう!と頷くとしぶしぶ安全なところにいるなら…と納得してくれたようだった。
「僕は?僕もついて行って助けたい!」
「春!春はダメだ。ここにいろ。怪我人が出たとき、ここで治してやるんだ」
「でも!ついて行ってらすぐに治してあげられるし!」
「一緒に来たら危ないだろう」
「僕もアランの目的を果たす手伝いがしたいの!」
「危ないからだめだ!」
「なんでそんなに否定するの!!」
「お前のことが好きだからだ!大切だから!全てが終わったとき、お前には隣にいてほしい」
言い争いがヒートアップして、はぁはぁと息を切らしながらも言い切ったアランに春がポカンとしている。ルカはやれやれって呆れたようなリアクションをしていて、セドはそっぽ向いて肩を揺らしている。俺は春と違って腐男子じゃないけど、そんなの関係なしによく言った!てかようやく言ったなアラン!!って思いだった。




