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「聞いた話なんだけどな、第二王子は即位したあとほとんど姿を見せたことがないらしいんだ。」
「そうなの?」
たしかにそうなら最初街を通った時にアランが注目を集めなかったのも分かる。
「なんでもアラン様は認知されていなかった子どもらしくてな。噂になってるよ、謎の王子だってな。実は実在しないんじゃないかとも」
「そんな…あ、でも謎の王子って聞いたな」
俺連れ去った人たちが言ってたな。謎の王子って街で浸透してたんだ。
「だろ?でもいたんだな〜」
うーん、フィリップが言ってた街に行ったら分かる秘密ってこれのことだったのかな?今日やっぱり聞いてみようかな。
「おわったー!ありがとな、怜!」
「ううん、よかった!」
夕方になってようやく瓦礫の撤去が終わった。レノが夕飯を作ってくれたから夕飯を一緒に食べさせてもらった。
「ほんとに助かったわ!」
「いや、ほとんどノマがやってくれたし」
「怜のおかげよ!ほんとにお嫁に来ない?」
「いや、俺は…」
「お前なら大歓迎だぞ!」
「もー、ノマってば〜」
「それは困るな。怜は俺のものだ。」
「セド!」
「まぁまぁ」
「セド様!」
俺が何もいう暇もなく、セドは軽く挨拶をして俺を連れて帰った。
「帰ってこないから心配した」
「ご、ごめん。話が盛り上がっちゃって」
「怒ってる訳じゃないんだ。それならよかったよ」
そう言ってからセドは喋らなくなって、掴まれた手から伝わってくる熱が俺の心臓の鼓動を早めて、帰り道は俺のものってどういうこと、とかなんでレノの家にいたことが分かったの、とかいろいろ考えてしまって頭がパンクしそうだった。
「あ、悪い。」
部屋に着くころになってようやく俺の手をずっと握っていたことに気づき、セドがどこか気恥ずかしそうに手を離して部屋に入った。
「あ、怜お帰り。遅かったね」
「あ、ああ。ちょっとお世話になった人のとこ行ってたから」
セドがまた何事もなかったようにしてるから何とも言えなくて春とアランの今日の報告を聞いていた。
「そうだ、アランが謎の王子ってどういうこと?」
ぴしぃっと音が聞こえるくらい空気がピリッとするのを感じた。
「どこで聞いた…?」
「連れ去られた時と、今日街の人から」
「そうか…そろそろいいか…なぁセド?」
「…ああ、そうだな。知ってもらっておいた方がいいかもしれない。」
どこか真剣な雰囲気の2人に緊張してきた俺だったが、春はどういうこと?って感じでぽややーんとしていて、その雰囲気にちょっと救われた。




