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「はるっ…!無事でよかった」
「痛いよ怜〜」
服は汚れてたけど目立った怪我もなく帰ってきた様子を見てすごく安心してぎゅうぎゅう抱きしめてしまった。
「怜のおかげだよ!魔法使えたんだよね?」
「たまたまかもしれないけど…」
「そんなことないよ!すごかった!僕には怜の声でちゃんと聞こえてきたよ」
「俺の声…だったの?」
「?うん、そうだけど?」
声は大事な人の声で聞こえるはずなんだ。春にはアランとか、それでなくても家族とか、そういった人の声が聞こえてると思ったけど…
「ど、どうしたの怜!痛いってば〜!」
そう言いつつ春もぎゅっとし返してくるので嫌ではないんだろう。
「俺は怜に勝てると思うか?」
「あの様子じゃ無理だな。俺も…」
アランとセドも帰ってきていて、こんな会話が行われてることは全く気づきもしない2人だった。
「怜、よく頑張ったな。」
「そんな…頑張ったのはみんなの方で俺は何も」
「いや、お前のおかげだよ」
そう言ってセドは久しぶりにわしゃわしゃ頭を撫でてくれた。
「春もすごかったな。一気に何人も回復できるようになってたなんて」
「軽いものだけだけどね」
「すごいよ、そんなのできる人は春以外いない」
「そう、かな…ありがとう!」
「そういえば首謀者?とかは分かりそうなの?」
「雇われの傭兵はそこまで口が固くないだろうから時期にわかるはずだ。」
「よかった!」
次の日からはみんな後処理に追われた。アランとセドは各地の被害状況から立て直しのためのお金や期間とかの話をしてるし、春も怪我をしてしまった人やアイサの被害者の人たちの治療に当たっている。俺は被害状況確認をしつつ、レノが心配だったのでレノの家に寄った。
「レノ!良かった無事で!」
「怜!あんたも無事でよかったよ」
「家族は?大丈夫だった?」
「みんな無事だったよ。ただ裏の食糧庫が全壊しちゃってね。今息子が直してるんだ。夫は仕事場の方が被害にあったみたいでそっちに行ってる。」
「そっか…息子だけじゃ大変だろ?俺手伝うよ!」
「本当かい?そりゃ助かるよ!おーい、ノマ!」
「なんだー?あれ、お客さんか?」
出てきたのはノマに似た爽やかな青年だった。レノから俺のことを聞くと、人懐っこそうな笑みでよろしくな!と言ってきた。地球にいたら間違いなくクラスの人気者タイプだろうなと思った。
「へぇー、じゃあ怜はその友達と異世界にきちまった訳か!大変だったなぁ!」
ノマは明るく元気で、打ち解けるのに時間は全くかからなかった。
「まあね、でも案外うまくやってるよ」
「すげぇなあ!俺なんかこの街から出たことすらねぇからなぁ」
「じゃあ今度遊びにおいでよ!」
「ほんとか!でもお前城に住んでんだろ?俺そんなとこ行っていいのか?」
「うーん、アランに頼めば大丈夫だと思うよ!」
「アランって第二王子のことか?知ってんのか怜!?」
「え、うん、そうだけど…」
「はー、実在したんだなぁ」
え、実在したんだなぁ?
「それ、どういうこと?」




