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「そもそもあんなに高度な魔法使える人は少ない。魔法を解析してもらったところ何かへの依存症状を起こしてしまうようだ。しかも後にかかった人ほど操作された依存症状を起こされていることがわかった。」
「そんな…」
「こんな高度な魔法を使えて、それをこのように利用してくるのは実行している商人よりももっと立場が大きいものだ」
「それに依存って…あいつみたいだ…」
過去の嫌な思い出が蘇る。いや、フィリップと話してる時は楽しかったけどそれにはまってたら今頃どうなっていたか…考えるだけで恐ろしい。
「そうなんだよな」
「その毒が完成してしまったら人々は操られてしまうかもしれないな」
「それってかなりまずいじゃん!」
「ああ。商人たちが何か知っていれば良かったんだが…難航しそうだ。」
商人の人たちは何も知らずに使われてたんだな…てゆうかさっきから外が騒がしいような…
「大変です!敵襲が!」
「状況は!?」
なんとアイサのことでイレドの商人たちに不信感を持ったダスタルの人たちはイレドの商人自体を街からしめだしたらしい。それに怒ったイレドのいくつかの商会が傭兵とかを雇って街を襲っているという。
外を見るとあちこちから火の手が上がっていて相当の戦力が送り込まれていることが分かる。
「ダスタルの兵たちは徴兵制でほとんどが村人です。戦いには慣れておらず、また最近その制度を変えたせいで実地訓練をほとんど行っていないため今機能できているのはほんの少数です」
「なんてことだ…とりあえず現状の確認と作戦の立て直しをする」
「僕、外に出て怪我してる人を治してくる!」
「春!危ないからここにいろ!」
「みんなが必死で戦ってるのに黙って見てるだけなんてできない!」
「…じゃあそこにいるやつと一緒に行け。」
「ありがとう!アラン!」
「ただし前線までは出るな。俺も作戦が決まり次第すぐ向かう」
「分かった!」
春はアランが指名した、きっとこの場でアランとセドを除けば1番強いであろう兵士と共に出て行った。アランとセドは現状報告を受けていて…俺だけ何もできないのか…!外ではたくさんの人が恐怖に震えているのに!何もできない…助けたい…!助けたいのに…!
「怜、大丈夫か!?」
「ど、どうしたのセド」
「怜からとてつもない魔力を感じる。見てみろ」
「あ…あった!!これだ!」
俺の能力!神によると人を導くかなんかだったやつ!今ならできる気がする!なんでかって言うと手から光のパワーみたいなのがふわふわでてるからだ。これは俺の力の一部だってわかる。
「ここの土地の地図見せて、あと戦況も教えて」
小さいころ、子どもながらに変身するヒーローたちはどうしてあのポーズを知ってて、道具もうまく使いこなせるんだろうと思ったことがある。でも今なら分かる。体が知ってるんだ。何をどうすればいいか分かるんだ。
みんなに伝えるのが俺の役目だ。みんなを鼓舞してそれぞれの役割を分かってもらい、みんなを救う方向へ導くための。
今まで使えなかったのが嘘みたいに広範囲の人が俺の魔法の圏内にいることがわかる。女の人や子ども、お年寄りには助けあってこのルートで逃げろ、兵には隊列を整えさせる、まだ戦えそうな男の人たちには立ち回りを指示する。
皮肉にも俺のも一種の洗脳のようだ。テレパシーのように伝えられるけど、それを実行してもらえるように声が工夫されてるんだ。声がそれぞれの大切な人とかの声で聞こえるようになってる。
伝えるだけだからどう状況が変化してるのかは分からないけど、とりあえずやったことを説明して、アランとセドは戦力として加わるため外へ行った。ありがたいことに戦略は俺に任せてくれて。俺は兵の人が伝えてきた戦況から随時アランやその他の人にも指示を出して出して…数時間後にはほとんど鎮静化させることに成功した。




