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春は何人かの兵の人と共に病院に行き、俺はアランたちにくっついて軽症者に話を聞きにいった。会いに行った男の人は昨日見た人までとは言わなくてもどよーんとした雰囲気を纏った人だった。


「前から君はこんな暗い感じだったのか?」

「いや。ある日何もかもどうでも良くなったんだ。仕事も家族も何もかも」

「いわゆる鬱状態なのかな?」

「そのようだな。何か気分の他に変化はあったか?」

「仕事を失くして、奥さんが子どもを連れて里に帰ったくらいだな」

「…そうか」

「きっかけに心当たりは?」

「分からない」

憔悴した彼にこれ以上聞くのは酷だと思い別れた。

「彼は以前まで勤勉で家族想いの人でした。何でああなってしまったのか…」

隣に住むおばさんが以前から仲が良かったため時々彼の様子をみているようで、涙を浮かべながらそう語った。

「彼に症状以外で何か変わったことは思い浮かびませんか?」

「そうね…」

「なんでも構いません。小さな変化でもいいから教えてください」

「強いて言えば味の好みが変わったことでしょうか。」

「というと?」

「この辺りは多様な村が合併してできたもので、それぞれの村でクセの強い調味料が作られていたのですが、そのせいで少々舌がおかしくなっている者が多くて。私と彼の出身村は違うので私の作る調味料を使った料理は彼嫌いだったんですよ。今はどうしたことか食べてますけどね」

「食事か…ありがとう」

「関係あるのか微妙ですね。何もかもどうでもいいなら気にしなくなっただけかもしれないですし」

「症状で味覚が無くなるとかあるかもしれないな。他もあたってみるか」

他の人のところも回ってみたがめぼしい情報は得られず帰ってきた。イレドの商人との関係性も全く分からず調査は行き止まっていた。


「春、どうだった?」

「全回復!って訳にはいかなかったけど症状を軽くすることはできたよ。繰り返しやってたら回復させられるかもしれない」

「すごいね!」

「本当だ。そうだ、何か気づいたこととかあったか?」

「うーん、鏡ずっと見てる人とか、ぬいぐるみ離さない人とか豚肉しか食べたくないって言ってる人とか色々いたけど…思い当たらないな」

「そうか。そういえば、味覚が鈍くなっている人とかいたか?」

「どうだろう?気にしてなかったよ。明日またみてみる。」

「ありがとう。じゃあ明日な」


次の日はアランたちは急遽会議をすることになったため暇になった。ので、街で聞きこみでもしようと思ってふらふら出かけて行ったら昨日会ったおばさんに出会った。

「あら昨日の方じゃない!今日はお一人なの?」

「今日はみんなは会議で。俺はくっついてきただけだから参加できなくて」

「そうなの。大変なのね〜。あ、じゃあ今日は時間あるかしら!これ運ぶの手伝ってくれないかしら?」

「もちろんです」

昨日とは違いフランクに話しかけてきたおばさんはレノと名乗り、名前が似てることや彼女の家族の話で盛り上がり、家まで荷物を運んでいった。そのついでに腰を悪くしている彼女の代わりに家事を手伝うと、お礼にお昼をご馳走すると言ってくれたのでありがたく頂戴することにした。

「怜は働き者ね。うちの息子の嫁に来て欲しいわ!」

「俺は男ですよ!」

「あら、こんなに可愛いんだから大丈夫よ。うちの息子にはもったいないくらいだわ!」

「そんなこと…」

可愛いと言われるのは男として複雑だが、お母さんのように思えてきたレノの言葉が少し嬉しかった。

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