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道中に通った街はすごく発展してて、人々も温厚そうで治安が良さそうだった。
「どうかしたのか?」
「いや、みんな幸せそうでいい国だなと思っただけだよ」
「そうか」
俺は近衛隊だというセドの馬に乗せてもらっていた。いかにも硬派で凛々しい横顔の彼は、基本的には無口なのだが、こうして俺の様子をちょくちょく気にかけてくれるいい人だ。あとたまにふっと笑うのがかわいい。
「アラン、アラン!あれは何?」
「ああ、あれは大手の商工会だな。この辺りの商業取引はあそこが取り仕切っている」
「へぇ〜!アランってこの街のことなんでも知ってるんだね!」
「ま、まあな!俺はこの国の王子だから当然だ」
春はアランの馬に乗り、この異世界の街に夢中になっている。無邪気にあれはこれはと聞く春にはこの国の王子様でもメロメロらしい。春のことが愛おしくて仕方がないっていうのが顔にすごくでてる。
城はマジでガチのお城だった。いや、本当にすごい。とにかくでかいし彫刻とかのデザインが細かい。とりあえず王子の客人として招かれ、客室を与えてくれるらしく、部屋に通して貰えた。
「春様、怜様。お二方のお世話をさせて頂きます、執事のササキと申します。よろしくお願い致します。」
「ササキ?ササキさんは日本生まれなの!?」
「ニホン…いえ、私はこの国生まれでございます。」
「そうだよね〜」
ササキさんは、アジア系の顔というわけではないけどなんだか懐かしいというか、見たことあるような雰囲気がある。これまた端正な顔つきで、そのせいか知らないけど40代と言われても20代と言われてもしっくりくる顔だ。
「身なりを正させて頂いた後、一度王様に謁見していただく予定でございます。隣の部屋にお湯を用意させておりますのでごゆっくりおくつろぎください。後ほどお伺いします。」
「ありがとうございます。」
こういう時ってお風呂の中まで入られて慌てる展開なのにな〜とぶつぶつ何か言ってる春を連れてお湯につかり、用意されていたひらひらの服に着替えた。
「春、倒れる前なんか言ってたけどあれなんだったんだ?」
「これは、よくBLである展開なの!異世界転移したらチート能力持ってたりとか色々事件に巻き込まれたりして、最終的にはイケメンに溺愛されたりするんだよ!!」
「お、おうそうなのか」
「怜!好きな男できたらすぐに教えてね!僕応援するから!!」
春の爛々とひかる目が怖いのだが。俺に何を期待してるんだ⁉︎
「いやいや、俺男に興味ないからね?春の期待する展開にはならないと思うよ」
「怜、僕怜には幸せになってほしいんだ。いつも怜は困ってる時に助けてくれるし、優しくしてくれるし、感謝してるの。それにここに来ちゃったのって僕のせいだし…」
「春…俺そんなに気にしてないよ。ここいい国そうだし、お城暮らしとか最高じゃん!」
「怜…ありがとう!僕ほんとに応援してるから頑張ってね!」
しょんぼりしてるかと思いきや、ぱあっと明るくなると春はアランの俺様攻めに押される怜もいいけどセドも…だとかちょっと聞きたくないというか聞いたらだめなことが聞こえてきた気がした。
「春…ちょっとしおらしくしてるかと思えば…!俺はほんとに男好きになるとかあり得ないからな!」
やっぱり春は春はだった。まぁこっちの方が生き生きしてていいけどな。