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「怜、ここにいたのか。」
「うん、ちょっと酔いを覚したくて。探してたの?」
「昨日のことがあったからな」
そう言いながらベランダの柵にすがって髪をなびかせるセドは絵になる。
「そっか。そういえばセドはどうしてパーティーに参加してるの?」
「一応ここの護衛を統率する者として顔見せをしなくてはならないからな。夜だけはこうして参加することになってる」
「そうなんだぁ〜」
「それより…また酒を飲んだのか?」
「断れなくて…ちょっとだけだよ!」
しらーっと見てくるセドに慌てて言い訳をするけどそれはそれで怪しくなってる気がしてならない。
「酒を飲むのは俺の前だけにしてほしい」
「え、なんで?」
「それは…その…昨日すごかったからな、みる者がいないと大変だ」
そ、そんなにまずいことしたのかな…所々覚えてない自分が恨めしい。そんな俺でも面倒みてくれようとしてるなんて優しすぎないか…
「ごめん…迷惑かけたみたいで」
「い、いやそういうことじゃなくてだな」
「え!じゃあどうゆうこと?」
「だから…酒を飲んで気を許すのは俺!……とか春とかの仲いい奴だけにしてほしいってことだ。」
「!!」
か、可愛いというか愛しいというか…好き!尊い!春の気持ちめっちゃ分かる!!推しが尊いってこのことか!俺とフィリップが仲良さげにしてたから嫉妬したのかな〜?恥ずかしいけど嬉しい〜!!てか俺だけにしろって言われるかと思ってびっくりした〜。そんな訳ないよな〜
「そうする」
「ん」
よしよしされるのは気持ちいい。目を細めて微笑むセドはさらに尊い。だめだ、お酒のせいで春化が止まらない。
次の日の夜はセドとテラスで待ち合わせした。セドは顔がいいのと近衛隊長という立場、その上独身なのでお嬢様方からダンスを誘われまくってほとんど休む暇がなかったらしい(これだからイケメンは!)顔見せはもう3日目だしいいだろって言ってた。
「そういえば怜は街に出たかったのか?」
「う、うんまあね。アランに聞いたの?」
アランはセドにまで話したのか…!
「ああ。そんなに詳しくは聞いてないが…」
そう言いつつ何かごそごそとするセドに首を傾げていると
「こういうことではないとは思うが少しでも元気になればと思って」
ぱっと手から出したのは街のミニ模型のようなものだった。
「うわぁ!すごい!ちっちゃい!きれいだ!ありがとう!」
小さいのに街のお店や噴水などがあり、とても可愛らしかった。
「いや、喜んでくれたならよかった。…俺のせいでもあるからな…」
「え、何?」
「いや、なんでもない」
「そう?これ、部屋に飾るね!」
セドからのかわいいプレゼントにテンションが上がり、春やアランにも自慢した。
最後の夜はいっそう豪華で、金持ちってすごいんだなってのを感じた。
「やぁ怜、久しぶりだね」
「フィリップ…」
「おやおやそんなに警戒しないでよ。あんなに仲良くなったのに」
「自意識過剰なんじゃないですか」
「厳しいなぁ。会えなかったのを拗ねてるのかい?君の部屋に行った後から警備がキツくなってしまったんだよ。だから今も君と話せるのは数分だけだ」
大袈裟に辛そうな顔をするがもう騙されないぞ!
「それは自業自得ですよ」
「冷たいなぁ。私は君を助けたいんだよ」
「助ける?」
「そうだ。君を城の外へ連れ出してあげるよ。君は自由になれる」
「はぁ」
別に今の暮らしが不自由だとは思わないしアランたちにもう迷惑はかけたくない。
「俺はそんなの望んでないんで」
「どうしてだい?アランは君に隠し事をしている。私のお嫁さんになって国まで来てほしいんだ。」
「お、お嫁さん!?むりむりむり!俺は男だし!それにアランが何か隠しててもいいんです。話すべきことなら然るべき時にアランは話してくれるだろうから」
「そうか…」
しょぼーんとするフィリップがチラチラ涙目で見てくるがだいぶ耐性がついてきた気がする。
「あ!フィリップ様ここにおられたのですね!怜様との接触は禁じられておりますのでこちらへ」
フィリップは気が変わったらいつでもおいでーと言いながらずるずると引きずられていった。




