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「よく、ここまで来れましたね」

危ない危ない、ついつい暗い気持ちになって判断を誤るところだった。そういえば思い出したけど、こいつは元々春に声をかけて、断られたから俺のところに来てるんだ。何が目的なんだろう。春がダメでも他に綺麗な人はたくさんいたのに…それともまず先に俺から落として春に近づくつもりなのかもしれない。


「つれないなぁ、昨日はあんなに懐いてくれてたのに」

「何のことでしょう」

そっちがその気ならこっちも利用してやる。フィリップの顔を見て思い出したのはもうひとつ。アランに秘密があることだ。なんでこいつが知ってるのか分からないが、春の将来の旦那(予定)がどんな秘密を抱えているかは気になる。春の両親がいない以上、その代わりは俺!相応しくないやつは許さん!という心意気ではある。

いや、アランはいい奴だからな。こんなやつに秘密を握られて春との幸せ結婚生活に支障が出たら困るので把握したいというのも本音である。


「まぁそんなところもいいと思うけどね。」

くすくす笑ってくるのがまたばかにされてるようでむかつく。

「それよりなんだか今日はご機嫌ななめだね。どうしたんだい?」

細かい変化に気づくのがモテる男の秘訣なのか…勉強になる…

「そんなことないです。気のせいじゃないですか?」

「部屋に迎え入れるときのすがるような目は嘘じゃないと思ったのだけどね。私では役不足ですか?」

で、でた!その子犬のような目は本当にやめてほしい。彼にすがりたくなったのは事実なのでなんとも言えない。

「実は…」

春と喧嘩してしまったこと、それは自分が悪いのだと思ってること、フィリップ相手にはなんでも話せてしまうように感じるから不思議だ。自分の口は固いと思ってたし、実際固いが、フィリップにはそれを溶かしてしまう何かがあるようだ。


バサバサバサと音がして本がパラパラとめくれる。今日は風が強い日らしい。

「それは、君も悪いかもしれないが、春とやらの方がひどいではないか」

窓を閉めに行こうと立ち上がった俺の手をむんと掴み、フィリップはそう言った。まただ。この人の言ってることは全て正しいんじゃないかと思ってしまう。

「そう…でしょうか?」

「ああ。人の気持ちを決めつけるなどあってはならない。相手のことを考えているならばアドバイス程度で収めるべきだ。怜はたしかに言葉は荒かったが間違ったことを言ってはいないよ」

「そうなのかな…」

あのときはつい…

「気に病むことはない。私は怜が」

何かフィリップが言いかけた時、またドアがバーンと開いてアランが入ってきた。


「フィリップ王太子!勝手にこちらに来られては困ります。それにうちの客人に関わらないでいただきたい。昨夜も再三注意したはずです。」

「そうカッカしないでくれ。怜とは友達なのだからいいではないか」

「城の中を勝手に移動されるのは問題があります。大事にはしたくないでしょう」

フィリップも引き際は分かっているのか俺にまたねと言って素直に帰っていった。

「変なことはされてないか?」

「うん、大丈夫。」

フィリップがいないと、やっぱり正気に戻ったというか、よくわからない感覚がある。あの人のことを信頼していいものか…やはりひとつ聞いてみるか。


「なぁ、アラン。そろそろ街に下りてみてもいいか?」

「いや、それは難しいな」

「どうしてだ?この国のことはだいぶ勉強したし」

「お前はこの前連れ去られたのをもう忘れたのか?城内ですらああだったのに街に出たらもっと危険だ」

「うっ…」

それはたしかに…でもそれじゃあ秘密が関係あるか分からないじゃないか!

「護衛をつけてもか?」

「だめだ。」

「秘密がバレるとまずいからか?」

「秘密だと?街に行って何か俺の秘密が分かると?」

一瞬動揺したような気もしたが確証は全くない。これ以上聞くとバレそうだしな…

「いや、そんなどうしても行かせたくないのはなんかあるのかなー?と思って」

「王族が民に言えないことをひとつや二つ抱えているのは当たり前だろう。ま、街にお前が行ったくらいでどうにかなるものはないがな」

「そ、そりゃそうだよねー」

やっぱフィリップにからかわれただけだったか…あいつめ!

「お前はどうして街に出たいんだ?」

「え!あ、それは〜」

まずいまずい確かに急にこんなこと言ったら怪しむよなぁ。そうだ!

「ちゃ、茶葉を!見たいと思いまして!」

「ふぅん、茶葉な」

「ああ。セドと図書館にいるときに茶を飲むことがあるが、毎回味が同じで。それはそれでいいんだけどたまには違うのもいいかなって。街には色んなのあるらしいし!」

「なら取り寄せればいいではないか」

「お店に行って、自分で選ぶから意味があるんだろ〜」

「うーむ、そういうものか」

「そうだよ」

やはり王子様は価値観が違うらしい。

「春もお店に行ってお菓子選んだりするのは好きだと思うよ」

「む、そうなのか!」

明らかに興味持ち出したなこいつ…

「考えてみよう」

春をこいつに任していいものか…でも春なら上手く飼い慣らすんだろうな…

というか早く春に謝りに行こう!やっぱりひどいこと言っちゃったし謝らなきゃな。


ぶつぶつ言いながらなにやら考えてるアランをおいて春の部屋に向かうことにした。

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