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「んー、よく寝たー!」
なんか今日はすっごい寝覚がいい!すごいぐっすり眠れたなぁ〜。そういえばいつの間に部屋に帰ったんだっけ?パーティーに参加して、フィリップと話して、お酒飲んで…
「怜!やっと起きたの!」
「うわっ、春!どうしたんだよ」
バーンと扉を開けて凄い勢いで春が入ってきた。
「どうしたもこうしたも…昨日ぐでんぐでんに酔っ払っちゃって心配だったんだから!あのいけすかないやつに連れて行かれて戻ってこなくて!心配でアランたちと一緒に探したらなんかすごい仲良くなってるし…」
「ごめんごめん、話してみたら案外面白い人でさ」
すごい剣幕でまくし立てるものだからつい押されてしまった。
「そうなの?アランとは言い争いというか皮肉言い合っててすごく仲悪そうだったけど…」
「そうなのか?昨日途中まで話してたのは覚えてるんだけど最後のほう記憶が曖昧で…」
「そっかー、でも僕もあんまり好きじゃないなぁ」
「まぁ春は結構言い寄られてたもんな」
「それもあるけど…僕はセドと怜の恋路を邪魔されたくないの!せっかく怜とセドが仲良くなってきてたのにあんなにベトベト怜に触っちゃって!僕は固定カプしか許さないから…!あ、でも怜があいつの方がいいって言うなら、、応援するけどね」
「熱烈に語ってるけど、俺は別にセドとどうこうなる気はないから!もちろんフィリップとも!」
「そうかなぁ〜、最近の怜すごく楽しそうだよ。セドといるときは今まで見たことないくらい幸せって顔してるし!それに昨夜のセドも怜のことになると…」
「そんなことない!勝手に春がそういう目で見てるだけだろ!こっちに押し付けないでくれ!セドも俺も巻き込むな!そういうの迷惑だ!」
勢いよく口を出た言葉が棘をたくさん含んでいることを知っている。
「あ、ごめ…」
春は自分の気持ちと向き合わない俺に自分の気持ちと向き合えって伝えようとしてくれただけなのに…!
「ううん、こっちこそごめん…余計なこと言っちゃった……あの、アランに用事あるから、行ってくるね!」
「春!待って…」
そう言って駆け出した春に言葉は届かず、無情にもドアは閉まってしまった。
春の意図はわかってた。でも自分の内面を見たくない俺の弱さが春を傷つけてしまった…
セドは王命で俺を助けにきてくれただけ。いつも図書館で付き合ってくれるのも護衛のついでに優しいから一緒にいてくれるだけ。それ以外に理由なんてないだろ?
しばらくしてアランがやって来た。フィリップと何を話したか、とか何か聞かれたか、と言われたが酒のせいでうろ覚えだったし、正直それどころではなかった。
「なにがあったかまでは聞いてないが、ちゃんと話し合えよ」
アランは最後にそれだけ言って部屋を出て行った。俺が悪いのに…どうしよう。春とは喧嘩したことがないから仲直りもどうしたらいいのか分からない…
はぁ…魔法は全く使えないし、春とは喧嘩するし…いいことないなぁ…
コンコンと音がして、お客様ですと言われた。誰にも会いたくなかったから帰ってもらおうかと思った。でもその顔が見えて考えを取り消した。この人は春じゃなくて俺のこと見てくれるんだろうか?
元の世界で春と一緒にいる無愛想なやつを誰も好きにはなってくれなかった。この世界に来ても春はアランに大事にされているが、俺には誰もいない。セドは王様の命令で動いているだけなんだ…
その人は妖艶な笑みを浮かべながら俺の元へ歩いてきた。昨夜は胡散臭いと思って見ていたが明るいところで見てもやはり美しいが胡散臭い。
「昨日ぶりだね、怜。こんなに早く会えて嬉しいよ」
客人の泊まっているところはこことは違う建物なのにどうやってここまで来れたのだろうか?でもこの男ならできるのだろうな。
「フィリップ…」




