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心配そうにし、引きとめる春をなだめ終わると、フィリップに手を引かれてテラスへ連れ出された。多くの人で賑わっていた室内とは違い、静かで夜風が気持ちいい。
「物わかりのいい子は好きだよ。自分の立場を弁えてる子もね。きみの名前は?」
この人…俺たちのこと知ってるのか?いや、ただ単に王太子より立場が上の人がそんなにいないからかもしれない。
「ばかにしないでください。何が目的ですか?」
「そんな警戒しないでくれよ。本当にただ話したかっただけだよ」
にこやかに笑う彼に警戒心が薄れそうになるが、慌てて正気を取り戻した。
「あなたとお話ししたい方はたくさんいらっしゃると思いますが」
「そうだね。でもあの子をぷるぷる震えながら守る君が余りにも可愛らしくてね」
「な…!」
やっぱりすごくバカにされてる…!
「気を悪くしたならすまない。だが僕の立場や外見のせいであのように接してくれる人はなかなかいなくてね。ただ単に仲良くなりたいだけなんだ。だめだろうか?」
ぐっ…そんな子犬のような目で見つめないでくれ…!たしかにこんな美しい見た目で王子様なんだからお世辞を言わない友達とか作るの大変なんだろうな…
「…怜だ。」
「…!そうか…レイ…いい名前だ!」
ぱあぁっと顔が明るくなり、見たら気絶する人が出そうなくらいのきらきらした笑顔を向けられた。
「そうか!君は異世界から来たんだな」
「はい、アラン王子に拾ってもらって…」
フィリップは話し上手の上に聞き上手でもあり、イレドのことや自分のことを色々話してくれた。だからつい盛り上がって自分の生い立ちやここに来た経緯についても話していた。話してたら信用できる人だと思ったからいいかなって思ったし、フィリップがとってきてくれたお酒をちょっとばかり頂いたせいでもあると思う。
「ん、んん…すみましぇん」
「構わないよ。話しすぎてしまったね」
「いえ、たのしかったれす」
俺はそうお酒に強くないことが判明した。眠くて立ってられなくなり、フィリップにすがるような形になってしまっていた。
遠くから俺のことを呼ぶ声がした。
「お姫様を拘束しすぎたかな…ねぇ怜、きみは街におりたことがあるかい?」
「まちれすか?はじめてここにきた日から行ってないれすよ」
「やはりそうか…一度アランに1人で街に行っていいか聞いてごらん。あいつはまだ君たちには秘密にしてるようだ」
「……?」
どういうこと…?お酒で頭が回らなくなり考えていると怜!と今度は近くで声が聞こえた。
「やはりあなたでしたか、フィリップ王太子」
「久しぶりだね、アラン王子」
「私の客人がお世話になったようで。引き取りにこさせていただきました。」
アランの声…春とセドもいる。…!セドはいつも近衛隊の制服を着てるけど今日は正装だ…かっこいい…
「王子自らとは。それに可愛い子連れで。セド様は久しぶりですね」
「どうも。早くその子を引き渡していただきたい」
セド…様…王子様みたい…素敵だなぁ。きっと女性にモテるんだろうなぁ…
「そんな焦らないでください。それにこの子が良ければ今夜は私が預かっても構いませんよね」
「何をおっしゃる…!」
「そりゃあこの子にだって誰と過ごすか決める権利くらいあるでしょう?せっかく仲良くなってきたところなので」
「ぐっ…」
「怜、もう少しお話しないか?どこかゆっくりできるところで」
「んん…ふぃりっぷと…?」
「そうだよ、まだ話してないお話しがたくさんあるからね」
「おはなし…!」
フィリップの話はどれも面白かった…!まだ話してないのがあるの…!
「怜!話なら俺がしてあげるから今日は俺と部屋に戻ろう?」
セドがお話ししてくれるのか…セドのお話聞きたい…
「うん…セドといく…ふぃりっぷまたね」
ふらふらと歩きはじめるとセドが受け止めにきてくれた。
「おや残念。じゃあまた話そうね、怜。言ったこと忘れないでね」
「うん?うん、またね〜」
ふわりと笑うフィリップに手を振るとフィリップも振り返してくれた。
アランとフィリップが何か言い合ってるのにも気づかずひとりすよすよ眠りにつく怜だった。




