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今回はいつもよりちょっと長めです

 城に戻ってからも特に加護の影響というか、それらしきものは感じなかった。というのも、普通魔法とかは訓練を積んで磨いていくものらしいから、魔法のタネをもらった感じで、それを育てるのは自分たちでやらないといけないのではないかという見解だった。だから結局情報としては森と、そこにいるスレンの存在や役割について知れた、ということしか進展はなかった。

 

 とりあえず魔法を使えるように訓練しようということになり、以前から来てくれている先生が教えてくれることになった。力の込め方について理論上は分かるけどなかなか成果が出なかった。そんな俺に反して春はその力を発揮しはじめた。どうやらあの時聞こえた土地神様のお言葉と発揮している力からみるに、春は治癒能力を使えるようだ。

「ふっ……はっ、見てみて!花が綺麗に咲いたよ!」

「ほんとだ!すごいな春!」

枯れた花を元に戻したのだ。先生はいずれ人間にも使えるようになるんじゃないかって言ってた。


「その花は?」

「春が咲き戻してプレゼントしてくれたんだ。初めて出来たやつだからって」

「そうか、綺麗だな。」

図書館でセドとよく座る席の近くの窓に春が贈ってくれた花を飾った。枯れる前よりも輝きを取り戻したんじゃないかってくらい綺麗に咲いてる。春と同じ先生に習って同じ時間訓練してるのに、なんで俺は出来ないんだろう…そんな悩みが顔に出ていたのか、セドは頭をポンポン撫でながら、怜は怜のペースでやればいい。と言ってくれた。そっぽ向いていても耳が赤くなっているのが見えて思わず笑ってしまった。


 そんな日々を過ごしているなか、この国に他国の王族や貴族を交えてパーティーが開かれることになった。これは2、3年に一度各国の持ち回りで開かれていて、互いの交流を深めましょうと言った意味があるらしい。そこには様々な思惑があるらしいけど…お前たちは気にせず楽しめ、とアランが言ってくれたので、美味しい料理を目当てに参加しようと2人で意気込んでいた。


 パーティーが近づくにつれ各国のお客様が集まり、城の中はいっそう華やかで賑やかになっていった。パーティーは前後夜祭含めて1週間続くことになっており、中2日は民のために城の庭が開放され、各国の要人たちとともに来た商人や芸団がもてなすことになっている。そんなことをするようになってるから、セドたち近衛兵もいつもより気を引き締めて警護しないといけない、と大変そうだった。


その一方でこちとら気楽なもんだから、毎日春とワクワクしながらその日を待っていた。前夜祭はそれはもう豪華なパーティーだった。いや、ほんとに映画に出てきそうなくらいの迫力。音楽も食事も踊りも全て素晴らしく、また来ている客人の服装も煌びやかなことこの上なかった。俺と春も一応正装をしているけど大人しい方で、みんなはそれぞれの国の特徴が出た華々しい服装をしていた。


「ちょっとあっちの飲み物取ってくるな」

「おっけー、いってらっしゃい」

パーティーが開かれている広間は広すぎてなかなか食べ物巡りをするのが大変だ。そんなことをする人がいるとは想定してないだろうけど。


「すみません、連れがいるので」

飲み物を取って帰ってくると春が誰かに絡まれていた。今日はアランが接待で忙しく騎士(ナイト)の役目ができないから厄介だ。アランがいると周りを威嚇しまくるから春に話しかけるような強者はいない。こっちの世界でも春の魅力は健在だな、と思いながら春の手をつかんでいる相手の手をとった。

「すみません、嫌がってるのでやめていただけませんか?」

振り返ったその顔はアランより深い青色をした瞳を持つ美しい人だった。

「これは失礼。可愛らしくてついね。」

その瞳が一瞬鋭く光ったように見えたが、すぐに一分の隙もない完璧な笑みを浮かべて詫びてきた。すごく柔らかくて美しい笑みだが、どこか胡散臭さが拭えない。春に絡んでたからそう思っただけかもしれないが。


「お話くらいさせてもらえないかな?」

「すみません、今日はこいつの騎士(ナイト)に変な虫を近寄らせるなと言われているので」

春が好きそうなイケメンではあるが、アランからガンと開かれた目で誰も近づけるなと頼まれたからそうもいかない。そもそもめずらしい異世界人として他国に利用されてはいけないからと、うすいベールで顔を隠し、人と関わらないようにすることを前提にこのパーティーへの参加を許されたので言われなくてもそうするつもりだった。

それにイケメンは危ない!春を狙ってる謎のイケメンが誰で、どういう意味で狙ってるのかわからない以上、春にイケメンを近づけないに越したことはないのだ。

「ふっ、ははははっ」

「な、何がおかしいんですか!」

ロン毛の金髪が嫌味なほど似合うそのイケメンは急に笑い出した。

「いやいや、虫呼ばわりされたのは初めてだよ。仮にも一国の王子にそんな口を聞くとは、勇気があるな」

笑いすぎたのか薄く涙を浮かべながらそう言った。

「す、すみません…!」

さぁーっと血の気がひいた。そうだ、このパーティーには各国の要人ばかりだ。こんな所で問題を起こしたら外交問題とかに発展するのか!?それとも俺たちは関係ないのか?そんなことをぐるぐると考え出してしまうと止まらなかった。


「いやいいんだよ。」

はー、笑った笑ったと言いながらまだ肩を震わしていた。

騎士(ナイト)…ではないか、、番犬くん?気に入ったよ。僕と少しお話ししようじゃないか。」

「え、あの、でも…知らない人には着いていけない!」

番犬と言われてむかっとしたが、そんなことを言われるなんて思ってもみなかった。こいつは怪しすぎる…!絶対について行っちゃだめだ….!

「ぶっ、ふふふ、知らない人、ね。たしかにね」

う、なんかすごくバカにされてる…いやでもそうだろ…!

「僕はイレド国の王太子、フィリップだ。どうかな、お相手していただけますか?」

イレドってあの西の大国じゃないか…!しかも王太子だって…!?これはますますまずい!そんな人に無礼を働いていたなんてなったら俺たちの責任者であるアランが…!


俺は誰もがうっとりするような笑みを浮かべた胡散臭いやつ、もとい大国の王太子様が差し出している手を取るほかなかった。

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