第1話:お母さんの言うことは大人になってもいしっかりと聞いておくべき!
「あんなことでクビになるなんて、世の中も生きにくくなったなぁ~」
俺の名前は中野 大樹。26歳。この作品の主人公である。主人公のはず。
なのだが、彼女なし、貯金なし、夢もなし。挙句の果てについ先ほど働いていた職場もクビになってしまった。この作者はいったい何を考えているんだ。俺の主人公補正はどこへ行った!
「愚痴ぼやいただけでクビになっちゃうんだもんなぁ」
今日まで働いていた職場はコールセンターである。毎日毎日、クレーム対応だのお年寄りへの使い方の説明だのをしてると愚痴りたくもなる。そして愚痴を漏らしたらお客様に対しての不適切発言だと、こっぴどく叱られクビ宣告をされた。本当にひどい話だ。
俺、中野は高校卒業と同時に役者を目指して田舎から上京してきた。養成所に通いながら夜勤のコンビニバイトでどうにか食いつないでいたが、安定しない収入と先の見えない夢に不安を感じ挫折。就活するもうまくいかず派遣社員として生活していたのだが、ついに大事な収入源すらも失ってしまった。
「はぁ、家賃どうしよ、、、もう人生逃げ出したいな、、、、」
「じゃあ、逃げ出しちゃえばいいじゃない」
「そうだなぁ、逃げ出しちゃうか。って誰?!?!」
ここは俺の部屋。それは間違いない。一人暮らし向けの狭い1Kアパートである。彼女などいるわけもないし、無職になった俺を慰めに来てくれる女友達もいない。出張で家まで来てくれるサービスを頼んだ覚えもないし誰かを家に入れたわけでもない。なのにだ。俺の目の前には一人の女性がいる。
肌は白く、整った顔。たわわに育った豊満な胸、きゅっと引き締まった腰、胸に負けず劣らず美形なお尻。腰まで伸びるきれいな黒髪。歳は俺より少し下だろうが子供というわけでもない。一目見て思う。いい女だ。
「あれ、俺デリバリー●●●とかレンタル彼●とか頼みましたっけ?」
「だぁれが、デリ●●じゃッ!!ひっぱたくわよ!!」
もう叩いてますやん。
「あの、すみません。どちら様ですかね?ここうちの家なんですけど。」
「挨拶がまだだったわね。私は夕。異世界から来た魔女よ。」
ガチャン。カチッ。
変な人にはかかわらないのが一番。お母さんもたとえきれいな人でも頭のおかしな人とお友達になっちゃだめよって言ってたしな。
「何も言わずに、外に追い出すなんてひどいじゃない。」
「うぉいっっ!今外に出したのに何でいるんだよ!!」
先ほど玄関から追い出したはずなの自称魔女が座椅子に座っている。
「言ったでしょ。私は魔女だって。何の結界も張ってない部屋に入るなんて鼻くそをほじりながらでもできるわ。」
確かにさっき部屋から追い出して鍵もしめたはずだ。なのになぜだ? 仕事をクビになったのがショックすぎて幻覚でも見てるんだろうか?
「幻覚じゃないわよ。私はちゃんとここに存在してるわ。どう? これで魔女だって信じてくれた?まぁ、信じてなくても話をするのだけど」
「・・・わかりましたよ、信じますよ。それで、魔女さんが俺に何の用ですか?まさか命をよこせとか?」
「あら、以外と勘が鋭いじゃない。あながち間違ってないわ。」
間違ってないんかいっ!
「でも命を吸い取るとかじゃないから安心して。あなの力を貸してほしいの。貸してくれるならあなたが望むものを与えるわ」
全然、安心できない感じなんですけどっ!
「ち、ち、ちなみになんですけど、俺はどんなことをすればいいんですかね?」
「私と異世界を救ってほしいの。」
あ、こういうやつアニメとかで見たことありますわ。それで主人公が異世界に行っちゃって俺TUEEEEってなると期待してみるも全然ダメダメでカエルとかに食べられちゃうやつだ。
「俺、見ての通りひょろっとしてるし戦闘経験どころか人を殴ったことすらないんですよ? そんな俺が異世界を救うなんて無理ですよ。」
「それは大丈夫。私が今まで見てきたこの世界の英雄やほかの世界の英雄たちの人生観をこれから一瞬であなたに体験してもらい強制的に戦闘経験を積ませるわ。少しくらっとするけどすぐに俺TUEEEEEになれるわよ。」
そんなうまい話があったら世のアニメ主人公たちは苦労してないんだよ!!
「そんな話信じれるわけないでしょ、他をあたっt」
「あなたに拒否権ないわよ?」
な、なんという殺気。これあれだ、断ったら完全に殺されるやつだ。
「それにあなた人生あきらめてるんでしょ。逃げ出したいって言ってたし。この機会に私と異世界を旅して変わりましょ♪」
「わかりましたよ、やりますよ。成功したらどんなものでもくれるんですよね?」
「保障するわ。魔女は交わした契約は必ず守るわ。」
もう人生どうにでもなれだ!こうなったら地獄でも何でも行ってやるよ!
「それじゃあ、これからあなたに英雄たちの歴史を体験してもらうわ。」
「体験ってどうやっって..」
「こうするのよ。」
そういうと、魔女の顔が近づいてきて
「....っ!!!!」
俺のファーストキスは自称魔女の美女に奪われてしまった。しかし相手が美女ならいいかと一瞬思ったがそれも一瞬だった。
「ぐっがああぁぁぁあっ!」
キスをされた瞬間、全身に激痛が走った。両の手足を引きちぎられているような痛み。暗くなる視界。激痛と同時にいくつもの映像が頭の中に流れ込んでくる。何百、何千人もの走馬灯を見ているような感覚。何度も傷つけられ、何度も傷つけ、殺し殺されていく。この痛みは過去の英雄達とやらが経験してきた痛みなのだろうか。それぞれの記憶で必ずある初めて人を殺した時の感覚。これから自分も経験することになるかもしれない心身の痛み。こんなことなら首を縦に振るんじゃなかった。やっぱりお母さんの言ってたことは守ればよかったな.....幾度とない激痛とむなしさの中お母さんから言われた一言を思い出しながら意識は途絶えていった。
~人生あきらめてるの?それなら私と旅をしないか?~第1話をお読みいただきありがとうございます。
黒雲ココナッツです。初投稿になりますので軽く自己紹介をさせていただきます。
好きな智一「杉田 智一」 好きな明夫「大塚 明夫」 好きな秀一「池田 秀一」です。
仕事の息抜きに「ブラックスパイダー ココナッツミルク味」というタバコ吸ってます。最近自分で巻くやつに変えてブラックスパイダーのジャグを買ったんですが開け方わからなくて袋ぐちゃぐちゃになりました。
黒雲ココナッツという名前はこのタバコからきてます。黒蜘蛛とするのはさすがにこの年になると恥ずかしかったので黒雲にしました。
仕事の合間を見て作品の投稿をしていこうと思うので皆さんぜひこれからも応援よろしくお願いします。