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始まりの始まり
ある国の都のある立派なお屋敷に、ある家族が住んでいました。王の側で武官として仕える父と、通りを歩けば誰もが振り返る美しい母と、もうすぐ6つになる少年が住んでいました。
少年には年の離れた兄が二人おり、職務で中々家に帰ってくることがない父の代わりに、兄たちは休日には必ず少年のもとにやってくるのでした。
父には会えなくとも、優しい母や兄たちに囲まれ、少年は賢くて勇敢な子に育ちました。
悲劇は突然でした。少年の6つのお祝い会が開かれた日。その日も父は来てくれませんでした。ですが、母や兄、屋敷の手伝いの者たちにも祝われ、少年は幸せでした。それに、父は少年に贈り物を用意してくれていました。それは少年の手のひらの一回り大きいくらいの小さな本でした。
その翌翌日、屋敷に王宮からの使者がやってきました。
それは-----
「お気の毒に」
決して母と目を合わせず、一片の感情も感じられぬ声で、使者は母に言いました。
「わざわざ・・・ご足労を・・・ありがとうございます・・・」
母の声は微かに震えていました。