運営公式大会
「さて、リンリンさん。帰りましょう」
ガイルの戦いを見届けた僕がリンリンに言う。
「分かりました!」
そう言って僕の横につき、僕の移動速度に合わせて歩いてくれる。
□
街についた僕達は帰って早々露天を開く。
リンリンさんがポーションを売るためだ。
僕はそのお手伝いをすることとなった。
「お、リンリンちゃんのポーションが売り出されるぞ!!」
「なんだと!?急げ!!」
「ちょっ。おま、押すんじゃねぇよ!!」
「はぁ?お前が押してきたんだろ?」
「あぁ!?やんのかゴラ!」
「上等じゃねぇか!!」
露天の前のありとあらゆる所で喧嘩が始まる。
これは酷い。
「すぅ……」
リンリンさんは大きく息を吸った。
「リンリン式ポーション購入の心得其ノ壱!!」
「「「喧嘩はしない!!譲り合いの心を持」」」て!!」
え、なにこれ!?
「其ノ二!!」
「「「購入本数ひとり十本!!一日一回、二度並ぶべからず!!犯したものは出禁と思え!!」」」
ちょっと楽しくなってきた。
「其ノ参!!」
「「「上記を守って楽しく購入しましょう!!」」」
謎の掛け声が終わると同時にプレイヤー達は一列に並びはじめた。
切り替えの速さが半端じゃない。
「リンリンさん。これは?」
「……プレイヤーさん達が喧嘩をした時に一人のプレイヤーさんがこの掛け声をを作って広めたところ根付いてしまいまして……今では私が言わないとと喧嘩が止まらなくなってしまいました」
「大変ですね」
「はい」
そんなやりとりをした後。
僕達はポーションを次々と売りさばく。
そして、全てのプレイヤーにポーションが行き渡ると露店を閉店した。
因みに売上額は500万弱だ。
閉店後もお客様……プレイヤー達は一向にこの場から離れようとしない。
何かあるんだろうか?
「ところでリンリンちゃんよぉ?その横にいる男とはどういう関係なんだ?」
あ、そういうことか。
見慣れない奴が横で手伝いをしていることを疑問に思ったんだろう。
「この方はイチさんで私のパートナーです!」
「はっはぁ!冗談はよせよリンリンちゃん!」
その言葉にリンリンは顔をしかめる。
「冗談ではありませんよ?」
少し声が乱れている。
怒ってくれてるのかな?
「ま、まじかよ」
「あれ、リンリンちゃんのパートナーだって」
「あ。俺あいつ知ってるわ。確か初日にガイルを倒した白髪だよ」
「ステ振りしない変態プレイの?」
「そうそう」
……。
「「「認めん!!」」」
一つ間をあけプレイヤー達が叫ぶ。
「もう!!私から組みましょうって誘ったんです!!私が認めればいいじゃないですか!」
「「「いや、認めん!!」」」
「うー。どうすれば認めてくれるんですか!!」
「リンリンちゃんを守れるくらい強くないとな」
「そだな。最初こそは良かったが今の段階でノーステ振りとか誰にも勝てんでしょ」
「そーだそーだ!!」
……こいつら僕に誰にも勝てないとか言ったか?
「ではあなた達は僕に勝てると?」
「ああ。負ける理由が見当たらない」
「そうですか。じゃあ僕がリンリンさんのパートナーに相応しくないと思う人は一列に並んで下さい。1人ずつですがお相手しましょう。僕が負ければパートナー解約ということで」
「ちょっと、イチさん!?そんな勝手に……」
リンリンさんがそういうのも無理はないだろう。
だが、これは引けない。
「リンリンさん。大丈夫です。信じてください」
数秒間。僕とリンリンさんの目が合う。
「分かりました。負けたら許しませんよ」
「はい!任せてください!!」
そんな訳で戦闘職プレイヤー達と戦うことになったのだが、流石に数々の露店が並ぶこのエリアで戦おうとしたら運営直属の騎士に怒られた。そして僕達は闘技場へと向う事にしたのだ。
□
パンパンと大会の知らせを告げる花火が上がった。
闘技場でバトル申請を出した僕を含めた敵《プレイヤー達 》。
申請を出したはいいが参加人数が大規模なため大会形式となった。
ルールは不利な状況にある僕が決めることになったが参加者のプレイヤー達にも拒否権はある。
そして僕が決めたルールはこれだ。
・基本なんでもあり
・一戦ごと体力、装備の耐久値の全回復。
・勝利条件、相手のHPを0にする。相手を戦意喪失させる。
この二つを上げた時リンリンさんは不安そうな顔をしたが、僕を信用してくれているためなのか「頑張ってください」と言ってくれた。
「それではこれより、運営公式による大規模な大会が始まります。
大会内容はプレイヤー
イチさんを一対一で倒すことが出来るのか!?です。
なお、この大会には報酬がつきます。イチさんを倒したプレイヤーに100万G+イチさんが倒したプレイヤー一人につき1万Gとなります。イチさんが勝利した場合、イチさんにはユニーク装備一式が贈られます。
そして、イチさんが負けた場合、イチさんはプレイヤー、リンリンさんとパートナー設定の解除及び、再登録が不可となります。
一人の女性のために戦う小さな英雄が勝つか!?
一人の女性のために心を鬼にする者が勝つか!?
いま、この戦いの幕が開ける!!」
因みにこれはワールドチャットにながれた。
その結果。最後に確認をした時には参加人数が、5687名と酷いことになっていふ。そして今も増えて続けていることだろう。
僕は闘技場のリングの中溜息を吐きつつ敵を見るやるのだった。