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魔人現る。ガイル、男の戦い。

リンリンさんのユニーク説明が終わり、互いに驚き疲れた僕達は一旦街に戻ることを決意した。


その時だった。


突如、群生地上空の空が暗黒に染まり、空から一つの隕石が落ちてくるのが見える。


「これはヤバイですね。リンリンさん!群生地を離れますよ!!」

「はいです!」


僕とリンリンさんは早急にこの場を離れることを決意すると同時に走り出す……ってリンリンさん速すぎぃ!?


ステ振りしてない僕は、はじめの一歩でリンリンと十メートルほど距離を離される。


「ちょ!?イチさん!?もしかしてステ振り……」

「ごめんなさい!!縛りプレイ中でしてないんです!!するつもりも今のところないんです!!」

「あぁ!!もう!!仕方ないですね!!」


そう言うとリンリンさんは僕を抱きかかえ走り出す。お姫様抱っこというやつだ。


「ヤバイ。惚れそう」

「え?なんです!?」

「何でもないです!!」


ついつい本音が出てしまった。

空を切る音でリンリンさんには聞こえてなかったようだでなによりだ。


リンリンさんが僕を抱えたまま数分が経ち、僕達はやっと群生地を抜けることが出来た。


そして群生地の方を見た僕達はその光景に驚愕する。


「……こ、これは」

「……群生地が消滅しちゃったです」


そう。僕達が群生地の方を振り向くと薬草の群生地は隕石が落ちた衝撃波により更地と化していた。そしてその中心には人形の異形な者が立っている。


「あれはなんですかね?」

「……多分落ちてきた人ではないでしょうか?」

「うん。それは僕も思ってました。……でもアレ、この世界の敵、僕らが倒すべき魔人ですよね?」

「……そのようですね」


このBDOにはストーリーは無けれど神に仇なす敵である魔王を筆頭とした魔人という種族が存在しそれを倒すとかなりの報酬がもらえるという。


別にストーリーというわけでないのでスルーしても構わないが倒すと【ユニーク】が手に入る可能性があるとプレイヤー間で噂されている。


「……ユニーク」

「……イチさん。まさか挑むんですか?」

「いや、流石に敵の情報もなしに挑みに行くのは馬鹿のやることですよ」

「そうですよね」

「はい。ですのでここで他のプレイヤーたちが来るのを待ってから、その戦闘を見て決めましょう」

「わかりました。そうしましょう!」


そして二十分ほどが過ぎとあるプレイヤーが大勢のプレイヤー達を引き連れてやってくる。



☆ガイル視点


「突然隕石が森に落ちてきたってぇから見に来てみたら魔族がいやがるぜ!俺にツキが回ってきたみたいだぜ!!おまぇらぁあ!!戦闘の準備はできってかぁああ!!」

「「「おおぉぉーーーー!!!」」」


俺は目の前の敵を前にギルドメンバーらに叫ぶように指示を出す。


白髪の男。イチとのPvPから一週間が経った。

ステ振りもロクにしないイチ負けた俺は俺自身をを磨くために昼夜問わずに修行兼レベリングをした。


モンスターを相手にするとイチに負けた時のことを思い出す。俺は弱い。だから負けた。俺はイチに勝てるのか?いや、勝てないかもしれない。そんな事を考えているうちに俺の根性も腐っていった。何がBDOの頂点に立つプレイヤーになるだ。何が最強だ。どうせ俺には無理だ。俺はイチには勝てない。このイラつきを抑えるために俺は戦った。だが戦っていると余計イチとの戦闘を思い出す。


そんな俺を見かけた戦闘好きの現ギルメンらが俺に声をかける。最初はイラつきを隠せなかった。それでもギルメンらは嫌な顔せずに俺に絡んでくる。その数は一人から二人へと次々と増えていく。面倒だが一緒に狩りなどもした。次第にイラつきはなくなり、最強にならなくてもこいつらとBDOを楽しむのもありだなと思うようになった。


そして、俺はギルメンら、総勢で約八十人に及ぶギルドの長になる。名前を決める際、ギルメンの一人が俺の真っ赤な髪から『紅蓮の焔』なんてふざけた事を言い出したせいで、俺の意思とは無関係にギルド名が『紅蓮の焔』という名前に決まった。


だが、こんなクソみたいなギルメンらと過ごしたこの一週間は俺の人生で一番楽しかったとも言える。


そんな奴らが俺に言うんだ。

最強のプレイヤーになれと。

イチに負けてから最強のプレイヤーに俺なんかがなれるのかと思っていた俺にだ。


はっきり言うと感動した。

俺が信頼した仲間達に最強になれと言われた。

このギルメンらの想いを踏みにじってはいけない。そう思った。


俺が求めた最強は今では俺達が求めるものとなった。

一度の負けでへこたれてる自身が恥ずかしくなった。

そして気持ちを改めた。

そしてギルメンらに告げた。

「おれは最強になる。未来のBDOの頂点はおれだ!!」


これが俺のBDOにおける新たな始まりだった。



☆イチ視点


「それじゃあ、魔法部隊!!撃ち方始め!!」


ガイルさんの合図とともに二十にも及ぶ魔法使いたちの魔法攻撃の弾幕が魔人に向かって放たれる。


「クハハハハ!!来て早々人間どもが湧いてくるとは好都合!!全てまとめて塵となるがいい!!」


魔人が高らかに叫び、弾幕に向かって腕を払う動作をした直後、どす黒い衝撃波のようなものが放たれ弾幕をすべてかきけす。


「っち!とんだ化けもんじゃねぇか!!魔法部隊はそのまま魔法を放て!強襲部隊は四方から奴を潰しにかかれ!無理はするな!ヤバイと思ったら引け!!」


ガイルさん意外と指揮を取れてるのは驚きだな。


「おお!!今のを見てまだ楯突くか!見ないうちに人間どもがここまで愚かな存在になっているとは驚きだ!!殺しがいがあって何よりと言っておこうではないか!!!!」

「言ってろエセ貴族口調の魔人が!!」


そして、魔人を取り囲むように『紅蓮の焔』のギルメンたちは攻撃をしかける。


だが、次の瞬間。

魔人を包囲していたプレイヤー達が消え失せる。

弾幕を相殺した時に使った手を振る動作によってだ。

残ったのはガイル一人。他のプレイヤーたちが無残にやられた中、ガイルは無傷だった。


「ふん。所詮ゴミの集まりではないか。つまらんな。期待外れだ」


その言葉にガイルさんがブチ切れた。


「てめぇ。今、ゴミの集まりっていったか?」


ドスのきいた声で言う。

本音を言うと僕もキレそうになった。

だが、隣にいるリンリンさんが出ていきそうになった僕を後ろから抱きつく形でとめる。


ふぇ!?

ちょっとリンリンさん!?


リンリンさんはの顔を見やると真剣な顔をしている。僕はその意味を理解した。


男の戦いに割って入るなってことだろう。


そして、リンリンさんは僕に抱きついてることに気付き「すすす、すいません!!」と慌てる。僕は「こっちこそごめんなさい」と返し、ガイルさんの戦いを見届けることにする。



「ゴミにゴミと言って何が悪い?」

「……取り消せ」

「ん?声が小さくて聞こえんぞ?」

「取り消せっていってんだろぉがぁああ!!」


ガイルさんのが魔人向かって走り出す。

っ早い!?


そして、ガイルさんは剣を抜き魔族に切りかかる。


「小賢しい!!」


魔人は剣を素手で掴み握りつぶす。だがガイルさんは止まらない。折れたのは剣の先端。残った部分の刃で魔人を切りつける。


「っぐ!?」


はいった!!

思いのほか効いてるみたいだ。

これなら……。


そして、ガイルさんは剣スキルを発動させる。

【スラッシュ】、得票めがけて横薙ぎに切りかかる。そして、【アッパースラッシュ】でしたから切り上げノックバック発動。そこに【極突】による突き攻撃。最後に……。


「くらえ!【聖炎・神乱斬】!!!」


その技の名を叫ぶと、剣に神々しい炎纏われる。

そして、放たれたのは型にもハマらないむちゃくちゃな乱れ切りだ。だが早い。手数が多い。更には魔人の足元からとんでもない熱量の十字架の火柱が燃え上がった。


「ぐぉおお!?この俺が人間ごときにやられるだと!?くそぉ!!ま、魔王アルバ様……この私めに力を……っ!?」


魔人が魔王の名を叫び苦しむ。


『たかだか人間ごとにこのザマとは……お前など魔王軍にらいらぬ』


どこからとも無く声が聞こえる。

次の瞬間。


ガイルが放った【聖炎・神乱斬】の炎がどす黒い闇の炎へと変化し魔人を焼き尽くす。


「ま、まおうさ……ま」


魔人の最後の声は聞くに耐えないほど悲しい声をしていた。


そして最後にガイルが一言。


「お前らの敵はうった……安らかに眠れ。……てか仲間をみすてるってか。所詮魔王もゴミだな」


ガイルさん?

ギルメン方々はホントに死んだわけじゃないよ?

最後の暴言には同感だけど。


こうしてガイルさんの男の戦いは幕を開けたのだった。

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