3.主人公、女学園へ招待される
5月14日
奏樹とリーピは夢魔退治のため、ターゲットの鹿波圭吾の家の前まで来ていた。
が、問題発生。
そう、家に入れないという根本的な問題。
二人は焦る。焦りに焦る。
すると、向こうから誰かが懐中電灯で道を照らしながらこっちへ歩いてくる。
いや深夜に懐中電灯付けて歩いてる人なんてアレしかねぇじゃん!サツ!
警察 警官 policeman 社会の安全や治安を維持する為の行政機関。 罪を犯した者を捕まえ、罰する正義執行人。
その警察官が真夜中に家の前でウロウロしてる男を見たらどう思うか。そう「アイツ怪しいな‥‥」となる。
そして俺には今、真夜中に家の前でウロウロする正当な理由がない!
話しかけられれば終わりだ、所まで御同行願われるか逃げるかしかない。
リーピは俺以外の人物には見えないらしいからほっとくとして。
俺は抜き足差し足忍び足で鹿波の家の塀の裏へ隠れ何とかやり過ごした。
「ふぅ‥‥"正義のヒーロー"が一歩間違えたら"犯罪者"にchangeだなんて‥‥恐ろしいことこの上ない」
さて、次の課題はどうやって家に侵入するか、だが‥‥あれ?リーピがいない‥‥まさかアイツまで隠れてたりなんてことは‥‥
「おーい、奏樹ー」
リーピの声だ。声のする方へ進んでいくと家の奥の方にリーピがいた。
「ここ、勝手口の鍵が開いてるから中に入れるよー」
あぁ、良かった。運良く鍵が開いていたのか、或いはいつも開けているのか、まあそんなことはどうでもいい。
とりあえずこれで第一関門はクリアだ。
塀をつたい勝手口の前へ向かう。
「失礼しまぁす‥‥」と、小鳥の囀りの様な声で勝手口の扉を開ける。
ガラガラ‥と音がして扉が開く。
中は台所。暗くてうまく進めない為、電気を付ける。
とくに散らかっているわけでもなく、調理器具も綺麗に洗われしまわれている。
物音を立てないように静かに階段を上り2階の『圭吾s room』と書かれた看板が掛かったドアをゆっくりと開く。
部屋は豆電球の明かりだけで、ベッドにはターゲットの鹿波圭吾がぐっすり眠っている。
電気を付ける‥‥‥‥よし眠ってるな。
「う~わ、これスゲェな‥‥」
「僕も想像してたのをゆうに超えてるよ‥‥」
部屋一面、壁全面、床、天井、全てにアニメのキャラクターであろうイラストが描かれたポスターがびっしりと貼ってある。
勉強机にはシールがあらゆる所に貼られ、フィギュアがたくさん置かれている。
アニメのキャラクターが載った抱き枕が少なくとも20個以上。
アニメのBlu-rayやらアニメソングのCDやらが棚にズラーッと。
何より俺が驚いたのは、この部屋にある戦利品であろう全ての物に誰一人として男が描かれていないということだ。
そう、ほぼ女。女に女に女に女、たまにリーピみたいな小動物のキャラクターがちらほら。
「気がおかしくなりそうだ‥‥」
「右に同じ」
一人と一匹がドン引きしながら鹿波圭吾の夢へ入る準備を進める。
「あ、電子機器は置いていってね。電子機器持ち込むと鹿波君の脳が異物が入り込んだと認識して強制的に僕らごと戻されるから」
「俺らは大丈夫なのか?」
「僕らは別に脳に直接触れるわけではないし、何より人間がダメだったら話にならないでしょ」
「まぁ、そうだな」
「ハサミはいいのか?」
「‥‥大丈夫‥‥だと思う」
「もっと自信もって言ってくれよ」
「のーぷろぶれむ!」
「はいはい」
部屋の時計を見ると時刻は既に3時10分、ターゲットが目覚める前に終わらせたい。
「なあリーピ」
「何だい?」
「鹿波圭吾っていつも何時くらいに起きるかわかるか?」
「んーっとねー、四月の鹿波圭吾の起床時間を足して30で割ると‥‥平均で6時50分だね」
「お前スゲーな」
「そりゃ精霊ですから!」
えっへんをそのまま顔に表したかのような表情をしている。
‥‥とすると、与えられた時間は長くても3時間40分ぐらいってとこか‥‥
「まぁそんだけありゃどうにかなるだろ」
「行くよ!」
「おう!」
リーピの力により、奏樹はターゲット:鹿波圭吾の夢の中へと消えていった。
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またあの時と同じ落ちる感覚。これ毎回味わわなきゃなんねえのか‥‥気が引ける。
お、景色がだんだんと見えてきた‥‥これは、学校‥‥?
奏樹はゆっくりと着地。 リーピはふわふわと浮きながら学校らしき建物を見つめている。
ここは校門らしい。俺の身長の2倍ほどのでっかい石門が二つ並んでいる。
「これは、学校銘板か?」
「すごいな~僕こんな大きな学校初めて見たよ~、奏樹の通ってる大学とは比べものにならないね」
「そうか?‥‥えーっ、私立夢見ヶ谷学園?そんな学園うちの地域にあったっけか?」
脳内マップで検索をかけていると‥‥
「あなたが夢里奏樹様ですか?」
「え、あ、はい」
「お待ちしておりました。それではこちらへ」
メイド服を着た小柄な女の子に声を掛けられた。なぜメイド服‥‥メイドか?
にしても可愛い。二次元から飛び出してきたかのような整った顔立ち。
髪はショートで少し濃い紫色だろうか。俺が見惚れていて「‥‥何か?」と首を傾げたときに首元の服が少しズレて見える綺麗な形をした鎖骨に俺は目を見開いた‥‥。
何だコレは!?心臓の鼓動速過ぎだろ!恋か!?恋しちゃった俺!?
この感覚は久々すぎて、俺ってこんなチョロかったっけ?と思ってしまうほどドキドキしている。
「奏樹顔気持ち悪い‥‥」
横から何か聞こえたが気のせいだろう。
俺はそのメイドであろう女の子のすぐ後ろを歩き、門の位置から見ていたときよりも遙かに大きい扉を開け中に入る。
‥‥
言葉が出なかった。イヤ、豪華すぎて‥‥ね。
何て言えばいいだろう、まさにあのー‥‥ドラマや映画で見るような超大金持ちが挙って泊まりに来るような‥‥
くそデカいシャンデリアに黄金に輝く幾つもの像、その豪華絢爛なエントランスに俺とリーピは唖然としていた。
「奏樹様、こちらへ」
可愛いメイドに呼ばれ、ついていく。
俺の自室よりも幅が広い廊下を渡り、着いたのは"学園長"と金字で書かれた部屋の前。
「学園長、例の者を連れてきました」
「入れ」
メイドがドアを開け、学園長は俺たちを中へ迎え入れる。
静かにドアが閉まり、つかの間の静寂。‥‥
「やあ、夢里奏樹君とリーピ君。初めまして、私は当学園の学園長を務めている『 ―― 』という者です。以後、お見知りおきを」
ん?何だ今の。名前の部分だけノイズが入ったようになって聞こえなかった。
「あの、すみません。もう一度だけ名前をおっしゃってもらってもよろしいでしょうか」
「『 ―― 』です」
ダメだ、聞こえない。
「‥‥?よろしいですか?」
「あ、はい、大丈夫です。ありがとうございます」
どういう事だ?夢の中だからか?それとも何か伏せなければいけない理由でも‥‥
「それじゃあカナ、あれを彼らに」
「かしこまりました。少々お待ちを」
ペコリと頭を下げ部屋を後にするメイド。カナちゃんっていうのか、覚えておこう。
少し経ってカナちゃんが戻ってきた。何かを手に持っている。
「奏樹様、これを腕にお付け下さい」
何かはわからないがとりあえず腕に付ける。
「それは好感度メーターっていってね、この学園にいる女の子の君に対する好感度が表示される機械だよ」
「好感度メーター‥‥ですか」
「そう、好感度メーター。今はまだ誰とも会ってないから0になってるけど」
「はぁ」
「では早速本題に入ろう。これから君にはこの学園にいるあらゆる女の子に会い、話し、戯れ、触れ合い、仲良くなって好感度を上げてもらう」
えぇ、マジかよ‥‥
「制限時間は3時間。その間にその好感度メーターの一番上に表示されているMAXというところまで上げてくれ。好感度を上げる方法は問わない。ただし、社会的秩序を守った常識の範疇で行うこと。もし、淫らな行為をしたり、生徒が怪我を負うようなことがあればメーターは0の値まで逆戻りだ」
「つまり、常識を弁えたうえで女の子たちの好感度を3時間以内にMAXまで上げろと」
「そういうこと」
‥‥まぁ、どうにかなるだろ。
「ちなみにメイドは対象外だからね。僕は対象内だから好きにしていいよ♡」
「結構です‥‥」
「あ、あと一つ。普通にやるんじゃおもしろくないから君にとって"ある障壁"を与えておいたから」
「ある障壁?何ですか?」
「それは始まってからのお楽しみだよ♪」
「はぁ‥‥」
厄介な物じゃなければいいけど。
よし、行こう。
「それじゃあ、始めるよ~。制限時間は3時間。よーい、始め!」
俺はドアを押し開け、颯爽と走り出した。
女の子だらけの学園っていいですよね‥‥
まぁ、僕が行ってもハーレムはありえないですけど。