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1.主人公、夢に飛ばされる

 「や"め"ろ"お"お"お"ぉぉぉぉっ!!!」

 上下左右前後すべてが極彩色の空間で、男はただ一人、仲間の死を嘆き叫んでいた。

 直後、身が跳ね上がる程に地が揺れる。

 すると男よりも二回り程大きい黒い影が眼前、巨木の様なごっつい剣を男の左胸、ちょうど心臓の位置で停止。

 「グサッッ」 硬い無機物が生々しく皮膚を破り、肉を裂き、骨を砕き、体を貫通した。

 意識が朦朧(もうろう)とする中で男は、「っ‥‥」 言葉さえ発せずに地に伏した。


______________________________________________


 20××年5月8日


 春、町の人々がせっせと鯉のぼりを片付け始めるであろうこの時期に、少年は一人愚痴垂れていた。


 「‥‥何でバレンタインでもクリスマスでもねぇ時期に

 TLがリア充共のキャッキャウフフな写真や動画で埋め尽くされてんだよ・・・ウゼェ」


 画面からでも伝わってくる幸せ感満載のTLに少年『夢里(ゆめざと)奏樹(そうき)/(19歳 童貞)』は、

憎たらしい眼つきで貧乏ゆすりという感じ悪そうな態度で、

ただ一人、画面に文句を言っていた。


 俺は夢里奏樹、現在19歳・大学生でコンビニバイトの収入と親からの仕送りで生活している。

 彼女いない歴6年のチェリーボーイだ。趣味はSNS徘徊とギター演奏、曲を聴くのも好きだ。


 これといった特徴もないごく普通の大学生に見えるだろうが、他とは決定的に違うことがある。

 それは不眠症だ。一日の平均睡眠時間は2時間、眠れない日だってある。


 その結果疲れが顔に出たせいか、友達に、「奏樹お前、日を追うごとに老けてねぇか?」とまで

言われる始末。たぶんこのよく愚痴る性格も不眠症がもたらしたものだろう。


 いつもなら2時間程で目が覚めるのだが、そんな奏樹がこの日、なんと7時間も寝れたのだ。

 だが同時に、悪夢というものを初めて見た。



 これによって奏樹は、平凡な日常を一変させる転機を迎える。



 5月11日


 おかしい。

 一昨日 昨日 今日と、立て続けに6時間以上寝れてしまった。

 これは何だ‥‥? 不幸な事でも起こる前兆か?


 自分にとってあまりにもありえない出来事に奏樹は困惑していた。


 「しかし睡眠ってスゲェなぁ、2時間と6時間じゃ次の日の体の調子がまるで違う。」


 ネットを使う時間が減ったのは(しゃく)だが、まあいいだろう。

 そんなことを思いながら今日もSNS徘徊をしていた。


 すると、突然PCの画面が発光。

 急だった為、咄嗟に腕で眼を隠す。

 少し経ち、腕をどけると、そこには上半身が真っ黒、下半身が真っ白な模様の猫の様な生き物が居た。 ‥‥?何だコイツは?新種の猫か?

 急すぎる展開に奏樹は戸惑う。


 「やあ! 少年」とソイツが喋った。

 ソイツは間髪入れず、「君に少し手伝ってほしい事があるんだ。来てもらうよ」と。

 俺が口を開き何者なのかを訪ねようとしたその時、周りの景色が一瞬にして吹き飛んだ。


 「‥‥‥!」 落ちている感覚が伝わってくる。どういうことだ?

 今何が起きているのか全く理解出来ない。

 すると、周りがパズルのピースを埋めていくかのように世界が形作られていく。

 俺は地面に体を打ち付ける寸前にまるで重力がなくなっていくかのようにフワッと浮き、ゆっくりと着地した。


 見るとそこは極彩色の世界。

 赤を始めとした、青や、黄色、緑、オレンジ、白、いわば明色で彩られている。

 ずっと見ていると目が痛くなってくる。


 「おい少年、君の名前は何という」


 「あ? 何で言わないといけないんだよ」


 「いいから!」


 「‥‥夢里奏樹」


 「夢里奏樹‥‥よし、覚えた。奏樹、君にはこれから"敵"を倒してもらう」


 「いきなり呼び捨てかよ‥‥って、敵?どこに敵がいるうんだよ」


 「えっとねぇー、ん?あれれ?」


 「どうした?」


 「ん?あぁ、いや、何でもないよ。えーっと‥‥あ、アレアレ!」


 ソイツが指さした方向を見ると‥‥そこには黒い影がいた。

何かを手に持っている‥‥? あ、走ってきた。      って、えぇ!?


 「ちょっっ! おい! なんかこっち来てんぞ!? おい! どうすんだよ!!」


 「いや、倒すんだよ?」


 「唐突すぎんだろっ! 何かもわかんねえ奴相手に‥‥そもそもどうやって倒すんだよ! とりあえず

 逃げる!」

 敵とは逆方向に逃げる。猛ダッシュで。100m世界新記録出せるんじゃないかぐらいの速さで。


 「おいお前!」ダッダッダッダッダッダッダッダ


 「僕はリーピだよ」スィーーーーーーーーーーー


 「おいリーピ! アイツどうやって倒すんだよ! 教えろ!」ダッダッダッダッダッダッダッダ


 「それが僕にものを頼む態度かい?」スィーーーーーーーーーーー


 「どうやって倒すのか教えてくださいましぃ!!」ダッダッダッダッダッダッダッダ


 「僕は知らないよ?自分で探して?」スィーーーーーーーーーーー


 「てんめぇ! 後で覚えてろよっ!!」ダッダッダッダッダッダッダッダ


 「あっはっはっはっは! 頑張れぇ~~」スィーーーーーーーーーーー


 くそ! 無駄に喋ったせいで体力がもたない、早く何か倒す方法を見つけないと!

 ‥‥ダメだ!何も無いし何も思いつかない!


 ‥‥ガンッ!  ドサッ! 「っ痛ぇ!」

 何かに(つまづ)いた。これは‥‥


 ‥‥!しまっ!

 慌てて振り向くと、"敵"が目の前にまで迫っていた。

 思考が飛んだ。

 そしてその"敵"は、巨木の様なごっつい剣を俺に向かって振り下ろした。






 ‥‥ん?生きてる‥‥?

 てっきり死んだと思っていた。

 見ると、"敵"が倒れている。死んでるのか?


 「おいリーピ!‥‥‥‥おーい!」


 「ん?何だい?」


 今お前どっから現れた。


 「これ、お前がやったのか?」


 「いいや、僕じゃないよ」


 「じゃあ、誰がやったんだよ」


 「知らないよー、僕見てなかったし」


 「見てなかったって、酷くね?」


 じゃあ何故だ?コイツが倒される要素がどこにあった?


 「とりあえず完了したことだし、帰るよ」


 「は?帰る?どこに?」


 「どこにって、君の家だよ」


 「あぁ‥‥でもどうやって‥‥ってうわぁぁぁぇぇぇ!!!」


 またさっきの落ちる感覚だ。どっかのテーマパークにあった急に落ちて内臓がフワッとなるアトラクションに似た感覚。オェ‥‥気持ち悪い‥‥



 ・ ・ ・



 ガンッ!  「っ痛ぇ!」

 自室の床に落下。どうやら帰ってこれたらしい。

 「おいリーピ、お前が現れてからここに帰ってくるまでの事、全部説明してもらおうか」


 「‥‥5時間ぐらいかかるけどいい?」


 「簡潔にわかりやすくお願いします」


 「えー、難しいなぁ‥‥まぁ一言で言うと、〔君には今日から色んな人の夢魔を退治してもらう〕かな」


 「‥‥は?夢魔?何だそれ?」


 「夢魔っていうのは、人が寝てる時ってたまに夢見るでしょ?」


 「あぁ、俺も極稀に見るな」


 「その夢に寄生する悪魔のことだよ」


 「悪魔?」


 「そう、その人の性格、趣味、特技、思い出、コンプレックスその他諸々の要素、いわばその人の『個性』や『特徴』を元に生み出される悪魔、それが夢魔」


 「ほう、つまりその夢魔ってのは夢を見てる本人の個性や特徴を表してるってことか」


 「そゆこと」


 「じゃあ俺らがさっきいた場所は誰かの夢の世界だったってことか?」


 「うん」


 「‥‥じゃあさっきのは誰の夢でどんな夢魔だったんだよ」


 「それがね~、後々気づいたんだけどね~、僕も聞いてた情報と違っててね~、あんな真っ黒なデカブツが襲ってくるなんて聞いてなかったのね~‥‥えへへ♪」


 「えへへ♪じゃねえよ! じゃあ俺は何だ!?聞いてた情報と違う‥‥実質情報ゼロの未知の敵と戦おうとしてたわけか!?」


 「まぁ‥‥でも結果的に生きて戻ってこれたから良かったじゃない」


 「このっ‥‥っておいまて、生きてってことは死ぬこともあるってことか?」


 「もっちもちろん。夢魔を殺すか、自分が殺されるかだよ」


 「まじかよ‥‥俺が夢魔を倒す方法は?」


 「それはそのときの夢魔によるね。世の中色んな特徴を持った人がいるから、武力だったら体や武器を使って、知力だったら頭や情報を使ってみたいな感じ」


 「俺はオールマイティーな人間じゃねえんだぞ‥‥頭がいいわけでもないし運動神経がいいわけでもない」


 「まあ僕もヒントをあげられるときはあげるから、これから頑張ろう!」


 「現実世界(リアル)の能力そのままでやっていくのかよ‥‥どうせならもっとこう、異世界に行ってチートしまくるみたいな方がマシだよ‥‥」


 「夢みすぎね。あ、この夢は僕らの言ってる夢とはちょっと違うからね」


 「‥‥でも将来の[夢]と寝てる時に見る[夢]ってのは同義なもんじゃないのか?」


 「そこらへんは色々な解釈があるからねぇ、でもどの[夢]にも共通して言えるのはすべて"現実ではない"っていうことぐらいかな」


 この後奏樹は、リーピと名乗る謎の猫みたいな生き物と[夢]について語り明かした。

皆さま初めまして!レートと申す者です。

この度、初の作品を投稿させていただくことになりました。

拙劣な文章ではございますが、少しでも楽しんで頂けたら幸いです。

よろしくお願いします。

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