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不純なる悪

「あいつら何なんだよ!常識や美学ってもんがないのか!?」


ここは悪の秘密結社CHOONYの玉座の間。

総統であるケイオスバーグは荒れに荒れていた。

傍らには参謀を務めるDr.Aが総統に提出されたに報告書に目を通していた。


「これはまた酷いですな。完敗ではありませんか」

「怪人相手に複数で戦う。それはいいんだ。強敵に一致団結して戦うってのは戦隊の美学だ。

 けどな。20人でフルボッコって虐めじゃねえか」

「指揮官の号令の下、一斉射撃の後に近接部隊が突撃。

 こちらの攻撃を察知すれば近接部隊が後退して中衛が盾で防御し後衛が砲撃。

 見事な連携攻撃としかいいようがありませんな。

 後始末がなければ」


そこには戦闘の過程と結果が詳細に記されていた。


「あいつらに町を愛する心ってのはないのか!

 ただ怪人を倒せばいいってもんじゃねえだろ。

 被害総額が億単位ってどんだけ後先考えずに攻撃してんだよ。

 オーバーキルもいい所じゃねえか」

「資料によれば連中の中にこの町の住人はおりませんな。

 皆この町の高校に通っているという共通点しか見受けられません」

「あれか?学生時代にヒーローやってましたって履歴書書けば就職が優遇されるのか?

 それともリアルでハンターゲームでも楽しんでるって部類か?世も末だなオイ」


正義と悪の戦い。

昔から続いていた構図は時が経った今でも変わらない。

しかし、その在り方は大きく変わっていた。

正義はより冷徹に。

そして悪はより狡猾に。


その流れに付いていけない者もいた。あえて付いていかない者もいた。

それがCHOONYであり、少し前まで彼らと対峙していた謎の覆面ヒーローであった。


CHOONYの大義名分は悪の組織従来の「暴力や恐怖での支配」ではなく、

「ギブアンドテイクでの共存。そして依存からの支配」であった。

それは無理に暴力沙汰を起こさず、支配者の地位を民衆から望まれての形で確立しようという

考え方であった。


よって、CHOONYの産み出す怪人達は一風変わった者が多かった。

人間社会においては劇薬にも等しい特徴を共通して持っていた。

人間にとって有害・不要とされているものをエネルギー源としていたのである。


例を挙げよう。


産業廃棄物をエネルギー源とし活動する怪人がいた。

街の環境美化に大きく貢献している事で名誉町民の授与という話も浮上していた。

しかし、県外からも不法投棄する業者が急増し摂取量が増えすぎたために

オーバーヒートを起こし暴走。

謎のヒーローによって撃退された。


ヘドロを主食としレアアースを排泄する怪人がいた。

適正価格で地元の会社と取引し、産業の活性化に大きく貢献していた。

これも不法投棄されたヘドロのあまりにも強い毒性に細胞が変異し、周囲に毒素を

撒き散らすようになる。

謎のヒーローにまたもや撃退された。


取り扱いを間違えなければ諸手を揚げて歓迎される存在。

外見は珍妙でも、そこに目を瞑れば与れるメリットが莫大な存在。

それがCHOONYの怪人達であった。


そして、それに対抗する謎の覆面ヒーローもまた奇妙であった。

街の被害を考慮して、決して無理に怪人達を倒さなかったのである。

追い返すだけでその場を去るということも度々あった。

しかし、どうやっても街の被害が避けられない局面になるとどんなに不利な状況でも

立ち向かっていた。

結果、被害が最小限にとどめられ続けていたのである。


長く続いた戦いでCHOONYは幹部の大半を失った。

だが、長く続いたせいで隠れ蓑として使っていた会社が持てる技術の成果で急成長し、

ケイオスバーグをしてしばらく静観して社長業に専念しようかなと思わせていた。


取り扱いさえ間違えなければ環境に優しい悪の組織と財政に優しい正義のヒーロー。

ぬるま湯の様な対立の状況を一変させたのは別の正義の戦隊の出現であった。


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