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不穏な影?



 一哉と大崎と別れて約30分後。唯は、無事家へと帰り着いていた。


「ただいまー」


「お帰り。今日はちょっと遅かったのねえ」


「途中で先輩と買い物してたから」


 母親の声にそう答えた時、そばを通りかかったらしい弟の玲司(れいじ)が口を開いた。


「先輩って男?」


「ううん、女の先輩。前話したじゃない、私の指導してくれてる先輩のこと。先輩のアドバイスのおかげで、いい服買えちゃった♪」


「何だ、つまんねえ。ハタチも越えたのに、ホント男っ気ねえのな」


「玲司っ」


 相変わらず可愛げのない弟を叱りつけた後、唯は腕にそっと抱きついてくる存在に気付いた。


「ん? どうしたの、芽衣子(めいこ)


 まだ中学生の、妹の芽衣子だった。こちらは素直に唯を慕ってくれる、可愛い妹である。


「お姉ちゃん、今日はあたしがカレー作ったの。だから、早く食べて食べてっ」


「うん、わかったわ。着替えてきたら食べるから、ちょっと待っててね」


 嬉しそうにうなずく妹に笑いかけてから、自室へと急ぐ。ドアを閉めて、着替えながら先刻の妹の笑顔を思い浮かべていたところで、唐突に脳裏によみがえってくる一哉のほんとうに嬉しそうな笑顔。顔が、一瞬にして紅潮する。


 私が芽衣子を可愛く思うように……私のことを思ってくれてたのかな。


 思えば、一哉は昔から優しかった。真央と同じように扱っているように見えて、実はさりげなく気遣ってくれていたりして────まあ真央は、実の兄という気安さからか、一哉に対してまるで遠慮をしていなかったから、それも考えて一哉は気を遣ってくれたのかも知れないが、それでも唯に対してとても優しく接してくれたと思う。いまにして思えば、彼が初めてマトモに女の子扱いしてくれた人だったのではないかと思えるほど。身長のせいか性格のせいか、弟を筆頭とする周囲の人は唯に対してほとんど女の子扱いをしてくれなかったから。


 たとえ、真央の友人としてでも────妹扱いだったとしても、嬉しかった。


 そんな嬉しさを胸の奥に秘めたまま着替えを済ませ、妹が用意してくれたカレーを食べて他の日課を済ませてから、唯はいつもと同じ頃に床に就いた。



 そして翌朝。いつものように出勤して、身支度を整えて始業時間前にデスクについた唯は、挨拶を交わした後の藤子が意味深な笑顔を浮かべていることに気付いた。


「先輩? 私の顔に何かついてます?」


「んー? 昨日はあの後、『お兄ちゃん』と仲良くできたのかなーって思って~♪」


「!!」


「あれ? 小林さんってお兄さんいたっけ? 弟さんと妹さんじゃなかった?」


 同じ新入社員の木内が言うのに「従兄弟の人のことよっ」ととっさにごまかしてから、藤子を連れてオフィスの端まで足早に歩いていく。


「な、何でそんなこと知ってるんですかっ!?」


 思わず小声で問いかける。「お兄ちゃん」といったら、昨日一哉が冗談交じりに言ったあの言葉しか心当たりがない。一哉に偶然会う前に先に帰った藤子が、それを知っているはずはないというのに!


「ん~? 今朝の出勤途中に大崎に会っちゃってさ、あ、あいつも大槻と同じくあたしと同期って聞いたでしょ? その時、すっごい楽しそうに言ってきてさー、『あまりに初々しくて、はたから見ててすっごい恥ずかしかった』って」


 恐らく大崎は大半は真実を藤子に語ったのだろうが、後半の部分は大崎のひやかしか藤子のひやかしか、でなければ双方のそれだと思われる。


「いやー、『何でもない』とか言っといて、何だかんだで仲良くやってるのねーと思ったら、お姉さんは嬉しくってー♪」


「ち、違いますってば~っ!」


 唯ももう、恥ずかしくて仕方がない。そしてタイミング悪く、そんな二人の背後から声をかけてくる存在があった。


「そんな端っこで、二人して何やってるんだ?」


「あら。『お兄ちゃん』、おはよう♪」


 唯と同じく、その一言ですべてを悟ったらしい一哉の顔が、一瞬にして赤く染まる。


「なっ どっ あ、おお…!」


「もう、涼しい顔してやることはちゃんとやってるのねー♪」


「だからそれは違うって…!」


「せ、先輩、誤解しないでくださいねっ!?」


「え~?」


 ふたりが真っ赤な顔で弁解している間に、始業時間を報せるチャイムが鳴り響いた。




            *    *     *




 久しぶりに名前を呼んだせいか、それとも大崎や藤子にさんざんひやかされたせいか、その晩唯は懐かしい夢を見た。


 それは、もう遠い高校生の頃の夢。唯はいまはもう懐かしい高校の制服を着て、真央と共にマネージャー業────といっても難易度は雲泥の差だが────に励んでいて、実家の飲食店でアルバイトをしていた一哉が時間を見計らって抜け出してきては、車に乗ってきて校門のところで待ってくれている夢。


「あっ やだ、さっき着替えた洗濯物、部室に忘れてきちゃった! すぐ取ってくるから、いち兄、唯、ちょっと待っててっ」


 そう言って、真央は部室へと走っていってしまって────唯たち女子は、サッカー部員の男子たちが着替え終わって出ていってから部室に入って着替えるから、誰も気付かないまま忘れてきてしまったのだろう。そして最後に鍵を閉めて職員室の所定の位置に戻すのは、マネージャーの中で最高責任者にあたる真央なので、真央自身が行けば事足りるのである。


 あっという間に見えなくなってしまった真央の姿を見送って────運動神経に自信のない唯と違い、真央はあの小さな身体でスポーツ万能の上、学年でもトップクラスの俊足なのだ────唯は一哉と共に取り残されて、何となく居心地の悪い思いを味わっていた。


「…ごめんね、騒がしい上にそそっかしい妹で」


 申し訳なさそうに一哉が言うのを、慌てて片手を振りながらフォローする。


「そんなことないですよっ あの明るさとポジティブさに、私も何度元気づけられたことかっ」


「唯ちゃんぐらい落ち着いてれば、たいていのことは乗り越えられるんじゃないのかい?」


「いえ、それが…私も真央と一緒で、見かけと中身が全然違うので、何度『見かけ倒し』と言われたことか……」


「ひどいこと言う奴がいるもんだなあ」


 他人のことだというのに、一哉は半ば本気で憤慨しているように見える。


「あれ? 小林、まだ残ってたのか? あ、そういえばサッカー部の手伝いしてんだっけか」


 そこに通りかかって声をかけてきたのは、同じクラスの別の運動部に入っている男子だった。こちらも高校最後の大会が近いので、いままで練習に励んでいたのだろう。


「あ、うん。そっちもいま帰り? 大変ね」


 労う言葉をかけた唯の声に答えることなく、その男子に同じ部の仲間らしい数人を含めた面子は、無言のままで唯と一哉とを見比べている。


「…もしかして、小林の彼氏?」


 面白がるような響き────けれど決して悪意は感じられない声で問いかけてくる相手に、唯は慌てて顔の前で両手を振る。


「ち、違うわよっ こちらは真央を迎えに来た、真央のお兄さんっ 失礼なこと言わないでよ!」


「なーんだ、彼氏に迎えに来させるなんて、小林も隅に置けねえなあと思ったのに。大槻の兄さんかあ、どうも失礼しやーすっ」


 皆で一斉に一哉に会釈をして、連中は去っていく。後に、真っ赤な顔の唯ととくに気を悪くした様子もない一哉を残して。


「す、すみません……同じクラスの男子たちが、勝手なことを…」


 唯はもう、一哉に対して申し訳ない気持ちでいっぱいだ。


「え、何で?」


「私なんかの…に間違われたら、迷惑じゃないですか。お兄さんには、ちゃんとお似合いの彼女さんがいるんでしょうに」


 元々の謙虚な性格に加えて、長い間に培われてきた自己評価の低さのせいで、唯がそんな風に卑屈になってしまっても無理はない。俯いてそう告げる唯に、一哉はまるで平然とした顔で言葉を発した。


「『お兄さん』じゃなくて、名前で呼んでって俺言ったよね。あと俺いまはフリーだけどって、問題はそこじゃなくて、何で唯ちゃんがそんなに自分を卑下するのかわかんないなー。俺から見たら、唯ちゃんは十分可愛いと思うけど」


「お、お世辞はいいですようっ」


「お世辞なんかじゃないよ。本気でそう思ってるし、中身だって努力家で友達思いでいいコだと思ってるのに、何でそんなに自分に自信が持てないの?」


「だ、だって、いままでマトモに女の子扱いなんかされたことないし、こんなデカくてお固い女の子、男の人から見たら恋愛対象外にしかならないと思うし…っ」


「俺からしたら、唯ちゃんなら余裕で恋愛対象内だけど」


「え」


 思わずそちらを見た唯の瞳に飛び込んできたのは、からかっている様子などまったくなく、本気でそう思っていそうな表情でまっすぐに唯を見つめてくる一哉の顔……唯の頭にかーっと血が上り、もう何を言っていいのかわからなくなってしまったまさにその時、真央の声が背後から聞こえてきた。


「ごめーん、お待たせしましたーっ 無事取ってきたよ、帰ろーっっ」


「あ、真央…」


「ん? どしたの?」


「ううん、何でもないわっ」


 思わずごまかすように笑顔を浮かべて、何となく妙な雰囲気になってしまった空気を吹き飛ばすように明るくふるまう。


「…んじゃ帰るか」


 チャラ…とキーホルダーを取り出して、一哉は車の運転席へと向かう。何も知らない真央と共に、何と答えていいかわからなくて困っていた唯もホッとしながら後部座席へ向かった。まさか、一哉にあんなことを言われるとは思わなかったから。唯に同情して言ってくれたのだろうと思うのだけど、先刻の一哉の表情を思い出すと、そればかりとは思えない何かがあったような気がして、唯はやはり混乱してしまう。もはや、本人に確認するすべはないけれど……。



「…………」


 カーテンの隙間から朝陽が差し込み、窓の外からは鳥のさえずりや道を行きかう人たちの挨拶が聞こえる中、唯はふと目を覚ました。見慣れた自分の部屋のベッドの上だということはわかるが、いまがいったいいつなのかがわからない。


 いま夢に見ていた高校の頃のことが現実で、現実だと思っていた働きだしてからのことのほうが夢なのか……自分でも間抜けだと思うが、この時の唯には真剣にわからなくなっていたのだ。


 起き上がり、枕元に置いてあった携帯を見て、日付を確認する。ああ、やっぱりさっきの夢は過去の高校時代の頃のことなのだ。そうだ、もう大学も卒業して働いている、22歳の自分が本来の自分なのだ。ほうとため息をついて、携帯をローテーブルの上にそっと置く。


「おはよう、お姉ちゃん」


「はい、おはよう。…玲司は?」


「お兄ちゃんなら、部活の朝練があるからってもう行っちゃったわよ」


「そう。頑張ってるのね」


 妹と入れ代わりに洗面所に入り、冷たい水で顔を洗う。その冷たさに、ようやく現実に戻ってきた気がする。


 まったく。大崎や藤子があんなことばかり言うから、変な夢を見てしまったではないか。いまはここにいない二人に、文句の一つもぶつけたくなってくるが、実際会ったところであちらのほうが先輩だし、結局は何も言えないんだろうなと思いつつ、支度を始める。


 いつものように身支度を整えて、いつものように駅に向かい、いつものように電車に揺られ、いつものように会社の最寄りの駅で降りる。習慣とは恐ろしい、と思いながら歩いていたところで、後ろからぽんっと肩をたたく誰かの手。


「!?」


 振り返ったところで、いま一番見たくなかったかも知れない────嫌とかそういう意味ではなく、ただ恥ずかしいだけなのだが────顔を見い出して、思いきり挙動不審に陥ってしまった。


「おおおおお、おはようございます、大槻先輩っ」


「…おはよう。ごめん、何度か声かけたんだけど、気付いてもらえなかったからつい……」


 肩をたたいたことだろうと思われるので、唯はふるふるとかぶりを振る。


「いえ、どうぞお気になさらずっっ」


 気を抜くとすぐに真っ赤になってしまいそうになるのを懸命に堪えながら、唯は前を向き直る。その隣に並んだ一哉から、再びかけられる声。


「どうかしたのかい? 何だか今朝は落ち着きがないようだけど」


「い、いえ、何でもありませんっ」


 まさか、昔の恥ずかしい夢を見てしまったから、なんて言える訳がない。またしても藤子が乱入してくるまで、唯はかちんこちんに緊張しまくっていたので、自分を見つめている不穏な視線の持ち主にまるっきり気が付かなかった。そのことに唯が気付くのは、かなり後になってからのことである……。




            *    *     *




 何とか普通に一哉と接することができるようになったのは、午後も半分近く過ぎてからのことだった。デスクでいつものように藤子に指示をされた仕事をこなしていた唯は、一段落ついたところでふうと息をついた。隣のデスクに座っていた藤子が、気付いて声をかけてくる。


「あ、ひと区切りついた?」


「はい。あ、何かご用がありました?」


 そう答えると、藤子は申し訳なさそうな顔で、一枚のメモを差し出してきた。


「ごめん、ちょっとめんどくさいこと頼んじゃっていい?」


「大丈夫ですよ」


「資料室ってわかるわよね? そこに行って、このメモに書いてある年度のファイルを持ってきてもらいたいの。かなり前のだから、デジタル化されてない資料なのよね。まさか、いまごろになって必要になるとは思ってもみなかったわ」


 メモの内容を見てみると、量自体はそんなに多くない。ただ、前に藤子と一緒に行った資料室の中で見たファイルの量を思い出すと、確かに手間はかかりそうだ。


「このくらいの量なら、一人でも大丈夫です。確か、ちゃんと背表紙にいつのものか書いてあったと思いますし」


「そう? ホントに悪いわね、それじゃお願いするわ」


「はーい」


 笑顔で応えて、唯は一人オフィスを出ていった。社内の各所の場所は、もう大体頭の中に入っている。まだ中に入ったことがない部屋もあることはあるが。借りてきた資料室の鍵で中に入り、とりあえずドアを閉める。だいぶ暖かい季節になったとはいえ、まだ閉めきっていても暑くはならないだろうと思ったからだ。そう軽く考えていたことを、近い将来、後悔することになるとも知らずに……。


「えっと…これで全部、かな?」


 多少時間はかかったが、何とか全部見つけ出して、両手で抱えて片方の手で半ば無理やりドアノブを回したのだが、ノブは回るものの、外開きのドアはまるで開こうとはしない。


「えっ!?」


 驚いて、近くの段ボールの上にファイルを一度置いてから、落ち着いてノブを再び回すが、ノブは確かに回っているのに、ドアがびくともしない。理由など、まるで思いつかない。


「これってもしかして…私、閉じ込められちゃった!?」


 焦りが心の中にじわりじわりと滲み始めるが、とりあえず冷静になって考える。

 この部屋は使用の意図が意図だけに、内線電話すら置いていないから、自分のオフィスに電話をすることもできない。自分の携帯電話は他の荷物と一緒にロッカーにしまってあるから、それも使えない。窓から外に出て、とも考えたが、あいにくこの部屋は三階だ、それも真央などならともかく、自分の運動神経や反射神経で無事に脱出できるとも思えない。どうしてドアが開かなくなったのだろうと思いながら、じっくりとノブを見やるが、社屋自体も新しいほうだし、錆びたり壊れたりなどの老朽化とも…考えにくい。中に唯がいることに気付かないで、外から鍵を閉められた可能性も考えるが、唯は事前に然るべき場所に鍵を借りに行っているのだから、同じように鍵を借りに行けば先に来ている人がいることもわかるはずだ。


 そうなると、もう袋小路に陥ってしまう。最悪の場合、このままずっと出られない…?とも考えてしまったが、唯がここに来ていることは藤子がちゃんと知っているから、唯がいつまでも戻ってこなければ、きっと探しにきてくれるだろうと思い、唯はとりあえず安心してそのへんの頑丈そうな箱に腰を下ろした。


 何とか最悪の事態は回避できそうだが、それとは別に、もしトイレに行きたくなってしまったらどうしようと呑気なことを考えながらぼーっとし始めて、五分ほど経った頃だろうか。ドアの外で何かを動かすような少々重そうな音がして、何の前触れもなくドアが開かれた。


「誰か、いるのか?」


 そこに立っていたのは、見覚えのある大崎その人で…。


「あ、大崎さん」


「あれ、小林さん? どうしたんだい、こんなとこで」


「藤子先輩に頼まれて資料を取りに来たら、知らないうちにドアが開かなくなっちゃってたんです。壊れた訳でもないみたいだし、中からじゃもうどうしようもなくて……」


「ドアの故障とかではないよ。いま通りかかったら、ここのドアの前に、荷物がいっぱい載った台車が置いてあって、伝票見たらすぐそばの別の課に来た荷物らしいし、何でこんなところにあるんだろうと思ってどけてみたら…」


「そんなものが…?」


 見ると、大崎がどけてくれたらしい台車の上には、大きめの段ボールがいくつも載っている。確かに、外開きのドアの前にあんなものが置いてあったら、中から開けることなどたとえ男でも不可能だったかも知れない。


「多分、その課の前にあったものを、わざわざ持ってきたんだ。質の悪いことする奴がいるなあ。小林さん、大丈夫だった? ずいぶん長いこと閉じ込められてたんじゃないの?」


「いえ、大崎さんが開けてくれるまで、10分も待ってないですよ。少し前までは資料探しに没頭してましたし。かえって、思ってたより早く助けてもらえてラッキーって感じです。ほんとうに、ありがとうございます」


「いや、そんな大したことはしてないけどさ」


 深々と頭を下げる唯に、大崎は珍しく照れているようだ。そこに、新たな声が割って入ってきたのは、次の瞬間のこと。


「あら? 大崎、こんなとこで何やってんの?」


 恐らくは、唯がなかなか戻ってこないのを心配してきてくれたのであろう藤子だった。


「あ、鳴海さん。実はいまさ…」


 大崎の説明を、藤子は時折その大きな目を丸くしながら聞いている。その瞳の奥に、一瞬剣呑な光が宿ったように見えるのは、気のせいだろうか。


「あたしの可愛い後輩に…ずいぶんふざけた真似してくれる奴じゃないの。唯ちゃん、大丈夫だった!?」


「はい。最後には、絶対藤子先輩が来てくれると思っていたので、全然怖くもありませんでした」


 本心からの言葉だったので、満面の笑みを浮かべながら伝えると、一瞬瞳を潤ませた藤子が強く抱きついてきたので、びっくりしてしまう。


「ホントに、何て可愛いコなのっ」


「これも、藤子先輩の人徳故ですよー」


 そう告げる唯の背後で、大崎がぽつりと「あー、いいなあ」と呟いたので、内心で小さく吹きだしてしまった。


 それが、始まりの出来事であった…………。

唯に迫る、不穏な影…? その正体はいったい誰なのか……。

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