二日目
翌朝。
風邪は完治したものの、姿は元には戻らなかった。
「……やっぱり現実…。」
半分夢なんじゃないか、とさえ思っていたのに、残念だ。
昨日同様、目のやり場に困りながら、普段着に着替える。
(……やっぱ、女物の服とか買うべきなのかな……。)
すると――
「おい。」
昨日同様、ノックも無しに、いきなりドアが開いた。
「に、兄ちゃん……おはよう。」
「ああ。…それよりも、今日暇か?」
「……暇だけど、何で?」
「あとで女物の服、買いに行くぞ。」
「え?……もしかして、二人きりで?」
「当たり前だ。」
(二人きりで買い物なんて……何年ぶりだろう?…いや、もしかしたら初めてかも…。)
「そう言うわけだから、準備してろよ。」
そう言うと、兄ちゃんは部屋を出て行ってしまった。
(準備って……外行きの服装ってこと?…どうしよう…。)
服を買いに行く服がない。
……どこかで聞いたことがあるのだが、多分気のせいだろう。
今の服装は、決して女の子が着てはいけない服、と言うわけでもないのだが…。
(……まぁいいか。)
僕は携帯と財布を手に、部屋を後にした。
兄ちゃんは玄関で待っていた。
「準備できたのか?」
「うん。」
「じゃあ行くぞ。」
家を出て、唯一の通学手段の自転車を物置から引きずり出す。
「あ、俺の自転車無いから、二人乗りするぞ。」
「えぇっ?……僕二人乗りで運転できないよ。」
「じゃあ俺が運転する。お前は後ろに乗ってろ。」
「え、あ、うん……。」
会話さえも危うかった兄弟が、まさかここまで進歩するとは……いや、兄弟じゃなくて兄妹か。
兄ちゃんは僕の自転車のサドルを少し上げ、自転車に乗った。
僕はその後ろに座る。
「……お前さぁ、もう少し女らしい座り方できないのか?」
「え?」
「どこの女が真正面に座るんだよ。普通は横だろ。」
「ああ、そっか…。」
僕は慌てて座り方を変えて……それから反論した。
「…って、僕は男だよ!」
「今は女だろ。」
「そうだけど……。」
「じゃ、行くぞ。」
兄ちゃんは足に力を入れ、ペダルをこぎ始めた。
服を買いに行く服がない。知ってる人がいたら作者と一緒にランデヴー。