調理
その日の夜。
結局兄ちゃんはその後も部屋に篭もりっぱなしだった。
僕も似たようなもので、ずっと布団をかぶってベッドに横になっていた。
「……お腹すいた…。」
さすがに、朝飯と昼飯抜きで夜を過ごすのは辛い。
暖かくしてたおかげで、少し楽になったので、夕食を作ることにした。
とりあえず冷蔵庫を漁り、適当な野菜を使って野菜炒めを作った。こう見えて、料理はかなり上手い方。
(兄ちゃんの分も作ろうかな…。)
自分の分は先に食べ、別の皿に盛った野菜炒めにラップをかけ、横にメモを置いた。
("冷めてたら温めて食べてください"っと……て、なんで敬語?まぁいっか。)
僕は部屋に戻るために、二階へ上がった。
自分の部屋のドアノブに手をかけようとした――その時。
ガチャっという音とともに、兄ちゃんが自分の部屋から出てきた。
僕と兄ちゃんの部屋は、廊下を挟んで向かい合うようにしてある。だから稀に鉢合わせすることもある。
「あ、兄ちゃん…。」
「…………。」
無言が続く。僕は無言が苦手だ。
「あ、あの、リビングに夕飯作っておいたから……。」
「…わかった。」
そう言うと、兄ちゃんは階段を降りていった。
―――瞬間、胸が締め付けられるような錯覚に陥った。
(な、何……?もしかして、さっき言ってた感情の変化って……これのこと?)
僕は無意識に階段を降りていた。
野菜炒め……作者が書く奴に必ず登場します。