映画と買い物っはデートの定番です
とある日曜の昼。
駅前の広場は日曜といえども、行き交う人であふれていた。
四月。春と言ってもまだまだ肌寒い。
行き交う人の中には、コートの前を抱いて、せかせかと先を急ぐ人も見受けられた。
駅舎の柱によりかかっていると、
「悠也~!」
待ち人来たり。
美優は少し小走り気味にこちらに駆け寄ってくる。
今日は、以前美優と約束した、映画と買い物の日。
家が近いのだから、別に近くで待ち合わせてもよかったのだが、美優の強い希望によってここでの待ち合わせになった。
「おう。美優、おはよ……」
振り返って挨拶しようとした俺は思わず言葉を切って、美優をじーっと凝視してしまう。
「………? 悠也?」
「……! ああ、ごめんごめん。おはよう美優」
びっくりした。今日の美優は白いワンピースに赤いリボンをつけて、なんか……似合ってるってのもあるけど………すっごく可愛い。
思っても言えないけど、美優は一年前よりずっと可愛く、綺麗になった。
嵐山さんたちの話では学校でもかなり告白されているようだ。
いつか、美優も誰かと付き合うんだろうか?
それは………寂しいものがあるな。
「えっと……待った? 悠也。ごめんね」
「いや、全然。今来たとこ」
本当は15分前には着いていたのだが、まあわざわざそれを言うこともない。
「……ふふっ、ありがと」
………美優には見抜かれてるっぽいけど。
美優と並んで駅から歩いて20分ほどの大きなショッピングモール内にある映画館は、日曜と言うこともあって結構な人であふれていた。
薄暗い、ちょっと変わったにおいがする映画館のロビーに入っていくと、
「見る映画って決めてるの?」
美優がそう聞いてきた。
「いや、当日美優の希望を聞いて決めようと思って」
「う~ん。でも………」
俺と美優が好む映画のジャンルはかなり異なる。
俺はアクション系
美優はファンタジー系が好きだ。
どうしようか………
そんなことを考えていると、ふとある看板広告が目に入った。
『遂に日本上陸! 米で一大旋風を巻き起こしたファンタジーサスペンスアクションラブストーリー!』
「ねえ美優………」
「ん?」
俺の視線の先を美優も追っかけてその広告を見つける。
そして、2人してきっと微妙な表情になっているだろう。
「…………」
「…………」
言いたいことは色々あるが、とりあえず面白いのだろうか。
「どうする? 美優」
「う~ん………他に面白そうなのもないし、あれにしよっか」
まあ、ひょっとしたら当たりかもだしな。
「高校生2枚下さい」
「2400円になります」
チケットを2枚受け取って1枚を美優に渡す。
「奢り?」
「当然」
こういう時ぐらいは格好付けたいしな。
映画の上映場は少し肌寒かった。軽く冷房が効いてるかもしれない。少し厚着気味の俺で肌寒いんだから、美優は……
と思って隣を見ると、予想通り肩を抱くようにしていた。
俺は自分のコートを脱いで、美優の肩にかぶせる。
「!」
少し驚いたような顔をした美優も次にはコートの袖に腕を通していた。
「……ありがと」
消え入りそうな声だったがそう言ったのは間違いなかった。
「面白かった」
「ああ。ちょっと想定外に面白かった」
ショッピングモールの一角。喫茶店に俺と美優は着いていた。なお、美優は俺のコートが気に入ったらしく、顔をうずめるようにして着ている。
映画はそれぞれの要素が互いに良さを出し合い、思いの外面白い仕上がりとなっていた。
大当たりである。
「ホットサンド、お待たせいたしました」
店員さんが料理を運んで来てくれる。
「………美優。ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「………? 何?」
俺はずっと気になっていた先日の保健室エスケープ事件を美優に説明した。
「はぁ。なんであんたはそんなトラブルに巻き込まれやすいのよ」
「うっ………そんなこと言われても」
美優は俺の話を聞くと、苦笑いしながらそんな事を言った。
そして、ふぅと一つため息をつくと、少し真剣な顔になって言った。
「中島綾乃さん。2年C組。私たちと同じ学年よ。」
「同じ学年………」
「うん。それでね………中島さん、私たちより一つ年上なんだよ」
「……え、留年してるってこと?」
「そう。彼女、あんな感じで病気がちでしょ。出席足りなかったみたい」
そうか。そんな事情があったのか。
「それで、どうやら中島さん。あんまりクラスに馴染めてないみたい」
分かる気がするな。クラスの人は自分より1個年上の人との接し方に戸惑っているのだろう。
でも、まだ4月だし、これから状況はいくらでも改善されるだろう。
「ん……ありがと、美優」
俺は美優にお礼を言うと、立ち上がった。
「じゃ、買い物に行くか!」
「うん!」




