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恋愛生活  作者: 夢見
5/6

走れ! 俺


 高校二年が始まって、一週間が過ぎた。

 桜は今だ咲き誇っている。


 段々とこの学校にも慣れてきたかな、と思い始めていた。


 


 「あれ?」

 

 昼休み終了五分前。

 二年B組の教室のドアに手を掛けると、ふと違和感がする。


 見上げると、そこには三年B組の文字が書かれた札が。


「ああ、またか……」


 俺は思わず肩を落として呟いてしまう。

 この学校、なぜか、一年生が一階。二年生が三階。三年生が二階。という、ちょっと複雑な教室配置になっている。


 俺はいまだに慣れなくて、よく三年生の二階の教室に向かおうとしてしまうのだ。

 まあ、教室に入る直前に気付いてよかった。

 俺は踵を返して階段の方へと向かう。


 


 二階の階段の前は、少し大きめのスペースになっていて、コミュニティースペースとなっている。お昼をここで食べるもよし、友達としゃべるもよし。時たま、学年のイベントで使われることもあるようだ。


 まあ、今は授業開始まで僅かしか時間がないし、人の姿はみられないが……ん?

 そのコミュニティー広場の奥の方、左側が、少し窪んだスペースになっていて、ここからは見えにくいけど、そこだけ明かりがついている?


 普段ここのスペースは消灯されていて、昼休みの間は付いている。一応最後の人が消すことにはなっているのだが……

 でも、全部電気がつけっぱなしならともかく、そこだけ電気がついているのはおかしい。スイッチの場所は同じところなのに………




 俺は気になってそのスペースを覗いてみることにした。


 壁伝いにそっと覗いてみると、


「!!」


 俺は一瞬、驚いた後、すぐさま駆け寄った。

 スペースの奥の壁に、人が寄りかかって座り込んでいた。


 茶髪のウェーブヘアに、すらっとした手足の女生徒。

 駆け寄って、しゃがんで顔をのぞきこむと、顔は青ざめ、汗がにじんで、呼吸が荒い。


「大丈夫ですか!?」


 俺は右の肩をつかんで軽くゆするようにして、半ば叫ぶようにして、訊く。


「大………丈、夫……」


 彼女は弱弱しい声で、そう呟くのがやっとのようだった。

 どう見ても、大丈夫のようには見えない。


 保健室。確か場所は………一階の西の端―――ここは東の端に近いから、ちょうど正反対の場所か――


 この様子だとけっこう切羽詰まってる感じだ。急がないと―――

 俺は彼女の体を一度持ち上げ、自らは背を向けると、背中に乗せるようにして、立ち上がる。

 おんぶした後はひたすら走る。


 廊下だろうと階段だろうとひたすら走る。

 それにしても………この人、軽すぎないか………?

 俺より少し低いぐらいなのに……俺の身長が173センチだから168センチぐらいだろうと思う。それなのに、背負っているのが感じられないぐらい、羽のように軽い。


 




















 一階の廊下を、全力疾走した俺は、保健室のドアを開け放つ。


「先生!」


 なんたることか、こんな時に限って保健の先生は不在である。

 とりあえず、俺はベッドに寝かして、布団をかける。

 が、荒い息が収まらない。やきもきしながら見ていることしかできない俺だったが、ふと彼女の喉元から、ヒュー、ヒューと音が漏れているのが聞こえる。


 この症状……………


喘息(ぜんそく)か!」


 俺は急いで、近くにあった薬箱をあさり始める。

 ぜんそくの薬の細かいことはわからない。けど、必ずある薬でなんとか…………


「あった!」


 せきどめ錠。市販の薬でも、一時しのぎぐらいにはなるはず…………

 俺はコップに水を汲み、彼女のもとへ持っていく。


「つらいかもしれませんが、飲んで下さい」


 俺は彼女の体を右手で起こすようにして錠剤を口にふくませる。そしてコップを口に近付けて、少しづつ、注ぐようにする。


 どうやら、飲んでくれたようで、とりあえずこれで一安心だ。三十分もすれば、息もおさまるだろう。




 さっきはあせっていて気付かなかったが、このベッド、上半身の角度を調節できるようで、俺は角度を三十度ぐらいにしておいた。

















 はぁ、疲れた。そりゃそうか。人一人背負って、猛ダッシュしたんだから。


 それにしても………改めてみると、この人、すっげぇ綺麗だ。線が細くて、まつ毛長くて、色が白くて………って変態見たいだな、俺。



 でも、妙と言えば妙である。なんでこの人、あんな場所で苦しんでたんだろう。それに、あそこにいれば、誰か見ているはずである。


 …………………まあ、考えても仕方ない。


「あら? だれかいるの?」


 ガラガラと音がして、保健の先生が入ってくる。

 若い女性の先生。


「えっと、二年B組の小日向悠也、と言います。実は………」


 俺はあったことを、そのまま話した。

 その先生は時折、びっくりしたような表情で俺の話を聞いていた。



「そう……ありがとう」

「いえ…………」

「彼女………中島綾乃さんというのだけど、ぜんそく持ちで体が弱くて、よくここにくるのよ。でも、喘息の常備薬はもってるはずなんだけど………」


 そう、だったのか。大変だな、体が弱いのに、学校に通うというのは。


「それにしても、よく知ってたわね。せき止めの薬が、喘息に効くって」

「ああ、俺も………小さいころ、喘息にはだいぶ悩まされましたから。今ではもうほとんどおさまっているんですが………」


 俺自身、喘息持ちで、小さい頃は本当に風邪をひくと、せきがとまらなくて、滅茶苦茶苦しい想いをした経験がある。

 病院でやる「吸引」もすっげぇ苦いし………


「じゃあ、俺はこれで。授業がありますし」

「ええ。本当にありがとうね」


 俺はそういって保健室を後にした。

 

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