妹、襲来
チュン、チュン……
ん、朝か……眠い。
結局昨日は、亮と美優と夜遅くまで騒いでいた。宴もたけなわとなり、解散したのが11時。その後、美優を家まで送っていき、その後部屋の掃除をして、風呂に入り結局寝たのは12時だった。
さすがに眠い。
「ん、……んん~」
枕元の目覚まし時計を見ると、6:45 起きる予定まであと15分。もう少しベットの中にいよう。
そう思って寝返りをうつ………うてない。
まるで左腕だけ金縛りにあったみたいに動かない。いや、それだけでなく俺の左側に何か質量をもったものがあるような……
俺は注意深く左をそ~っと向いていくと、
……………………あどけない顔で眠る従姉妹の姿がそこにはあった。
「あ、明菜!?」
俺はガバッと素っ頓狂な声をあげながら慌てて起き上がった。
「え? むぅん……朝?」
俺が起き上がるとパジャマ姿の明菜は目を擦りながら起きてきた。
「あ、お兄ちゃん。一年ぶりだね、おはよう」
そして、満面の笑顔で俺に挨拶するのだった。
遠藤明菜は、俺の母親の妹。つまり叔母の子である。
昔から俺のことを『お兄ちゃん』といい、いつも俺にひっついていた記憶がある。
ショーットカットの髪に、くりくりの黒目。愛嬌たっぷりの笑顔がトレードマークの女の子だ。
そんな明菜も今年は中学三年生になったはず。以前のようにベタベタするようなことはもうないと思っていたのだが………
「ふん……はぁ~お兄ちゃんの匂いだぁ~」
「お、おい。明菜、そんなひっつくなって」
あろうことか明菜は俺に抱きつき、胸のあたりに顔をうずめてきた。こ、これは何とも恥ずかしい。
「ねぇ、お兄ちゃん。一年間、寂しかったよ?」
「う、……わ、悪かったよ」
「連絡もないし」
「………ゴメン」
「東京で彼女が出来たのかと思った」
「それはないけど……」
「ならばよし」
いったい何がよいのか、相変わらず明菜は俺にくっついたままだ。
そ、それにしても。明菜、成長したなぁ。
身長も、昔は俺より頭一個分小さかったのに、半個分くらいまでせまってきてるし……そ、それに他にも女らしいところが色々……
い、一年前はこんなに大きくなかった。顔も綺麗になったし……
そんなことを考えつつ、明菜のつむじをみていると、明菜はぱっと顔をあげてきた。俺はそんなことを考えていたせいで、ついそっぽを向いてしまう。
そんな俺を見た明菜はニヤニヤ笑いを俺に向けると、
「お兄ちゃん、いやらしい事かんがえてたでしょ?」
「うぇ!? い、いや、そんなことはないよ」
「ふふふ、嘘嘘。顔真っ赤だもん、お兄ちゃん」
「ま、マジ?」
「うん。かーわいー」
愛嬌たっぷりにはにかむ明菜を見ると、一番上のボタンが外れたパジャマからはちろちろと白い肌と、た、谷間が……
い、いかん。従姉妹相手に何考えてんだ俺は。
ブンブンと頭を振って煩悩を追い払う。
「ねえ、お兄ちゃん」
「! ちょ、ちょっと明菜!?」
油断したところに明菜がしだれかかるように抱きついて来て、俺はいとも簡単にベッドに倒されてしまう。
「おかえり、お兄ちゃん。………ねぇ、おかえりのキスしてあげる」
「えぇ!! い、いやそれは、さすがにまずいって!」
「いいからいいから。ふふ、おにぃ~ちゃん」
とろんとした目をした童顔が降りてきて、俺は身動きが取れなくなってしまった。
どんどん明菜の顔がせまってくる。や、やばい。逃げられない!
ちゅっ
明菜は可愛い音を立てて俺にキスをした。……ほっぺに。
「あ…………」
「へへ。キスしちゃった」
俺はしばし呆然としていたが、はっと我にかえる。
そりゃあそうだ。いくら明菜でもそう簡単に唇にキスはしない。
俺はほっとするとともに、ちょっと残念な気持ちを抱いていた。
「どうしたの? お兄ちゃん。こっちのほうがよかった?」
「! ま、まさか………」
明菜は俺の唇に人差指をたてて笑った。
い、今。俺、残念って思ったか? おおおおおお、何考えてんだ俺! ダメだ! しっかりしろ!!
俺は心の中で少し残念。と思った自分を叱責する。
「っていうか明菜。お前、どうやって部屋に入ったんだ?」
「どうって……玄関のカギ開いてたよ?」
俺は記憶を掘り返す。美優を送って来て……確かにそのとき鍵をかけた記憶がない。まったく不用心である。
次からは気をつけよう。そう思っていると、
ガチャ
唐突。唐突に部屋のドアが開いた。
そして、そのドアの陰から顔を出したのは……
「悠也? 入るよ…………!?」
美優だった。
サァッッッーーーーーーーーーーーーー
俺の顔から血の気が引く。
美優はなぜか昔から、明菜と仲が悪い。
そして今の状況
ベッドの上で仰向けの俺。
その上にまたがる明菜。
部屋の入り口でそれを目撃した美優。
あぁ、死んだな。そう、美優は昔から明菜が俺にベタベタすることを快く思っていない。
「おはようございます。美優さん」
「おはよう、明菜ちゃん」
しかし、そんな俺の危惧とは裏腹ににこやかに挨拶を交わす2人。
こ、これは………まさか、俺のいない一年間の間にも2人の関係に変化が―――――
「さて、悠也。パンチとキック。嫌いな方を選ばせてあげる」
あるわけないですよね~
朝の閑静な住宅街に俺の悲鳴が響き渡った。




