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反抗

作者: Like a floor

 僕にとって18度目の冬。感じたことは自分の弱さ、金はあまり持ってはいけないという事。それと貧乏への不自由だった・・・。

 布団に寝そべって考えてみる。大して価値の無い物の為に家族と喧嘩をしたのものだとも思うけれど、きっかけは何であれ相手が悪いと思ってる。そこはさっきと変わらないのだ。これが若いという事なのだろうか、きっとみんなそうなのだ。

 だから僕は勝手にしようと思った、喧嘩相手の考える悪い方向に向かおうと思ったのだ。後悔させてやりたい。ただし、僕にもわかっている。その考えこそが最も僕を縛っているということを。あぁ、明日はクリスマスだ。僕には理解できない、なぜ僕は今までこの時期を心待ちにしてきたのだろうか。冬が終わって春が来れば、全てが変わってしまうというのに・・・。


 わざと青いカーテンをはずして、いつもは隠れている青黒く塗られた夜が見える窓を眺めていたが、星の無い夜なんかには飽きてしまった。ふと振り向くと、勉強机が嫌でも目に付いた。汚ねぇ。教科書やら、お気に入りのCDやら、この前買ったパソコンと、その取扱説明書。そんなものでごった返していて趣味の詩を書くこともできない。母にも今朝注意されたっけ・・・。少し苦い顔をして机の横のクローゼットに無理やり眼を移した。白い服が多い・・・気がした。これからは白くない服を買おう、黒も嫌だな。

 一人部屋としては広すぎる僕だけの世界、不安定な心をうつしているかのような。僕がさっき、大きな音をたてて閉めてしまった茶色いドアの向こうからは、テレビの音と妹の笑い声が聞こえる。僕と喧嘩をしたばかりの母はというと、いつもより口数が少ないのはわかったが、声を聞いてみるとあまり気にしていない様子だった、僕はムッとした。こんな家にはいたくない・・・。僕は、そのままクローゼットの白いジャケットを手に取る。しかし、何だか自分をつまらなく感じたのでジャケットをやめて、その横の赤いジャンバーを羽織ってさっとドアを開ける。みんなテレビから目を離さない。僕は自転車の鍵を素早く掴むと、いってきます、も言わずに乱暴にリビングから飛び出て、靴を持って、玄関のドアを開けた。「帰ってくるもんか。」そう心の中で呟いた。後ろで母が何か言っているのが聞こえた。


 僕は外に出て、きちんと靴を履いて階段を下りていく。思ったより寒くなかった。駐輪場で迷って結局、歩くことにした。勿論、あてはまったく無いのだが、今回も何とかなりそうな気がした。歩道の街灯を背に受けて、暗い方に向かい歩く事になんだか知らんがわくわくしていた。メールも電話も来ない携帯の画面を見つめる。友達の家にでも行こうかと思ったが、そんな気分でもないので、ただ歩く。

 僕はその頃、『ずっと思っていた事は実現する』という話しを信じて暇さえあれば将来の妄想をするようにしていた。この時もそれに努めた。僕は来年、韓国に留学する予定なので、妄想はそこから始まった。

 

 

 僕は最初の一年ハングルを学ぶので周りの人間も日本人ばかりだが、人見知りする僕は最初の内は内気な青年を演じているのだ。本を読み誰も相手にしない。

 半月ほど経って、一見内気な僕はある男の目に止まる。男は友の多い陽気な好青年で歳は僕と同じ、特に理由も無くなんとなく孤独そうな僕に話しかけたのだった。話してみると、男と僕は馬が合い、その日から行動を共にするようになった。二人とも寮住まいで、しかも僕は203号室、男は206号室でここには204号室は無かったから205号室を挟んですぐ近所だった。その事を知ってからはよくお互いの部屋を行き来する。やがて男は僕の親友になった。この親友との出会いが僕の運命を大きく変えるのだった。

 

 

 急に僕はふと現実に戻った。家から南に三キロほど離れた所、見慣れた『BOOK』の看板が見えた。何か欲しくなった、あまり金は使いたくないがとにかく入ってみた。中は暖房がきいていて少し暑い。僕はジャンバーを脱いで手で持ったまま、文庫本のコーナーに足を向けた。入り口側の戸棚から太宰を探しだした。五冊ほど置いてあったが、見たところ目当てはなかった。一応裏側にまでまわって面白そうな本は無いものかと見てみたが、先週だか友人が言っていた乙一の字が目に付いたくらいで、別に心動かされるものはなかった。

 別の本屋にも行こうかな。僕はいつもなら見て回るCDコーナーや、ファッション雑誌も頭をよぎったが、目標をひとつに定めて何とか外に出た。「うわ・・・寒ぃ。」思わず肩をすぼめた。すぐにジャンバーを着なおして、駆けるように更に家から遠い本屋に向かった。妄想の続きをしながら・・・。


 

 親友と二人で慣れない韓国の街を歩く。昼飯に焼肉を食べて、そのまま見て回ることにしたのだ。韓国のファッションは日本人の僕達にはあまり満足できないものであった。それに習いたてのハングルも当てにできない、だから自然と食べ物にしか興味を持ちえないのだ。しかし、今は焼肉といっしょに僕はメシを4杯、親友は3杯をたいらげた後だ、いつもならおいしそうに見える屋台のなにかしらも(僕はあまり韓国には詳しくないので今わかるのは屋台のなにかしらという事だけだ)今は胃の苦しみを思い出させるだけである。つまり僕たちは文字通り、ただ街を歩いていた。

 だが、ある店の前でふと親友は立ち止まって言った。「ちょっと見てみないか?」僕は親友の目の前の小さな店を見た、看板はハングルで読めないが、何の店かはわかった。ガラス窓越しに並んでいるのは、高級そうなギターだった。興味のあった僕は、けれどもなんでもない風に「あぁ。」と言った。親友は先頭をきって入っていった。

 そういえば、親友の部屋には何本かベースというものが置いてあったのだ。弾いてるところは見たことがないけれど・・・。

 親友はずっと少年のような無邪気な笑顔だった。「おい、見ろよ!」そんな事を言っては、僕にこのギターはどこどこのだれだれが使ってたモデルだなんて事を、本当にうれしそうに話した。僕は親友からいつ例のことを聞かれるのかと内心ドキドキしながら聞いていた。親友の興味は、明らかに一時のものではないのだ。

 そして中古の物を売っている棚まで歩いていった頃、ついに僕の夢への扉は開かれた。「お前、楽器は弾けるの?バンドとかに興味ある?」不意に親友は僕にそうたずねてきた。僕は自分の心臓が大きく鳴っているのがわかった。「楽器はやったことないな。でもバンドに興味はある。」あくまで自然に、中古のアンプの方を見ながら、何でもないようにそう答えるのだ。そしたらきっと親友は僕にバンドを組もうと誘ってくる「楽器が駄目ならお前が歌え、お前が必要なんだ。」そう言ってくるに決まってる。

 親友は僕に背を向けて「そうか、でも弾けないんじゃあな。」と冷たく言った。


 

 だめだ・・・不意に邪念が入った。僕の恐れている事が自由な妄想の邪魔をしてきた。僕は両目をつむって首を左右に振り「違うって」と呟いた。しょうがないから一時妄想を休憩して、今日の母との喧嘩について整理することにしよう。


 

 何度も言うが、僕は悪くない。僕は自分がアルバイトした金で、携帯オーディオ機器を買おうと思っただけなのに。そう、僕の稼いだ金で・・・。すぐそうしても良いのだが、一応その事を母に相談した。母は「そうしなさい。」と一言いえば良かった。なのに母は「来年のためにも、金はためておけ。」と言うのである。そして僕は母と口論した。しかし母は、考えを変えない。「来年の色々な準備のためにとっておけ。」そう言うのだ。僕は怒りに任せて、「元はといえば、家が貧乏なせいだ。」と口にしてしまった。母は悲しそうな顔をした。

 僕の父は外科の医者である。給料は沢山入るが、父はそれを、「僕には救えない命の為に」と言って寄付してしまうのだ。それこそ、自分自身や家族の身を削ってである。僕は小さい頃から教育されてきたこともあったので、そのことに怒りなど感じない、おかしいとも思わない。むしろそれを誇りに思うし、僕は父を尊敬しているのだ。しかし、そのことで不自由するとそれを言い訳に、わがままになってみたり、嘆いてみたりするのだ。自覚してるし、悪い癖だとも思うが中々なおすのは難しい。

 もう一つ、我慢できない事がある。父が僕にもそれを望んでいることだ。医者になって寄付行為をしてほしいと、口癖のように言う。寄付行為は正しいことだし、素晴らしいと思う。だが、医者になるか何になるかは僕の自由だ。僕も段々、自我というものを持ってきているのだ。夢だってあるのだ。僕は先ほどの妄想のようにして、いわゆるミュージシャンになりたい。これは誰にも口外していないのだが、高校に入ってから三年間、ずっと思い続けてきた夢なのだ。ミュージシャンにだって、寄付はできる。才能はあると思わないが、本気だ、気持ちでは誰にも負けないと思う。毎日、小さな努力もしているのだ。それでも時々、無理なんじゃないかと思うことがある。

 今日も仲間とカラオケに行った。僕は歌うことが大好きだし、人並みよりは上手いという自負もある。それは確かなはずだ。だが、僕より上手いやつが仲間内にいるのもまた確かなのだ。そういう時それを外的には認めながらも、僕のほうがヴィジュアル的には上だ。とか、自分を騙すいいわけを考えるので必死になる。だから今日も不機嫌であった。そうして今回も、母にそれをぶつけてしまった。母は「もう勝手にしなさい。」と言って後ろを向いてしまった。「あぁ勝手にしてやるよ。」僕は自分の部屋にこもった 。こうして思ってみると、僕にも悪い点は確かにある。いや勿論、相手も悪いが。言い過ぎた。


 

 考えているうちに本屋についた、僕は目当ての本があるにしろ無いにしろ、ここを見たら帰ることに決めた。素直に謝ろう。ジャンバーは着たままで、中に入った。

 ここの本屋は、さっきの本屋より店自体は小さいが、品揃えが良い。有名な本だし、きっと見つかる。文庫本のコーナーは見つけたが、どうも並びが分かりにくい。僕は、近くの年とった店員に本の名を出して聞いてみた。店員は「ございますよ。」と、思ったよりかん高い声で言った。口元だけの笑顔で、黄色い歯が目についた。「お兄さん、若いのに珍しいねぇ。」というようなことを言われて少し恥ずかしかったので、「宿題で出されたんで。」と嘘をついておいた。帰ったら読もう。楽しみができて、機嫌も良くなった。何もかもが上手くいきそうな気がする。さて、帰り道ではまた、将来の自分を思い浮かべながら帰ろうかな。


 

 僕たちは2011年の夏に、バンドを結成する。

 メンバーは人脈の広いベース担当が、そこそこ出来るギターとドラムを連れてきた。四人は音楽性もあっていたため、すぐに信頼関係を築き練習できた。最初のうちは日本のあるバンドのコピーバンドとしてやっていこうということになった。この元のバンドは完全に僕の趣味によるものであった。僕たちは秋に行われる、学校の文化祭で発表することに決めた。寮の誰かの部屋に集まってミーティングし、練習はそれぞれが暇を見つけてやっておく。そして週一回はどこか防音設備の整った部屋で合わせてやってみる。時には仲間に厳しく言わなくてはいけないときもあるが、そうやって切磋琢磨していくのだ。

 秋になった。文化祭は毎年、外の施設を借りて盛大に行われる。観客はほとんどが韓国人だ。僕たちの出番は、とりの一つ前。今まで味わったことのないような種類の緊張・・・。あと・・・10組。あと5組、もうすぐだ。次の次だ・・・、もう駄目だ。そうこうしてる間に、うちの学校のスタッフに「次ですので、スタンバイしてください。」と言われた。もうどうにでもなれ・・・。観客の大きな拍手。そして、鳴り止むと司会の大声。わけもわからぬまま、僕は先頭に立ってステージに飛び出した。

 テレビで見る観客の群れとはまったく違うのだ。一人一人がやはり生きている・・・。飲み込まれそうになった。無理だ・・・。ふと右を向く、そこにはベース担当の彼が同じように僕を見ていた。僕たちは笑った。ドラムが威勢良く叫ぶ、多少のズレはあったがベース、ギターと続いていく。観客はわけもわからなく盛り上がっている。僕もわからないまま歌うのだ。会場は一つになり、あっという間に僕たちの最初のステージは終わっていた。


 

 僕は買った本を隠すようにして、我が家に戻ると母親にそれとなく謝った。そしていつも通りテレビを見始めた。母も機嫌が直っていた。しばらくは家族で平和なひと時を過ごしていたが、さっき買った本のことを思い出し、部屋に入った。そしてパソコンで音楽を流しながら、読書をした。一時間ほどたった。僕の部屋には暖房などなかったので、しばらくすると足が冷えて集中できなくなってきた。僕は本を持って、リビングの方へ出てみた。リビングでは母が一人でこたつでチラシを見ていた、僕はソファを選んで落ち着いた。

 母はそんな僕を一瞥すると、低くこう言った。「三日前あなたが買ってきたパソコン、明日買えば一万円も安かったのよ。」その言葉がまた、本当に嫌味っぽく聞こえたのだ。僕はしかりつけるように、「だからどうした!?別に俺が自分の稼いだ金で買ったんだ。お前に文句を言われる筋合いはないね。」と怒鳴った。母は少し困ったように言い返した。「別に文句を言ったわけじゃないわよ。ただ明日にすれば良かったね、って。」僕はおさまらなかった。「もう買っちゃってからじゃあどうしようもないだろ!あんたが忠告しなかったのが悪いんだ。」母は急に静かな声になって「まぁ・・・、これ以上お金は使わないでくれれば良いけど。」といったのである。何をいってやがる。僕は自分でバイトをして金を稼いだのだ。なぜこいつにその使い道を決められなくてはいけないのだ!!僕はドカドカと自分の部屋に向かい、「あんたの言うとおりにすると思ったら大間違いだ。もう好きにしてやる!!」と捨てゼリフを吐いて、相手の返事も待たずドアをバタンとしめた。僕は布団を乱暴に敷いて、頭まで掛け布団をかぶって目をつむった。

もうあんなやつの思い通りになんかなるもんか!!僕の金は今年の内に全部使い切ってやる。将来だってろくな仕事になんかつくもんか、ニートになって、それで親のすねをかじって生きてやる。子供の育て方を間違えた。と後悔させてやるんだ。・・・そこまで思って、考え直した。いや、ニートは格好がつかないな、そうだった。僕はミュージシャンになるのだ。文化祭での演奏を成功させて・・・。それから・・・。毎夜と同じように妄想が始まった。


 

 僕たちは学校で有名になった。バンドのメンバーもギターが変わった。もっと上手いやつが参加を希望してきたのだ、前のやつは快く譲った。それから僕たちはコピーバンドを辞めて、自分たちの曲を作り始めた。僕は主に作詞を担当した。韓国のライブハウスでライブも行った、月に二回くらいのペースで。季節はもう冬になっていた。僕たちはクリスマス色に塗られた街を歩く。すれ違う人の中には、僕たちを知っている人が何人かいて、ハングルで応援してくれる、僕はハングルで「ありがとう。」と返すのだ。僕たちは、歩きながら大事な決定をした。日本に帰ろうと。日本でも活躍して、プロを目指そうと。立ち止まりツリーの前で誓うのだ。年末に韓国のファンに、ライブの最後でその事を伝える。ファンはみんな応援してくれた、泣いてくれた子もいた。

 こうして僕たちは日本に帰り、苦労もあるが2年後に大物アーティストの目にとまり、メジャーデビュー。日韓両方からの爆発的な人気を集めていくのだ。そして、史上最高のバンドとして名を残す。


 

恥ずかしくなる程甘ったれた妄想だが、僕は満足した。そのまま明日になるのを静かに待つことにした。


 気だるい月曜の朝、僕は学校に行く準備をするために目を覚ました。布団をたたみ、カーテンをめくる。あくびしながら。お日様に向かって背伸びをする。いつもと変わらぬ朝だった、少なくとも今のところは油断していた。

 リビングに出ると、珍しく父が居て、朝飯を食べていた。母はいない。父の隣に座って、机の上の新聞を広げた。「母さんは?」僕は何気なく聞いてみた。父は口に入ったご飯をゆっくり飲み込んでから、「昨日の晩から気分が悪いんだと、風邪だろうな。」と言って、焼き魚に箸を向けた。

 母は頑固なくせに、些細なことで悩むたちだ。昨日の僕との口論を気にして風邪になったのかもしれない。母はもう去年50を過ぎた。僕と同じ高校生の母親としては高齢のほうだし、元々体も病弱だった。長くないのかもしれない。僕は不安になった。もし長くないとしたら僕の自立した姿は見せられないだろう。そんな親不孝なことは無い。ましてや、その時に僕が成功するかもわからないミュージシャンなどを目指していると知れば・・・。母は不安を持ったまま死んでしまうだろう。それでいいのだろうか?もし両親の願いである医者を志して、医大などにでも通っていれば・・・。母も希望を抱いて逝けるだろう。医者を目指すべきなのか。来年から韓国に留学する事は僕の腹の中では決まっていたが、僕は今からでも医大に合格するのも不可能ではないのだ。

 母の遺伝か、僕は思い悩むと止まらない。その内に、母の風邪が自分にも移った気すらもしてきた・・・。これでは学校どころではない。父はもうすぐ仕事に行くだろう。母も朝からパートにいくが、今日は休むかもしれない。病気の母ならやり過ごせるが、問題は父だ。僕はとりあえず、準備を万端にして、父に「いってきます。」と言って。学校に行くように思わせた。父が仕事に行く時間を過ぎたら、家に戻ってこよう。玄関で靴を履いて、僕は外に出た。階段を下りて、自転車の鍵をゆっくりあけて、用心して毎朝通っている道を走り始めた。

 だるそうに自転車をこぐ。家に帰ったら、母になんと言おうか。熱っぽいとでも言えばなんとかなるだろう。そう思っていると、後ろから父の車が走ってきた。父は僕に並ぶとすぐに追い越して行った。僕は罪悪感で胸が痛くなった。助手席には、風邪をひいた母が乗っていた。父の車は右折していった。父は母を母の勤め先に送っているのだ。50過ぎの母は風邪をひいても、貧乏な家の為に仕事をするんだ。なのに僕は・・・。いや、しかし僕は僕なんだ・・・。

 しばらく行って、僕はブレーキを握った。分かれ道だ。左の上り坂を登ればすぐ学校に着く。右の道を行くと、ある女子大生の家に行き着く。彼女の年は僕の一つ上で高校の先輩だ。来年の僕と同じように韓国の語学大学に通っていて、一昨日から冬休みで帰ってきていた。まだ家に居るだろう。久しぶりに会いたいな。実を言うと、この先輩が僕を韓国の大学に誘ってくれたのだ。そういえば彼女もバンドをやっていたっけ。

 母の姿を見て僕は思い直し、休まないでちゃんと学校に行こうと思った。思ったが、しかし、足はペダルをこいでくれない。左の坂はいつもよりずっと急に見えた。僕はしばらく動けなかった。

 今、左右のどちらを選ぶかによって、これからの僕の人生が大きく変わる気がした。ここで母の思うとおりになってしまうのか?僕の夢はどうなるのだ?

 僕は心を決めて、ペダルをこいだ。ゆっくりと自転車は加速していく、風を切る。僕は決心したのだ。

高校生の時、書きました。感想よろしくお願いします。

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