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第7話・爪の甘い作戦、そして迷宮へ



「WIIIIIIIIIIIIIIIII!!」


 仲間が倒されたと知るやいなやこちらに敵意を向けるワームたち。

 対する僕は手には弓と矢を握り、重力に身を任せて落下している。


 そして、ワームたちからすれば口を開けていれば勝手に落ちてくるのでそれを待っている。


「そんな露骨に弱点を晒してくれてどうもありがとう!!【パワーアロー】【セカンドアロー】」


 口を開けているということは、弱点である頭がすぐそこにあるという事でもある。

 空中で弓を引き、冷静に口を開けて待っているワームと、セカンドアローで横にいるワームを射殺した。


(あと、五匹……)


 最初の危機を何とか乗り切り、久しぶりに地面に降り立つことができた。


「WIIIIIIIIIIIIIIIII!!」


 だが、待ってましたと言わんばかりにワームたちが詰め寄る。

 四方八方は完全に囲まれた状態で、ここから先は弓を十分に構える時間も取れない。



「【パワーアロー】【セカンドアロー!!】」



 だが、着地と同時に弓を構えスキルを発動させ目の前にいるワーム二匹の顔面を打ち抜く。



 残り、三匹――



 だが、ボーナスタイムはここまでのようだ。

 すぐに反転して背中側にいるワームに向かって矢を打とうとしたがすぐそこまで迫って来ていた。



「ッ、うご……」


 回避は間に合わず、ワームの突進を正面からまともに受けてしまう。

 嚙みつきで食われて死亡とはならなかったのは不幸中の幸いと言えるだろう。


 だが、その衝撃は僕の体を吹っ飛ばすには十分なため、鈍い音共に壁に叩きつけられた。


「いっ……いや、動ける」


一瞬だけ、三途の川を覗きかけたが何とか持ち直す。


 背中は痛いが、骨も折れていないし動けないほどじゃない。

 おそらく、加護の力で日本にいた頃よりも身体能力が向上しているおかげだろう。




「【クリエイトボウ】【クリエイトアロー】【パワーアロー】【セカンドアロー】……ッ、外した!?」


 手放してしまった弓矢を作り出し、何とか抵抗の二射を放つが万全の状態ではないため手先がぶれて撃ちぬいたのは二体の胴体のみ。



(いや、十分……これで機動力は奪った。口にさえ気を付ければ大丈夫)


 軋む体に鞭を打って迫る、親玉的立ち位置であるマトルケーブ・ワームから距離を取るため自分が胴体を狙撃したワームたちの方に走る。



 考えの通り、口にさえ気を付ければ機動力を完全に奪ったあの二匹は脅威じゃない。

 だが、問題はマトルケーブ・ワームから僕が逃げ切れないってことだ。


「っ、なんだあの突進力……!?」


 さっきからずっとマトルケーブ・ワームは奇襲で倒してきたためこうやって真正面から戦うのは初めてだ。

 だが、表皮固いということは突進で普通のケーブ・ワームとは比べ物にならない破壊力を生み出すということだ。



「はぁ、はぁ……」


 だが、問題はそれだけではない。


 スキルと言うのは別に何回もポンポンと発動できるわけではなく、そのたびに体力と言うか何かが抜ける感覚がある。



 ここまでで何回もスキルを発動してきた僕の体は悲鳴を上げている。

 だが、マトルケーブ・ワームを倒すにはパワーアローのスキルが必須なのだ。



 矢も残り一本――



「くっ……」


 幸運なことに洞窟は広々としているため逃げ場には困らないが、体力の限界も近い。

 一応、最後の気合を振り絞ればスキルを一回くらい発動できそうだが外したらもう、後はない。



「ッ、うねうね動くな!!」


 覚悟を決めて振り向き弓を引こうとしたが蛇行しながら進んでくるワーム、これでは頭を撃ちぬこうにも狙えない。



(こんな当てにくいのはあの兎以来だな……いや、待てよ)



 そう、思いついたのはあのドリルの角を持つ兎を撃破した時と同じ作戦。

 つまり、ギリギリまで引き付けて攻撃を仕掛けてくる瞬間に矢を放ち一撃で射殺すというわけだ。


 そうと決まればすぐに立ち止まり振り返って弓を引き絞る。



「WIIIIIIIIIIIIIIIII!!」

「まだ、まだ……待て、待て……焦るな、慎重に狙いを……!」


 蛇行しながらも地面を抉りながらとてつもない勢いで迫ってくるワームを見て思わず脂汗が額に滲みだす。



 失敗すれば死――



(いや、死んだとしても二人ならこいつ一体なら簡単に倒せるか……)


 そう考えた途端に、肩から力が抜ける。

 痛んでいた体を忘れ、鈍っていた思考は晴れ、集中は再び刃物のように研ぎ澄まされる。



「【パワーアロー】」



 スキルの詠唱と共に強化された一射は僕の目の前にいるマトルケーブ・ワームの額を貫通し、その命を奪った。


「え?」


 まではよかったのだが、アポロが抜けていた点が一つある。

 相手の突進攻撃をぎりぎりまで引き付けて、矢を放つという作戦は命中率を極限まで上げるというものだ。


 これ自体は、矢が一本しかなくあとないこの状況では最善と言えるだろう。



 だが、ここで考えてみてほしい。

 相手が突進で付けた勢い、すなわち慣性は死んだらなくなるものだろうか。



(あ、避けられ……)


 答えは否、である。

 矢で射貫かれた程度で慣性を殺しきることができるはずもなく、ワームに急接近を許したアポロに避けるすべもなく。


 その命失われた巨体の突進をまともに受けて壁に叩きつけられた。



「あがっ……」


 そのまま、僕の意識は闇に落ちた。




【射手座】の加護レベルが4に上昇しました。




 ***




 時間にして僅か一分か、それとも二分かの攻防が終わった直後に呼ばれた二人は壁を伝って下りてきていた。


 だが、降りて来て早々に起きている異変に首を傾げていた。


「アポロの話によれば、ケーブ・ワームとマトルケーブ・ワームがいるはずなんだけど……」

「いませんね、アポロさーん!アポロさんどこですか!?」


 ついさっきアポロが倒したはずのワームたちの死体は消えており、彼の戦いの跡として残るはずの矢すらどこにもない。


「……あっ!!アポロさん!!」


 彼を探して右往左往していたプロンは、壁際で倒れて意識を失っているアポロを発見し駆け寄る。


「ど、どうしたんですか?…その、傷…アポロさん!!アポロさん!!!」


 起こして確認しても反応はない、額からは血が流れ、顔からは生気が失われていた。

 体を揺すっても、だらりと垂れた手首がただ揺れるだけだった。



「大丈夫、寝ているだけよ。ちゃんと生きてるわ。今のうちに応急処置をしてあげましょう」


 すぐにポラリスが駆け寄りアポロの様子を確認する。

 呼吸はしていたし、顔から生気がないのはおそらくスキルの使い過ぎだろうと推測した。


「は、はい……よかったぁ」

「でも、こんな状態になるってことは…全てのワームを倒しきったのね」


 ワームの死体は消えているが所々にその魔物の“素材”は落ちているのを見て彼女は確信した。



「すごいです、アポロさん。ですけど、やっぱりこの洞窟は……」

「ええ、察しの通りよ。アポロが起きたら彼にもちゃんと説明してあげないとね」


 ちらっと洞窟の壁のある一点にポラリスは視線を向ける。

 そこには、この空間には似つかわしくない扉が立っていた。




 ***




 一時間後――



「……っ、痛った!」


 アポロは全身を襲う痛みを感じながらも無事?に目覚めることができた。



「あ、起きましたね…顔色も良くなったみたいでよかったです。これ、水です」

「え……あ、ありがとうございます。プロンさん」


 意識を失う前後の記憶があやふやだったが彼女の顔を見て思い出すことができた。

 渡された水袋に入った水を飲みながら記憶を整理する。


 確か、マトルケーブ・ワームをぎりぎりまで引き付けて矢を放ったら僕が吹っ飛んで――そのまま気絶したんだろう。



(そのせいか、体中がこんなに痛いのは……!)


 と言っても、あの最後の突進を受けてこの程度で済んでいるだけで幸運なのだが。

 正直言って、あの場面は三途の川が脳裏にちらついていた。



「やっと起きたわね。どう?応急処置はしたし、命に別状もないから大丈夫だと思うんだけど」

「体は痛いですけど、大丈夫です。十分動けます」


 何度か、手を握ったり開いたりしながら状態を確認する。

 体力も完全とは行かないが回復したので、スキルの発動も問題なくできるだろう。



「それは大丈夫なのかしら?……まあ、いいわ。正直、この先で動ける人間が一人増えると増えないじゃ違いすぎるからね」

「どういうことですか?というか、この洞窟で何が起きてるんですか!?」


 起きて早々だが、ポラリス先輩の表情からただならぬ状況なのは察することができた。


「……単刀直入に言うわ。この洞窟はついさっき“ダンジョン”になったわ」

「ダンジョン、ですか……?」


 ダンジョン、迷宮とも言われる構造物は僕の常識内にも存在するメジャーな存在だ。


 常識内にあるのは、魔物を倒せば死体が勝手に消えて素材や稀に宝箱が出現するかもしれない、ハイリスクハイリターンな場所だという認識しかない。



「……その顔はピンと来てないわね。簡単に説明するわよ」


 ポラリス先輩の説明によるとダンジョン内部では一つ種族の魔物だけが出現すること、今回の場合はケーブ・ワームなどが属するワーム族がそれに該当する。



「そして、どの迷宮にも必ず共通しているものとして強力な魔物が出現する部屋…通称『ボス部屋』と呼ばれる部屋があるの」


 教えられた瞬間に、ちらっと先輩の後ろにあるこの場に似合わない扉に視線が向かう。


「まさか、あの扉って」

「ええ、あれがボス部屋の扉よ。そして、ボス部屋を攻略すれば宝箱とか貴重な素材が手に入ったりするんだけど……私たちにとって一番欲しい『脱出の扉』が出現するわ」

「だったら、ボスを倒したらここから脱出できるってことですか!?」


 この穴に落ちた時、上が返しのようになっていたため帰れないんじゃないかと思っていたが、そんな便利なものがあるなら首の皮一枚つながったと言える。


 だが、希望が現れてうきうきしてしまう僕とは対称的に先輩とプロンさんの表情はどこか暗いままだった。



「そうよ、私たちがここから脱出するにはそれしかない。だけど、これまでとは比較にならない危険が待ってるわ」

「私も聞いたことがあります。場合によってはゴールドランク冒険者が束になっても敵わないボスが出る場合があるって……」

「ご、ゴールドランクが束でも?」


 あんなに強い先輩ですらシルバーなのに、それを超えるゴールドが束になってかかっても倒せない敵が出てくるかもしれない。

 出てくるとすればワーム系のボスではあるが、マトルケーブ・ワームが更に強化されて【パワーアロー】すら効かなくなってしまったら僕にはもうなすすべがない。


 すると、先輩は3人の中に流れた悪い雰囲気を断ち切るようにパンッと手を叩き注目させる。


「……はい!怖い話は終わり、とりあえずすぐには挑まないわ。今日は、ここで休んで明日挑戦しましょう」

「そう、ですね……アポロさんも今日は疲れていると思いますし」


 プロンさんの歯切れが悪い。

 おそらく、帰りを待っているフルドさんのことを気にかけているんだろう。


 だけど、自分の体の状況を考えてもすぐに「行けます」と言える状態じゃなかった。

 ということで、僕たちは洞窟の奥深くの地下で休むことになった。





異世界メモ:ダンジョン

ダンジョンはこの世界のいたるところに出現するやっべぇ建造物のことを指すよ!

その最深部には『ダンジョン・コア』と言われるものがあってそれが核になっているんだよ。

でも、それを一体誰が作ったのか?何のために、というか何でダンジョンが出現するの!?などの謎は一切解明されていないんだって…一説にはま…【禁止ワードを確認】…あれ?なんて言おうとしたんだっけ?

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