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第5話・洞窟の怪物



 翌日、ポラリス先輩からもらったお金を使って安宿と食事をとって言われた通り門に向かうと既にプロンさんが待っていた。



「おはよう、アポロさん。何だかちょっと早く来すぎじゃない?」

「おはよう……プロンさんには言われたくないかな。でも、何だか冒険って聞くとワクワクして眠れなかったんだ」


 嘘である、アポロは昨日の晩にボアに散々追いかけられる夢を見てから眠れなくなったのだ。



「そうなんだ、実は……私も、すごく興奮して眠れなかったんだよ」



 嘘である、彼女も昨日の依頼の後、自身のスキルがあのラージ・ボアに対して役に立たなかったことを気にして眠れていなかったのである。


 完全にすれ違った二人、互いに相手の反応を見た感想は――


(アポロさん/プロンさん……すごい!!)


 と、綺麗に誤解していた。


「……何してるの?」


 そのまま、互いにすれ違いながら羨望の目を向けていた所に数分経った頃ポラリス先輩が到着した。




 ***




 門から出て、草原を駆け抜け森に入り大体二時間ほどたった頃、僕たちは目的地に到着した。


「ここが、今日の私たちの討伐目的がいるところよ」

「いるところって、言われても…?」


 思わず見上げてしまうほど巨大な山、その麓にいるのだがその山肌には街の城壁くらい巨大な洞窟がそこにはあった。



 その洞窟を見て思わず身震いしてしまう、なぜなら中からは明らかに入ってはいけない気配がビンビンと感じ取れてしまうからだった。


 それは、どうやらプロンさんも同様のようで顔を青くしていた。


「それじゃ、入るわよ」

「待ってください、この中には何が出てくるんですか!?」


 ただ一人あっけらかんとしたまま洞窟に入ろうとする先輩を呼び止める。



「安心しなさい。ここに出てくるのは『ケーブ・ワーム』だけよ。あなた達でも一体だけなら十分対処できるわ」

「いやいや、そんな常識みたいに語られても知らない魔物ですよ!!」


 神様から与えられている常識の中には少なくともない。

 すると、プロンさんが横から説明してくれた。


「ケーブ・ワームは洞窟に出てくるミミズ型の魔物で主に洞窟で暮らしています。すごく大きいものだと20mを超えるものもあるんです!!」

「く、詳しいね……って、やっぱりヤバい奴じゃないですか!?」


 20mと言われても特に長さの物差しが出てくることはないがともかくヤバいという事だけは理解できる。


 というか、やはりプロンさんは魔物への興味があるのか興奮気味に話してくれる。


「だけど、大半のケーブ・ワームは大きくても2~4mほどよ。それに、装甲はものすごく薄いから弱点の頭を狙えば意外と簡単に倒せるのよ。でも、無駄に大きいし数も多いからこうやってたまに討伐をしているってわけ」


 2~4mの時点で十分大きい気がするが、先輩の言う通り本当に弱い奴ならいいが洞窟から漂ってくる気配はそんなもんじゃない気がする。


「安心しなさい、たとえ10mだろうと100mだろうと私が守ってあげるから、二人はたくさんいるケーブ・ワーム後ろから倒していればいいのよ」

「そうですか……」


 確かに、昨日のボアたちに襲われた時とは違ってちゃんと先輩という前衛がいるんだ。

 何を恐れる必要があるのだろうか、今日の僕は後衛からひたすら矢を放っていればいいだけと結論づけた。


「ふふっ、そうこなくっちゃ!!それじゃ、行くわよ!アポロ、プロン」


 覚悟を決めた僕たちは魔物が住む洞窟の中に進むのだった。



 洞窟の中は、なぜかところどころ発光しているおかげでそれほど暗くはなかった。


「実はですね、光っている場所はケーブ・ワームの体液がかかっているんです。奴らの体は発光しているからこうやって岩も光っているんですよ」

「プロンさんってやっぱり魔物のこと詳しいですよね……近くで嗅ぐと臭いですね」

「そこは体液だからね……っと、ここからは奴らの住み家ね」


 適当にしゃべりながら歩いていると、今いる場所よりもはるかに大きな空間にぶつかる。

 歩いた限りでも、この洞窟内はアリの巣のような構造になっておりたまにこのような大きな空間があるらしい。



「アポロ、手筈通りにね」

「はい、確認します」


 巨大な洞窟の中は所々発光しているとはいえ全部が見えているわけではない。

 だが、【射手座】の加護を持つ僕は夜目というか暗いところもはっきりと見えるため先制攻撃にはもってこいなのだ。



「数は2~4m級が……十体……ですね。とりあえず、見える手前はプロンさんが薄暗い奥は僕が攻撃します」


 初めて見たケーブ・ワームはとにかくでかいミミズという感じで、地面に這っているものもいれば、天井に張り付いているものもいる。


 プロンさんの話によれば体液が光っているということだが表皮で覆われている状態だと光を遮断しているらしく光ってはいない。

 なのでうまく岩場に擬態しているものもおり、僕のような加護がなければ奇襲を受けていた可能性が高いだろう。


「私はそれで大丈夫です」

「了解、じゃあアポロがタイミング合わせて1、2,3!で行くわよ」


 僕はプロンさんと目線を合わせ共に広い空洞の前に立つ。

 すぐさま【クリエイトボウ】と【クリエイトアロー】で弓矢を生成し構える。


 彼女の方も複数の角が空中を回転している所を見るに【ホーン・ドライブ】の準備は整っているようだ。


「……よし、行きます。1,2,3!【パワーアロー!】【セカンドアロー!】」

「【ホーン・ドライブ!!】」


 放たれるは強化された一矢、そして【セカンドアロー】で増えたもう一射、それらは真っすぐそれぞれ合計二体のケーブ・ワームの脳天を貫き撃墜した。


(よっしゃ、二体同時に倒せた!!)

「やったぁ!四体倒しました!」


 もはや何も言うまい、僕はどう考えても一度に倒せるのは二体が限界なわけなのでこの差は仕方がないと納得するしかないだろう。


 というか、あの細い角が不意打ちだと強すぎる。

 音もなく突っ込んでくるし、ケーブ・ワームの薄っぺらい装甲なんて易々と貫通し頭の中を破壊するのだろう。



「二人ともよくやったわね、それじゃ後四体……倒しきるわよ!!」

「プロンさん、手前の二体をお願い!【セカンドアロー】【フリーズアロー】」


 矢を放った後、フリーズアローとスキルを詠唱する。

 すると、矢が淡い光を纏い空中で制止し僕はその上に飛び乗り、弓に矢を番えた。




 今日の早朝に眠れなくなった僕は新しいスキルを試してみようと適当な誰もいない空き地にいた。

 そこで試していたスキルと言うのが、加護レベル3で獲得した新スキル【フリーズアロー】である。


 その効果は、放った矢を空中に制止させるとものであり気合を入れれば三秒間くらいは止めることができた。

 

 なおかつ副次的な効果として矢に触れた物は共にフリーズしてしまう効果がある。

 それを使って、足場として活用しているというわけだ。



(めっちゃ練習しといてよかった…!!)



 無論、何回も転んだのは言うまでもないだろう。


 そして、わざわざ移動して狙うのは手前側の天井に張りついているケーブ・ワーム二匹である。


「ここなら、狙いやすい!【パワーアロー】【セカンドアロー】」


 ケーブ・ワームの目が合った瞬間に放った二射は奴らの体を突き抜け洞窟の壁に深々と突き刺さった。


 その時、足元の矢が纏っていた光が完全に消え去る。

 すぐさま飛び降りると、あくまで途中で止めていただけの矢は慣性を取り戻し真っすぐ飛んで行った。


「おっ、と……」


 あくまで動かしにくいというだけのためその気になればこうやって脱出は可能だが矢の方向に気を付けなければ僕が串刺しになりかねない。



「ナイスよ!!こっちも倒しきったわ」


 振り向くと、地上にいたケーブ・ワームは既に倒されており頭にしか傷がないことから一撃で倒しきったんだろう。

 辺り一帯には奴らの体液が散らばり発光し始めている。


「これで、依頼は終わ……いや、なんか穴見えますね」

「そうね、おそらくケーブ・ワームがまだいるわ。ここで放っておいたら農村部への被害だけじゃなくて街に何個か穴ぼこができる可能性があるわね」

「街って魔物の襲撃を受けるんですか!?」

「そりゃそうよ、だからこうやって騎士団や私たち冒険者が魔物を討伐して街を守っているんじゃない」


 勝手に街は安全な場所だと考えていたが、よく考えてみれば地中からの攻撃や空から攻撃してくる魔物がいれば普通に入ってこられてしまう。


 このケーブ・ワームだって、放置していれば街に現れることになるという事だろう。



「先を急ぎましょう、想像以上に大規模な巣穴みたいだから骨が折れるわよ」

「はいっ、アポロさんも早く行きましょう!」

「……?はい……」


 順調に進んでいると言うのに何故だか、妙な胸騒ぎをした。

 だが、何でもないと口に出すことなく僕たちはさらに洞窟の奥へと進んだ。



異世界メモ:魔物

この世界には魔物と言われる存在がいるよ。

お察しの通りだけど、魔石とかはドロップすることはないよ。そもそも、魔法がないしね。

理由は不明だけど、人間を襲う習性を持ってるよ。

中には家畜化され魔物がいるとか何とか…?

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