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第4話・冒険者始めます!!



 最初に会った兵士さんの言う通り、道をまっすぐ進めば他とは明らかに違う赤屋根の大きな建物を見つけることができた。



「あそこが冒険者ギルドかな?」

「はい、実はさっきまであそこにいてお兄ちゃんに連れ戻されたんですよ」

「確かに、ギルドの方から運ばれてたね」


 まだあって間もなかったが彼女と道すがら談笑を重ねていくうちに、少しは仲良くなれていた気がする。



 そして、僕たちは早速冒険者ギルドの門を叩いた。


 ギルドに入ると真っ先に目が入って来たのは『受付』と書かれたカウンターだった。


 そして、端を見ると丸いテーブルがいくつか並んだ酒場があり、フルドさんの言う通り強面のならず者にしか見えない男が何人も座っている。



 僕たちは下手に絡まれるのを防ぐために視線は向けず、まっすぐ受付に向かった。



「すみません、冒険者登録をしに来たんですけど」

「私も同じです」

「お二人ですね。冒険者ギルドへようこそ……それでは、ステータスチェックを行うのでこちらの水晶に手をかざしてください」


 受付のエルフの女性はにこやかに対応してくれてカウンターの中から水晶玉を取り出し机に置く。


 言われた通り、早速僕から手をかざすとステータスウィンドウに記されていた情報が水晶の中にも移りだす。

 すると、何やら水晶に浮かび上がっている情報を確認しているらしいが突然受付の女性が声を上げた。



「なるほど、通常スキルがなし……珍しいですね。それに……え!?【射手座】の加護じゃないですか!?」

「珍しいんですか?」

「珍しいなんてもんじゃないですよ。もっと昔ならたくさんいましたが今の時代で知られている所持者はサジタリウス家の方々だけなんです。もしかして…関係者とかですか?」


 この世界のエルフは人間よりもはるかに長寿で長いものは1,000歳を超えると常識にはある。

“いました”という表現は実際にサジタリウス家に関係のない【射手座】の保有者を見たことがあるのかもしれない。



 それにしても、保有例がそこしかないなら加護についてサジタリウス家へ訪ねてみてもいいかもしれない。



「いえ、違います……あ、というか通常スキルがない人って僕以外にもいたんですか?」

「はい、見たことがないわけじゃないんですよ。これでも、結構務めて長いので」

「そうなんですね……」


 エルフの務めて長いとは一体どのくらいのことを言っているんだろう。

 下手をすれば100年単位という可能性すらある。


 そして、もしかすれば通常スキルがないということは僕と同じ地球出身の可能性もあるだろう。


「はい、戦闘スキルも確認しましたので登録は問題なく行います。代金は大銀貨一枚です」

「うっ、それじゃあこれで……」


 ついに、これで残金は大銀貨一枚となってしまった。

 異世界の常識では残念ながら平均的な宿屋の値段などはわからないので、もしここで依頼を受けて金を稼げなければ今日は野宿の可能性もある。



「そちらの方も、水晶に手を置いてください」

「は、はい……」


 その後は、緊張していたようだがブロンさんも問題なく登録を済ませ共に冒険者になることができた。


「お二人とも冒険者ランクは一番下の『スチールランク』から始まることになります。そこから、ギルドの依頼を受けて頂くとランクアップの試験を受けられるようになりますので、ひとまずはそちらを目標に頑張ってください」


 渡された冒険者カードには、簡単に僕が冒険者ネームとして登録した『アポロ』という名前と加護が記されていた。


 少し見上げてみると、ランク表なるものが記載されていた。



 冒険者ランクとは僕たちが今いるスチールから、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナ、オリハルコン、エレクトラムと上がっていく。

 上がって行けば、行くほどいい依頼もサービスも良くなっていくというシステムらしい。


「それでは早速何か依頼を受けていきますか?……と言っても、今のところ残っているのは討伐系の依頼ばかりなんですが」

「え?そ、そうなんですか……!?」

「はい、この時間帯になると安全な依頼は取られてしまって比較的危険な物しか残らないんですよ」


 それは困った、なるべく危険度の低い依頼を受けて日銭を稼いで戦いの準備を整えようという狙いが一瞬で瓦解した。



「ちなみに、僕でも受けられる依頼ってどんなものが……「待ちなさい、そこの新人さん」え?」


 背に腹は代えられないと依頼を探そうとしたとき、後ろから声がかかった。


「突然呼んでごめんなさい。私の名前はポラリス、『シルバーランク』冒険者よ」

「シルバーランク……!その、僕はアポロと言います」


 振り向くと、軽装備に身を包んだすらっとした装いに腰には二本の短剣を収めた女性が立っていた。



「ごめんなさい、警戒させるつもりはなかったの、ただそんな装備で討伐依頼を受けようとする初心者を見過ごせないってだけよ」

「それは……おっしゃる通りですね。ですが、あまり余裕がないもので」


 一応、まだ安宿を探してそこで一晩過ごしてから明日に危険の少ない仕事を受けるという選択肢もある。

 だが、安宿が埋まっている可能性や金が残らずご飯を食べれなくなる可能性があることからなるべく今日のうちに稼いでおきたい。



「そう……なら、提案があるわ。ちょうど、私もこれから依頼に出ようと思っていたところなの、そちらのお嬢さんも入れて三人で行かないかしら?もちろん、報酬は三分割で構わないわ」

「私もいいんですか!?なら、お願いします!」


怪しい


 僕もプロンさんのように即答したい、だけれど不信感がどうにも拭えない。

 確かにポラリスさんの提案はこちらからすれば願ったりかなったりだが、報酬面から何まで僕たちに都合が良すぎる。


『あの、アポロさん。彼女、ああやって新人冒険者の指導をよくやっているんです。ギルド側からの信頼も厚い方ですし提案を受けても大丈夫だと思います』

『……ありがとうございます』


 その時、受けるべきか悩んでいると受付をしてくれたエルフのお姉さんが小声で教えてくれた。


「僕もお世話になります。ポラリスさん」


 受付のお墨付きなら受けても危険はないだろうと判断して受けさせてもらうことにした。


「よろしい!なら、これからはポラリス先輩と呼びなさい」

「はい、ポラリス先輩!!」

「いい返事ね、早速行きましょう!!」


 こうして、僕たちはポラリス先輩の提案を受けて討伐依頼へ出向くのであった。




 ***




 早速、街の外に出てきた僕たちは道すがら軽く自己紹介を済ませることにした。


「まず、私からね。ギルドでも言ったけど名前はポラリス。シルバーランク冒険者で、スキルは【トゥ・ノース】よ。主に、この短剣を使って戦うわ」

「トゥ・ノース?それって、どういうスキルなんですか?」

「簡単に言えば、移動系スキルね。世界には東西南北って方角があるわよね、このスキルを使うと私に北の方角に力がかかるの…って見せた方が良いわね」


 そう言うと、突然僕たちがいた平原に青い猪のような魔物が現れる。

 

先輩は、僕たちに手を出すなとジャスチャーで示し、短剣を構える。


「来たわね【トゥ・ノース】」



 そう言うと、彼女の姿が少しぶれたかと思えば北だと言って指さした方向に瞬間的に移動した。


 ――と思えば短剣が魔物の背中側に深々と刺さっていた。


「っと、こんな風にね。力のかかる方向は変えられないし結構不便に見えるかもだと、結構使い勝手がいいの……そんな所ね」


 ポラリス先輩の言う通り、常に北にしか移動ができないということは移動先に障害物があったとしたら動けないし、位置の調整が必要になるスキルだ。


 だけれど、使いこなせれば今のように目の追いつけない速度で攻撃できるのだろう。


「……あの、何でそんなにニヤニヤしてるんですか?」


 だが、そんなことよりもポラリス先輩が妙にいたずらっ子のような表情をしていることが気がかりだった。



「これが今回の依頼のターゲットの『ミディアム・ボア』と言って突進力は中々だけど正直あまり強くないわ。でも、ある特徴があってね……」


 猪というか子熊に似ている気がするが気にしないでおこう。


「その、特徴って何ですか……?」


 倒した小型の魔物を指さしながらこちらを見る。

【射手座】の加護によって周囲への索敵能力を持っている僕は薄々その特徴を感じ取っていた。


「あ、あの……私の【鑑定】で見ると群れで行動するって書いてあるんですけど」

「鑑定なんていいスキル持ってるじゃない。じゃあ、もうわかったわよね……来るわ」


 その時だった車でもすぐ隣で走っているのかと思うほどの轟音と共に無数の青い影が迫ってきていた。


「「「「「フゴッ、フゴオォォォ!!」」」」」

「二人の実力見せて頂戴!!」


 森の中から現れたのは十匹以上のミディアム・ボアたち、僕たちを見つけるとすぐさま敵意をむき出しにした状態でこちらに突っ込んできていた。



「あ、アポロさん!来ました!!」

「力試しってことですね。【クリエイトボウ】【クリエイトアロー】」


 迫るボアに対し冷静に弓矢を作り出し放つ、幸いにも真っすぐ進むしか能がないようで簡単に一匹は脳天に矢が突き刺さり倒れた。



「だけど、数が多い!【セカンドアロー】」


 ついさっき試したばかりのスキル【セカンドアロー】その効果は矢を二つに増やすものであり、【パワーアロー】と合わせれば単純に威力を上げることができる。


 だが、それでも倒せるのは二体で続々と猪は迫ってきていた。





「【パワーアロー!】【セカンドアロー!】」


 パワーアローで矢の威力を強化し、セカンドアローで強化された矢を増やす。

 それによって、ミディアム・ボアの腹部を矢は貫いて行きさらに奥のボアもまとめて倒していった。


 それが、二本――つまり、一射にて4体のボアを倒して見せた。


(撃てば撃つほど、感覚が研ぎ澄まされていくのを感じる。これなら、プロンさんも守れる)


 彼女を守るとフルドさんに約束したのだ、傷一つ付ける気はない。


「【ホーン・ドライブ】行って!」


 と思っていたのだが、プロンさんが強すぎる。


 先ほど見せてもらった通り、角を操るスキルなのだが僕が昨日戦った兎と同じくらい鋭利な角を回転させてボアの脳天にぶつけている。



 そしてミドル・ボアを十数匹倒した後、最後に現れたのは群れのボスと思われるこれまでとは一線を画す大きさの猪だった。


「っ、アポロさん。あの、大きな奴【鑑定】で見たら『ラージ・ボア』って出てきました。とりあえず、私が足を止めるのでトドメを!【ホーン・ドライブ】」

「はい……!!」


 彼女がスキル名を唱えると同時に放たれる無数の細い角はボアの巨大な足に突き刺さる。

 だが、足が穴だらけになったはずなのにボアの突進は全く止まる様子が見えない。


「止まらない!?」

「いや、十分です。少し…遅くなった【パワーアロー】【セカンドアロー】」


 一瞬だが、足が鈍った瞬間にパワーアローとそれを分身させたセカンドアローを放つことで正確にボアの前脚を撃ちぬいた。


「フゴォォォォォ!!」

「って、これでも止まらない!?」


 しかし、前脚は完全に機能停止させたはずだというのに先ほどまで慣性と後ろ足を全力で動かすことによってまだ突進をやめない。


 その時だった、木の上で静観していたポラリス先輩が降り立ちふさがった。



「ラージ・ボアは突進しか能がなくてね。何があっても完全に動けなくなるまで突っ込んでくる習性があるの。知らなかったじゃすまないけれど一か八か頭を狙うべきだったわね【トゥ・ノース】」


 スキルを発動した彼女は、跳躍後スキルを起動させる。

すると、突進するボアの頭上に移動して短剣を突き刺し一撃で討伐して見せた。



【射手座】の加護レベルが3に上昇しました。




 それと同時に、戦闘がラージ・ボアを倒すのに貢献した分、経験値が入ったのか加護レベルが上昇した。


「倒しちゃった……ポラリス先輩すごい!」

「ふふんっ……まあ、呼んだのは私だけどね。ごめんなさいね、急に試す真似をして」


 血を払い短剣をしまい込んだ彼女は頭を下げ謝罪する。

 それを見て、僕とプロンさんは互いに顔を合わせ頷いた。


「私は大丈夫です。久しぶりの戦闘で勘を取り戻せましたし、加護レベルも上がったので」

「僕も同じです。それに、ポラリス先輩の立場からすれば僕たちの実力がわからない状態で連れて行くのは危険ですからね」

「二人とも、ありがとう…それじゃあ、後片付けしましょうか!」

「「え?」」


 ――考えてみれば当たり前のことだが、魔物の体というのはそう都合よく消えるはずがない。

 僕たちは、討伐の証である耳を切り取った後、不要な部位を捨てるための穴を掘っていた。


 てっきり肉とかは食えると思ったが、ポラリス先輩曰く魔物は人を食べている可能性があるのと、物によっては食中毒になる可能性があるらしい。


 普通にリスクが高すぎるため、肉は飼育されているものを除き食べられていないというのが現状だ。


 ちなみに、レバーなどの内臓は論外で本当に死ぬらしい。



 そしてラージ・ボアをはじめとしたこいつらは毛皮が高値で売れるため血を抜いた後は肉や内臓は全部捨ててポラリスさんの指導の元毛皮を剥いだ。



「よし、これで討伐完了よ。明日は、今日出た門集合ね!次は、私の依頼を手伝ってもらうからしっかり休んでおくように」


 こうして、全ての工程を終えた僕たちはポラリス先輩を先頭に僕たちは街に帰っていった。

 

 そうして帰って冒険者ギルドに今回手に入れたボアの毛皮は結構高値で売れ、今日の宿代と食事代も何とかなったのであった。




異世界メモ:冒険者

冒険者はこの世界では命の賭博場なんて呼ばれる職業だよ。

普通に考えればなりたい奴の正気を疑うね

冒険者ランクはスチール、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナ、オリハルコン、エレクトラム…とあるよ。

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