表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/27

第24話・魔王討伐前

なんか、総合評価が全然増えないのでタイトルをより”なろう”っぽくしてみた



 それは、唐突に起きた。


 散々、訓練して備えてきたがその時が来ると心臓が跳ねるのを感じる。

 異世界転生して八日目、僕は――いや、僕たちは魔王に挑むことになった。



 本来の予定であれば翌日のはずだったが、早朝に魔王の巣の活性化が予想以上に早く進んでいるとの報告があった。


 その日のうちに作戦は発表され、隊員の選抜、物資の準備その他諸々、普通に考えれば数日かかりそうなものだがものの数時間で終わった。



 そのため、急遽日付を繰り上げての決戦となってしまった。


 なぜ、そこまで早急に準備を終わらせられたのかと言うとこの戦いが少数精鋭による短期決戦であることが挙げられる。



 要するに、魔王相手に無駄な人員を裂いたところで肉壁にすらならないということだ。



 そして、現在僕はゆっくりと馬で並走しながらアッシェラと軽口をたたいていた。


「緊張してるのか?」

「……うん」

「似合わねえな。てっきり、わくわくしてると思ってたぜ」

「戦闘狂と一緒にしないでくれ。僕だって緊張くらいするよ」



 馬なんていつ乗れるようになったのかと疑問に思うかもしれない。

 実は、昨日団長からの質問に答えた後、頭を掴まれ馬小屋に連れて行かれていた。


「乗れ」

「の、乗れって言われても馬な……いえ、乗らせていただきます」


 ぐちぐち言いかけた口を閉じて、団長の静かにも鋭い視線に負けて馬の横に立つ。


(……どうやって乗るんだ?)


 もちろん、前世で馬に乗った経験なんてない。

 競馬場で馬を見たことはあるが、その時には馬に何やら足場のようなものがあった気がするがそれらしいものは見当たらない。



「触ってみろ。そうすればわかる」

「わかる?……っ!?」


 少し鼻息荒い馬に恐る恐る手を伸ばす。


 触れた瞬間に感じたのは、馬の体温の高さと弓を始めて扱った時と同じ最初からこの馬は僕の一部だったような感覚がした。



 僕が触れて何か馬も感じ取ったのか、じっとこちらを見て何かを待っているような感じがした。


「乗るね」


 一言、馬にそう伝え片手で馬のたてがみを握り、反対の手で鞍を押して片手懸垂のような動作で鞍に飛び乗った。



「もしかしてとは思っていたが、よほど射手座の加護を宿すに向いている体なのだな」

「つまり、これも加護の力で僕の才能が引き出されたってことですか?」

「そうだ、まあ私は才能がなかったので弓も乗馬も出来んのだがな」


 ――ということがあったのだ。


 ちなみに、その後はひたすら基礎訓練をしたため気絶し記憶が消えていた。


 てっきり、翌日は筋肉痛地獄かと思っていたが医務室の先生が乙女座のスキルで自己治癒を促進してくれたおかげで今は何ともない。



 何ともないが、この胸の中の緊張はほどけそうもない。


「ま、緊張するくらいがいいかもな。楽観的にやられてもそんなのに俺たちの命を預けるのは不安だからな」

「お前って人を励ます言葉は言えないの?」

「励ましてやってんだろ。それに、いいのか?お前の女に一言くらい言ってやらなくて」

「別に僕の女じゃないよ」


 ちらっと振り向くと、ナビリアスと一緒の馬で何やら談笑しているプロンがいた。

 同性の方が話しやすいこともあるだろうし、僕が干渉すべきことじゃない。


 それに、僕が何を言ったって彼女の力になるわけでもないだろう。



「そうか……?まあ、お前がそう言うならそうなんだろうが、あっちはどう思ってるかな?」

「あっち?プロンがってこと?……頼れる仲間くらいには思ってくれると嬉しいな」

「頼れる仲間って……」


 そう、言いながらアッシェラはプロンの方へ振り向くとこちらの視線にあちらも気づいたのか、こっちを見て手を振ってくる。


(あれが、ただの仲間に向ける目かよ……)


 アッシェラは艶やかな瞳でアポロを見つめる彼女を見てただため息をついた。



「そういえば、お前って彼女に会ってどのくらいなんだ?もしかして、家族ぐるみの幼馴染とかか?」

「え……ああ、えっと?」


 異世界に転生したのを一日目とすると、出会ったのが二日目で、今日が異世界転生八日目である。



「確か、六日前かな。この街に初めて来たとき、リンゴを奢ってくれたり、色々歴史を教えてくれた人の妹だったんだ」

「む、六日目前!?そんな浅い関係の奴のために命かけてたのかよ!!」

「命って……もしかして、あのダンジョンでの話を知ってたの!?」


 あの話は、生存者の僕とプロン。

 そして、その調書を取るのを担当していたギルドの職員の人だけだ。


 つまり、こっそり僕たちのことを調べていたのだ。



「まあな、だが……そうか、初めてお前をこの作戦に選んだ団長は間違いだって思ったぜ」

「喧嘩売ってる?ていうか、団長が僕を選んだのは射手座の加護を持ってたからだろ」

「それもあるが、性格というかなんというか人間的にもお前は適性0%だ」

「なにそれ?戦いに向いてないってこと?」


 確かにいざという時は容赦しないけれど、それ以外では僕は平和主義者だし争いは好まない性格だとは思ってる。


「いや、今回の作戦でお前は要だ。大事ってことだぜ……だけど、もし俺がピンチだったらどうする?」

「助けるよ」


 ノータイムで僕は応えた。


「そうだな、きっと命を懸けて助けに来るだろうな。だが、それじゃダメなんだ。お前は要、命には優先順位ってのがあるんだ」

「……自分は低いって言いたいの?」

「ああ、だから全て救うなんて傲慢な考えは捨てな。お前がピンチなら俺が助けてやる。だが、俺がピンチの時お前は助けるな」

「……」


 分かっている、頭ではわかっているが心がどうしても納得できない。


「納得してないって顔だな。だが、そんなもんだ。全てを救える人間なんて……神様か英雄って呼ばれる奴くらいだろうな」

「英雄……」


 転生前に神様が僕は世界最強になれるかもしれないと言っていた。


 もし、僕が本当に世界最強になれば全てを救うことも、全ての不条理を除くことも、全ての絶望も打ち砕くことができるのだろうか。



「っと、そろそろ着くな。気を引き締めて行けよ。作戦の再確認は必要か?」

「いや、単純だし問題ないよ……面倒かけるね」

「いいってことよ。だが、まさか俺たちが本当に運命共同体ってやつになるとはな」


 この作戦、重要なのはいかに僕が素早く作戦を終えるかどうかにある。

 これを成功させるうえで必要なのは細い空間を瞬時に射抜ける弓の名手、今回は僕になる。



「これより魔王の巣に突入する。総員、準備を開始しろ」



 団長からの号令と共に僕たちは一旦馬を降りて最終確認を始める。

 結局、魔王に挑む人員は団長、副団長、アッシェラ、ナビリアス、プロン、僕という総勢六人という少人数で挑むことになる。


「アッシェラは魔王と戦ったことがあるの?」

「まあな、ナビリアスもそうだぜ。俺は一度だけだが最悪ってもんじゃなかったぞ」


 準備中、問いかけると彼の声のトーンが一段上がる。


「それって、魔王がそれだけ強いってことだよね」

「それもある。びっくりしたぜ、人間がまるで埃みたいに吹っ飛んで行くんだ。もう、笑うしかない」


 そんな目にあってもこうやって笑顔のままで、なおかつもう一度戦いに挑むというのは彼の戦闘狂らしい部分を強く感じられた。



「だが、それ以上に苦しいのは……精神攻撃の方だったな」

「精神攻撃?」

「ああ、奴らは人類の言葉を喋る。はっきり言って気分が悪いなんてもんじゃなかったぜ」

「それは、やりにくいな……」


 僕たちは曲がりなりにも同じ言語を扱う相手に親近感を得やすい。


 たとえ姿が魔物でも、人類の言葉を使ってくればそれを殺す精神的負担はそう軽い物じゃないだろう。


(……まあ、人間の言葉を話す魔物って言う面だとうちの父親も同じようなもんか)


 確かに、父親を手に掛けたことは転生した今でも多少なりとも罪悪感は残っている。



「アポロ大丈夫?」


 少し気持ちが落ち込み始めた時、ナビリアスといたはずのプロンが話しかけてきた。


「プロン……うん、そっちこそ大丈夫?」

「私は大丈夫!!実は、特訓のおかげで今は五十個も角をホーン・ドライブで動かせるんだから。レベルもこっそり上げて新しいスキルも覚えたんだからね」

「ホント!?すごいね……」


 自信満々な彼女が今は少し眩しい。


 僕も今日まで記憶が消えるくらいの特訓をひたすら積んできた。

 きっと、転生直後とは比べ物にならないくらい強くなったと思う。



 だけれど、心根の奥にへばりつくように全く不安はぬぐえない。


 僕の胸を締め付けていたのは、その手の上に乗っていた色々な人たちの命だった。



 もし、僕がしくじるようなことがあればこの場の仲間たちは全滅し、街は反撃する戦力を失いルクバトは陥落するだろう。


「だからね、今度は私がアポロを守るよ。もう、守られるばかりの私じゃない。一緒に戦おう」

「……頼りになるね。本当に」


 だが、それは紛れもない驕りだった。


 戦うのは僕だけじゃない。

 街の人々の命は決して僕だけの手の中にあるわけじゃない。


 みんなで戦うんだ、みんなで助けるんだ。



 何でも一人でやるわけじゃない。

 たとえ、相手が魔王だとしても力を合わせて打倒するのみだ。


「少しはいい顔になったじゃねえか」


 彼女と話を終えるとタイミングよくアッシェラが戻ってくる。


「おかげさまでね……アッシェラ」

「あ、なんだ?」


 さっきから喉の奥で詰まっていた一言を僕は短く発した。



「後ろは任せた」

「……はっ、たりめーよ。俺のスキルを何だと思ってやがる」

「確かに、アッシェラが言うと安心感が違うな」


 互いに最後の軽口を言い合い、僕たちは団長の元に集まる。



「これより、魔王討伐作戦を開始する。これより先は死地である、しかしここで行かなければ次の死地は街となる」


 それだけは決して許してはいけない。



「だが、そんなことは我々騎士団がさせない。いや、させて堪るか!!我々の街を荒らさんとする虫畜生に人類の力を見せつけてやるぞ!!」

「「「「「オーッ!!」」」」」

「よし、では総員突入開始!!」


 この場にいる者が全員雄たけびを上げ、覚悟を示す。

 これよりは死地、生きて帰れる保証はない。


 それに恐れる者はこの場にはいなかった。




異世界メモ:年齢

実は、現在魔王討伐に挑もうとしているメンバーの年齢は以下の通りになっています。

アウストラリス(団長):24歳、スピカ(副団長):26歳、アッシェラ:22歳、ナビリアス:22歳、プロン:18歳、アポロ:17歳

え?なんか全体的に若くね?……きっと、どこかでベテランがいっぱい死んだんだろうね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ