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第18話・点と点が線になる



 拝啓、親愛なる妹へ


 お兄ちゃんは昔、空を飛んでみたいと言っていたね。

 結局、その夢は前世のうちには叶うことはなかったけれど、異世界で僕は空を飛んでいるよ。


 夢が叶って喜びたいけれど、僕が想像した物とは少し違うかな。


「うわぁぁぁぁぁぁぁ!?」

「騒ぐな、舌を噛むぞ」


 だってこれ、飛んでいるというより跳躍と行った方が良いのだから。

 暑い夏の日、空を見上げて羨んだ飛行機ではなく、僕はアウストラリス様に抱えられて空を飛んでいた。


 初飛行が、こんな全身で風を感じる形になるとは思いもよらなかった。



 そして、風圧を顔で受けながら一体何が起こったのか、整理していこうと思う。



 まず、事件は瓦礫をどけている最中に起きた。

 昼に迎えに来るとだけ聞いていたがまさかこんな強引というか誘拐まがいの方法とは思わなかった。


 突然、話しかけられた僕は有無を言わさぬスピードで気づけば小脇に抱えられ身動きの取れない状況になっていた。



 その後、プロンが助けに来てくれたと思ったら彼女も同様にあっさりと負けて僕の反対側に抱えられている。



 さて、そんなこんな回想していたら何やら立派な白塗りの建物が見えてきた。


「着地するぞ、念のため目をつぶっておけ」


 今思ったが、着地ってどうするんだろう。

 まさか、飛行機のように車輪が出てくるなんてはずはないだろうし、ましてや直接着地するわけがないはずだ。


「目を……?うわぁぁぁ!?」


 小脇に抱えられている僕の視点から見れば地面が徐々に徐々に近づいて行く。

 フラッシュバックしたのは父親に面白半分で川に放り投げられた時の記憶だった。


「うごっ……!」


 咄嗟に目を閉じた瞬間、耳元で爆発したような爆音が響いた。

 音から数瞬後には、彼女に抱えられている腹部が強い衝撃に襲われた。



「ほら、到着したぞ。さっさと降りろ」

「え、あ……はい」


 突然の出来事に頭の中は混乱しっぱなしだが言われた通り降りる。



 跳んでいた時の景色からある程度は推測していたがここは街の中心部に当たる場所らしい。

 そして、噂によればスタンピードの激戦区だったと聞いている。


 だが、周囲にはその痕跡は見えず魔物のかけら一つも見られなかった。



「何をしている。さっさとついてこい」

「は、はい……」


 神様、僕が一体何をしたと言うんですか。

 あれですか忠告を無視して冒険者を続けようとしたから罰を与えに来たってことなんでしょうか。


 だが、いくら神様に言ってもこの状況が変わるわけじゃない。


 僕は言われた通り彼女の後ろについて行った。



「おい、そっちじゃないぞ」

「え?」

「あっちだ」


 途中まで白塗りの豪勢な建物の方向へ進んでいたが、途中で呼び止められて言われた通り曲がって少し歩くと、レンガと木で造られた大きめの建物にやって来た。


 辺りは街の中央に位置するにしては静かで、大きな広場は学校の校庭を思い起こさせた。



 そのまま、促されて中に入って行くと中は外見と同様に清潔に保たれており嫌な臭いもしない。


「今日からここがお前らの泊まる場所だ。いいな?」

「……はい?」

「ちょっと団長!絶対、何も説明せずにつれてきましたね!」


 アウストラリス様の突拍子もない発言にも驚いたが、廊下の奥から会話に割り込む形で見知らぬ人物が現れた。



 見た目は、少しウェーブがかかった青空のような青髪に、吸い込まれるような瑠璃色の瞳を持つ女性だった。


「副団長か。問題ない、ちゃんと昼に迎えに行くから準備をしておけと言っておいた」

「迎えに行く理由はちゃんと説明しましたか!?」

「……」

「団長!!」


 痛いところを突かれたのか、顔を逸らし無言になる団長。


「……はぁ、改めて言いますけど団長のやったことは誘拐ですからね!!ゆ・う・か・い!!」

「いや、私はちゃんと……」

「では、聞きましょう。そちらの方、団長はあなたと今抱えられている方はこちらに来た理由をご存じですか?」

「……」

「……知りませんでした」


 ちらっと助けを求めるように僕の方を見るが、聞いていないものは聞いていないし、むしろ僕が知りたいくらいだ。


「本当に……いえ、説教は後にしましょう。昨日ぶりですね、私はここの騎士団で副団長をしているスピカと言います」

「昨日ぶり?」

「副団長は昨日、ずっと顔を甲冑で隠していたから気づかなくても無理はない」


 最初はピンとこなかったが、全身甲冑と言われて昨日の記憶が点と点で繋がった。



「あの、もしかしてブルー・マジシャンのスキルで僕たちを助けてくれた人ですか?」

「はい、その節は協力して下さりありがとうございました。あなた達冒険者のおかげで、被害を最小限に食い止めることができたんです」


 プロンもスキルの練度に驚いていたが、その使い手が副団長と言うなら納得できる。

 それに、僕たちはネストを倒した後も共闘して戦っていたので、心なしかほっとしている自分がいる。



「よし、話しは終わったな。それじゃあ、団長室に行くぞ。そこで、説明してやるから逃げるなよ」

「私も同行しますから、安心してくださいね」

「はい」


 逃げるなよと言われてもプロンが彼女に抱えられている時点で置いて逃げられるはずがない。


 それに、大人しくついていくのはスチールランクの冒険者である僕たちをこの領地の騎士団長が連れてきた理由が単純に気になったのもある。


 言われた通りついていくと、団長室と書かれた扉の前に止まった。



 扉を開け、中に入ると明かりはついておらず外の陽光だけが部屋を照らしていた。


「そこに座れ」

「……はい」


 言われるがままソファに座ると、彼女は向かい側に座り、なぜかスピカさんは出入口に立ってまるで僕の脱走を防ごうとしているようだった。


 そして、互いに座り数瞬の時が流れたると彼女はその重い口を開いた。


「単刀直入に言おう、アポロ、プロン。両名には、私たちがこれから行おうとしている魔王討伐作戦に同行してもらう」

「……はい?」

「わからなかったか?もう一度言うぞ、お前たちには私たちと共に魔王と戦ってもらう」

「……はい!?」

「まだ、わからないのか?」


 いや、別に理解できなかったわけじゃない。

 だけど、意表を突かれすぎて困惑しているだけだ。


「団長、おそらく理解していると思います。詳しく説明すべきです」

「そうなのか?」

「はい!!」


 ありがたい、スピカさんが僕の言いたいことを全て代弁してくれた。

 というか、この団長には少し天然の部分があるような気がする。



「でしたら、私から説明します。まず、スタンピードが起こる条件は知っていますか?」

「はい、主に発見されなかったダンジョンから魔物があふれ出すことによって街に被害が出る現象と聞いています」


 だが、これに当てはめると今回の出来事はおかしなことになる。

 なぜなら、この近くのワームのダンジョンは先輩と一緒に行ったあそこのみであるため出来立ての迷宮で魔物があふれ出るとは考えにくいということだ。



「ええ、ですがそれは一般的なものです。中には例外も存在します」

「例外ってもしかして魔王が関係しているんですか?」

「その通り、スタンピードは魔物がダンジョンからあふれ出す以外にも、近くに魔王が現れることによっても活性化し起きることがあるんです」


 その時、体全身に震えが襲った。

 突然、彼女の言葉から降って来た衝撃に思わず身を揺らしたのだ。



 魔王種により活性化されたダンジョンがワームの物であるならば、それを活性化される魔王として最もふさわしいものは何だろうか。


「……魔王スプリームハイドラ・ワームですか?」

「なんだ、知っていたのか、私たちが討伐するのはその魔王で間違いない。それで、私たちに協力してくれるか?」

「協力します」


 即答だった。

 迷う間もなく、食い気味なくらいだった。


「迷わないな、それにいい目になった。覚悟を持ったいい戦士の目だ。どうだ、副団長は異論ないか?」

「……構いません。結局のところ、あの魔王の討伐には団長以外の【射手座】の加護を持つ方が必須でしたし……ですが、アポロ君。魔王種との戦いはとにかく危険です。それを理解して、改めて聞きます。私たちと共に魔王を倒してくれますか?」

「はい」


 迷う必要はない。

 何故なら、もしここで僕が断ったとしてもプロンは確実に自分から志願するだろう。


 もちろん、それは騎士への憧れもあったかもしれないが、その魔王種は彼女の両親の仇でもある。



 それなら、僕が命可愛さに一人逃げるわけにはいかない。



「僕にやらせてください」


 それに、その行為で多くの者を救えるのなら命を懸けるのも悪くないとそう思ってしまったのだ。



 僕はまだ、その衝動の正体を知らない。

 でも、その熱はゆっくりと僕の中で芽吹こうとしていた。

異世界メモ:騎士団長アウストラリス様

アポロが初めに入った街、ルクバトを収めている領主の家『サジタリウス家』出身の人だよ。

神様から射手座の加護をもらったアポロと違って代々射手座の加護を継承しているらしいね。

彼女も当然、射手座の加護を持っているよ。

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