表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/27

第2話・加護と初戦闘


「……っ!!」


 冷たい風が頬を打った。

 目を開けると、真夜中で見知らぬ空には二つの月が淡く並び、それに続くように星々が空を照らしていた。


 どうやら森の中のようで足元の草が、夜光のようにぼんやりと光っていた。

 風が通るたび、まるで呼吸しているように揺らめいていた。


「ここが、異世界……『ゾディアック』」


 天を見上げると神様の言う通り、木々でほんの少し隠れているのがもったいないくらい夜空が綺麗だった。


 僕の人生がどれだけちっぽけだったのか。

 輝く星々の一つ一つが僕に知らしめているようだった。



「……」


 人は死ぬと星になると誰かが言っていた。

 だとすれば、あの中に僕の妹もいるのだろうか。


「……っ、はぁ」


 空を見上げながらだったため、涙はこめかみを伝いながら悲しみをゆっくりと洗い流していた。

 



 ***




 数分間、ただ夜景をじっと眺めていたが、そろそろと気を改めて、今の僕を確認する。



 僕の名前は、影山阿歩炉。17歳の工場勤務。


 仕事を終えて帰って来たタイミングに父親から不意打ちで殴られ動けなくなった直後に、目の前で妹が殺された。

 それに怒った僕が、包丁で刺し殺そうとしたら反撃されてこちらも殺され相打ちになってしまった。


 それで、今は神様に選ばれ加護と異世界の常識を授かり異世界に転移した。


 ざっくりとこれがここまでのあらすじだ。




 一応、服装は出勤時に来ていた私服そのままで生前持っていた物は持っていない。


 ただ、立ち上がると同時にチャリンと音がして、ポケットをまさぐってみると大きな銀貨が3枚出てきた。


「これで……えっと、一枚………1000円くらい。じゃあ、3000円もくれたってこと!?」


 異世界の常識には、この世界で生きていくための“ある程度”の常識が収められている。


 あくまで知識として持っているだけの為、使いこなすのに手こずるだろうが、この世界の通貨の常識もちゃんと収められている。



「とりあえず、早速異世界の常識に助けられるね……『ステータスオープン』」


 まあ、基本的に日本でいた頃と大差がないように思えるが、重要な差異としてステータスというのが存在する。


 そして、僕の詠唱と共に目の前に僕のステータスウィンドウが出現した。



 ステータス

 名前:影山阿歩炉

 種族:人間

 称号:なし

 加護:【射手座(レベル1)】

 加護スキル:クリエイトボウ、クリエイトアロー、パワーアロー

 通常スキル:なし



 これが、僕の今のステータスだ。

 友達がやっていたゲームのようにHPや攻撃力が細かく表示されるわけでもない、だけれど加護レベルと言うのが存在する。


 そして、この世界ではスキルと言うのにも二種類存在し、一つは僕の持っている神などから与えられる加護から派生した加護スキル。

 もう一つは、この世界に生まれた人間なら誰しもが一つは保有している通常スキル。



「当然だけど、僕は異世界生まれじゃないから持っていないと……加護の……常識もあるみたい」


 加護、それはこの世界の人間に稀に宿るものであり神々からの祝福だと言われている。

 そして、所持しているだけで使い手には何かしらの効果が付与されるとのことらしい。


「【射手座】は……うーん、そこまでは常識に入っていないか。保有例が少ないのかな?」


 だけれど、もう僕は加護の効果をまさに実感している。

 いくら、月明かりがあると言って流石にここまで見やすいってことはないはずだ。


 どうやら、【射手座】の加護には夜目を効かせる効果があるらしい。



「それに、周囲に何となくだけど何かいるのかわかる。……やっぱり、狩りとかに向いている加護みたいだな」


 幼いころ、何人目かの母親に呼んでもらった星の図鑑で聞いたことがある。


【射手座】の元となったのは古代ギリシャに登場する賢者ケイローンに由来し、知恵と狩猟の象徴されている。



 おそらく、この【射手座】の加護もそれに類似していると考えた方が良いだろう。



「さて、じゃあ早速スキルを試してみようかな……【クリエイトボウ】【クリエイトアロー】」


 スキルの名を呼ぶと同時に手元には簡素なロングボウと矢が生成される。

 今のように、常時発動型を除けばスキル名を呼べばスキルは発動する。


 そして、ある程度イメージで融通が利くため今度は【クリエイトアロー】で一気に、三本の矢を生成して見せた。


「でも、弓なんて扱ったことないんだよな……試しに近くの木を狙ってみるか」


 お試しということで、矢を携え弓を引き絞る。

 だが、思ったよりも様になっているというかしっくりくる。


 例えるなら、自分が幼いころから弓と共にいたように自然で、まるで自分が弓になったようだった。



「はっ!」



 気合の声と共に手を放すと、弓から放たれた矢は蛇のようにしなりながら振動し、狙った近くの木に深々と突き刺さった。


「……当たった!?」


 スパっ、と放った矢が刺さったのを見て軽率にも思わず興奮して声を上げてしまう。


 嘘偽りなく初心者の為、おそらく【射手座】の加護には担い手の弓の才能とか、技能を上げる効果があるのだろう。



「っ!」


 だが、夜目が効いていたこともあってか現在は真夜中だということを忘れていた。

 これだけ大きな声を出せば僕の常識の中にある“魔物”という存在が目を覚ましても不思議じゃない。


 そして、案の定と言うべきか僕は周囲から一つの気配を感じ取った。


「キュキュキュッ!!」

「兎?」


 森の草むらから現れたのは立派な一本角を携えた赤い瞳の兎だった。

 だが、僕は異世界の常識によってそいつを知っている。



「えっと……確か名前はホーン・ラビットでこの世界に生きているなら一度は見るというくらいたくさん生息している魔物のはず…………?」


 魔物とは、人を本能的に襲う生物の総称である。

 そいつらから獲れる素材は武器、防具の外にも食料品など様々なものに加工され流通しているのだとか。



 そして、常識によればホーン・ラビットは一匹いたら十匹いると言われる魔物で角っぽいものは触ってみると柔らかく食べられるらしい。


 だけれど、目の前のこいつ以外に仲間はいないし、付いている角がどう見ても人を殺せる鋭さをしているように思える。

 というか、ホーン・ラビットは緑の瞳でこいつは赤い瞳だ。



「……じゃあ、こいつホーン・ラビットじゃない?」

「キュキュ!!」


 何だか嫌な予感がして、思わず数歩後ずさりしたその時、突如として兎の角が高速で回転して突進してくる。


「おっ……し、死ぬ!?」


 すぐに横に跳んで避けたが、僕がさっきまでいた方向に生えていた木に角が深々と刺さっている。

 どれだけ威力が高かったのか、少なくとも僕が放った矢よりは深々と刺さっていた。


 確実に人を殺せる鋭さをしていた。



「嘘だろ!」

「キャキャッ!!」


 そのまま木に突き刺さってくれよと思って矢を放つも、兎の角がドリル回転して穴を拡張しすぐに抜け出してしまった。



「【クリエイトアロー】……っ、当たらない!」

「キュキュキュ!」


 加護のおかげか、動きながら真っすぐ矢を放つのは問題ないがただでさえ的が小さい上にすばしっこくて当たらない。

 相手も、僕の攻撃が当たらないのを理解したのか突進攻撃を何回も繰り返してくる。


 避けるのは容易だが、こんなことを何度も繰り返していれば僕の体力が先に尽きる。

 

(逃げるか、いや街の位置すらわからないのにこんな森の真ん中から背を向けて逃げるなんてリスクがありすぎる)



 待っているのは死、異世界に転生してすぐに死ぬとか失笑もいいところだ。

 今度こそ、無念と後悔の炎に焼かれて地獄に落ちる羽目になるだろう。



 だが、あの時のようにピンチに陥ったからか僕の頭の中は妙にさえていた。


「……そこだね【クリエイトアロー】」

「キャキャッキャー!!」


 その場から動かず狙いを定めるため体を少し屈めて、矢を作り出し弓に番える。


 回避する意思がないと認識したのか兎は嬉々として自慢のドリルを高速回転させながらこちらに“真っすぐ”突撃してくる。



 ピンチはチャンス、なんてよく言ったものだ。

 あのドリルのような角に当たれば僕の体はひとたまりもないが、この一瞬だけが僕の勝ち筋になる。



「確実に終わらせる。【パワーアロー!】」

「キュッ、キュー!!」


 スキルの検証もせず、ぶっつけ本番で使用した【パワーアロー】は、単純に放った矢の威力を上昇させるスキルだった。


 そのため、強化された矢はまるで障子に穴を開けるように兎の体を貫通して奥の木に深々と突き刺さった。



「……っ、ふぅ」


 ついさっき死んだばかりだというのに、また殺されかけることによる緊張感の緩みによって思わずその場に座り込んだ。



【射手座】の加護レベルが2に上昇しました。



 その時、脳内にアナウンスの声がなり僕の射手座の加護レベルが上昇したと知らせてくれた。

 そこそこ大きな声だったため、また兎が襲ってくるんじゃないかと身構える。



 だが、僕以外には聞こえていないようで森は静かなまま襲われることはなかった。



「レベルが上がったってことは何か変わったのか……『ステータスオープン』」



 ステータス

 名前:影山阿歩炉

 種族:人間

 称号:なし

 加護:【射手座(レベル2)】

 加護スキル:クリエイトボウ、クリエイトアロー、パワーアロー、セカンドアロ―

 通常スキル:なし



 ステータス画面を見ると、しっかり加護レベルは2に上昇していたし、加護スキルの欄には新しいスキル【セカンドアロー】が加えられていた。


「新しいスキルかぁ……試してみたいけどさっきみたいにまた魔物を呼び寄せるかもしれないし、今日はじっとしていよう」


 ちらっと、僕が倒した兎に目を向ける。

 このままだと、体は腐りその匂いからまた新たな魔物を呼び込むことになるだろう。


 それに、常識によれば魔物の素材は売ることができる。

 現状は大銀貨三枚とあまり潤沢にあるとは言えない。


「……ふぅ、よし。流石に、肉は日持ちしないしここで焚火を起こしたらまた魔物が来そうだしな。せめて、僕を殺そうとしたこの角だけは回収させてもらうか」


 異世界に来てまだ何も食べていないので兎肉でもお腹に入れておきたい。


 だけれど、スキルを使った影響からか妙に疲れているしこれ以上の戦闘は避けたい。



 ということなので【クリエイトアロー】で生成した矢の矢じりだけを抜き取り固い角を回収しようと格闘を始めた。




 そう、夜が明けるまで格闘し続けるのだった。





異世界メモ:加護

アポロに神様から与えられた力だよ。

加護にはそこから派生する加護スキルが存在してレベルが上昇すると新しいスキルを獲得出来たり、スキルが進化するかも!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ