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第17話・騎士団長



「そこから動くな!」

「はい!?」


 一体目のネストを一撃で打倒したアウストラリス様は僕たちに動くなと警告する。

 その直後、背後にいた二体目のネストの口が開き溶解弾の生成が始まる。



「口を閉じろ【パワーアロー!】」



 まるで、瞬間移動のような速度でネストに迫ったと思えばスキルを発動して思いっきり頭を殴り飛ばし、地面に叩きつけた。


 今の一連の流れでも溶解弾の拡散を封じ、ワーム共通の弱点を一撃で粉砕し、被害も最小限に納めて見せた。



 もはや、目が点になるほどの異次元な動きを見せられて二人とも呆然としているが、ともかく何で殴ってるのにパワーアローが発動しているんだろう。



「こんなものか……おい、そこの二人けがはないか?」

「はい!!」

「は、はい!その、騎士団長のアウストラリス様ですよね……あ、憧れです!」


 プロンの反応もとてつもない。

 元は騎士志望で、両親も騎士であったためより憧れが強いのだろう。



「私を知っているのか、応援ありがとう。ピンチを切り抜けてすぐで悪いが現在町は魔物の襲撃を受けている。騎士団が手分けして対処しているがいかんせん数が多い。よければ、掃討を手伝ってくれないか」

「もちろんです。いいよね、アポロ」

「うん、早速行こう。僕なら魔物の気配なら粗方わかる」

「……いや、少し待て」


 彼女の提案を了承し、すぐに気配を確かめた後に駆け出そうとした瞬間、思い出したように呼び止められた。


「射手座の加護を持つお前の名前はアポロと言うのか?」

「え、はい。そうですけど……」

「……そうか、なら明日の昼迎えに行く。色々、準備をしておけ……さらばだ」


 少し考えた素振りを見せた後、僕の手の甲に触れたと思えば、すぐ後には彼女の姿はそこにはなかった。


 というか、迎えに行くとはどういうことだ。


 もちろん、言葉としての意味が分からないわけじゃないが、初めましてなのに突然言われても恐怖しかない。



「あ、アポロ!迎えに行くってどういう事なの!?実は、昔から知り合いだとか……やっぱり、アポロってサジタリウス家の人だったとか!?」

「いや、それはないよ。多分、僕が【射手座】の加護を持っているから珍しい……から、とかじゃないかな」

「うーん、確かにそうかもしれないけど……」


 異世界人の僕にはこの世界に家族はいない。

 まあ、生前も家族はいたかと言われたら妹くらいしか思いつかない。


 だとしたら、呼ばれる原因は加護くらいしか思いつかない。

 そうだと結論づけたいが、あの人は僕の名前に何か引っかかりと覚えたようにも見えた。



「……とりあえず、今は魔物を倒してこの街を守ろう。話はその後だ」

「うん、ここら辺の魔物を倒せばお兄ちゃんも守れるしね」


 結局、結論が出る訳もなく僕たちは続々と現れる魔物たちとの戦いを始めた。


 現れた魔物は全てワーム種で、普通のケーブ・ワームだけじゃなくマトル、メタル、その他の上位種も次々と現れるというカオスな状況が続いていた。



「【ホーン・ダウン!】」

「助けに来ました!下がっていてください」

「ありがとうねぇ……」


 それでも、戦うしかないので基本的にはプロンが動きを止めて、そこを僕が倒しきるという戦法で大体何とかなっていた。



「【鑑定】って、こいつネストだよ!?溶解弾が来る!!」

「またかよ!【パワーアロー】【セカンドアロー】【ダブルショックアロー】」


 それでも厄介なのはケーブ・ワームとほぼ同じ姿のネスト・ストラクチャーワームで固い、強い、空を飛ぶの三拍子が特に厄介だった。




 その上、現在の僕たちの攻撃力は足りず表皮を完全に剥がして倒すのには時間がかかるし、それまで生きていられるとも思えない。

 どうしようかと、苦悶の表情が浮かんだその時だった。



「冒険者ですね。助けに来ました!」


 なんと好都合なことに甲冑で身を包んだ騎士が現れたのだ。


 僕はこの時には知る由もないが、スタンピード発生からちょうどこの時に騎士団長を先頭に次々と騎士たちが街に散らばり戦い始めていたのだ。



「増援!?騎士さん、こいつはネスト・ストラクチャー・ワームと言って脱皮や溶解弾、空を飛んだりする厄介な相手です」

「ネスト……あれですか。でしたら、奴には弱点があります。そこを突きましょう」

「弱点なんてあるの!?私の鑑定じゃ見えなかったのに……」


 あのネストに弱点なんて見当たらないように思えるが、逆に弱点がない生物がいる方がおかしいとも考えられる。


 それに、弱点を突けるならそれに越したことはない。


「奴の弱点は寒さです。寒いと体の粘膜が凍って攻撃が通りやすくなるのでそれを狙います」

「寒さですか、生憎ながら僕たち二人には凍らせるようなスキルは持っていないんですよ」


 残念だが、これを知っていたとしても先輩が助かることもその後の戦いが楽になることもなかっただろう。


「問題ありません。私が凍らせるので、攻撃をお願いします【ブルー・マジシャン!】」


 騎士さんはスキルを詠唱するとホーン・ダウンで動きが鈍っているネストに小型の吹雪のようなものが降り注ぎ体が凍っていく。


「自然現象を操ると言われるマジシャン系のスキル!それを、これだけ精密な操作をするなんて!?」

「了解です【パワーアロー】【セカンドアロー】【ダブルショックアロー】」


 すると、今までは一撃で一枚しか剥がれていなかった表皮が凍らされたことで易々と砕けるようになり一気に何枚も貫通できるようになっていた。


 そして、やがてこれを繰り返し続けることでネストの脳天を貫き打倒することができた。



「すごい、あっさり倒せちゃった……」



 ポラリス先輩を殺して、僕を瀕死にまで追い込んだワームがこれだけ簡単に倒せてしまったのを見て何とも言えない気分になってしまった。



 その後、僕たちはここで出会った騎士さんと共に街にいた魔物を次々と倒していった。



 そして、現地にいた冒険者や騎士たちの力によって次々と騒動は収束していきあっさりとスタンピードの幕は下りたのだった。




 ***




 スタンピード発生から翌日――


 魔物によって破壊された街の復興が既に始まっていた。


 昨日はたくさんあったワームの死骸は片付けられていた上に、壊れていた近くの家屋も騎士たちが直すのを手伝っていた。




 本当なら、昼の予定のために集合場所とかに行きたいのだが、当のアウストラリス様は迎えに来ると言っていただけなので行くにも行けなかった。


 ということで、僕とプロンはと言うと騎士たちと並んで復興作業を手伝っていた。


「はーい、アポロちゃん。プロンちゃん。そろそろお昼だから休憩しましょうね」

「あ、はーい!アポロ、休憩しようってさー!」

「わかった、後ここの瓦礫だけ集めておくから、先に行っててー!」


 前世では、あまりたくさん食べれなかったので筋肉がつかず重労働は苦手だったが今世では体が軽い上に加護の力もあってむしろ楽しくなっている。



「【パワーアロー】……無理か」


 作業途中、瓦礫が目に入ったのでアウストラリス様がやったように矢以外でスキルを発動させることが出来ないかと思ったが全く意味はなかった。


 それとも、ぶん殴る時にしか発動しないのかもしれない。



「待て、いたずらに拳を痛めるだけだぞ」


 そう考えたため、今度は殴ってみようと拳を振りかぶった直後に声がかかった。

 どこか聞き覚えのある声に咄嗟に撃つ拳を止めて声のかかった方を見た。


「朝から復興作業を手伝っているとは精が出るな。それでは行くか」

「……は、はい?」




 ***




 アポロは先に行っててと言っていたが、待っていたら来るのがいつになるのかわからない。

 なので、プロンはおばちゃんに出してもらった飲み物とお菓子を持って彼を呼びに行った。


「ふふふ~ん、アポロにご飯持って行ってあげよ。アポロは放っておくとずっと作業してそう……だ、し……?」


 だが、そこで見た光景は驚愕のものだった。


「な、何するんですか!?」

「迎えに行くと言っただろう。ほら、行くぞ」

「誘拐だ!?」


 瓦礫を片付けていたはずのアポロが昨日出会ったばかりのアウストラリス様の脇に抱えられて今にも誘拐されそうになっていた。


 アポロは何とか足をバタバタさせ抵抗していたけど、全く意味はなさそうだった。


「アウストラリス様、待ってください!アポロが何したって言うんですか」

「プロン!?」

「別に何もしていないが、こっちの方が効率がいいと言うだけだ。お前は、こいつの仲間か?」


 何故だろうか、アウストラリス様の視線がグッと強くなったような気がした。

 だけれど、アポロが連れ去られそうなのに怯むわけにはいかない。


「ッ、はい!なので、仲間が理由もわからないまま連れて行かれるのを見過ごせません。申し訳ありませんが、返してもらいます!!【ホーン・ドライブ】」

「ふっ、やれるものならな」


 スキルを発動させて持っていた角、合計十本を同時に動かしアウストラリスへ時間差で放つ。


「威勢は良いが、いかんせん直線的過ぎるな」

「それが狙いですから【ホーン・ダウン!】」


 最初に間合いに入った三本はすぐさま指の間でキャッチされて身動きが取れなくなる。


 それに続いて向かっている五本の角、それらが間合いに入った瞬間にホーン・ダウンを発動させて最初に放った角を持っている腕を下に叩きつける。


(これで、接触している角は合計八本。流石にこれだけ、角があればホーン・ダウンで十分動きを止められるはず!!)

「いいスキルだ……だが!!」


 プロンの予想とは裏腹にそもそも、五本の角が着弾しようかと思われた次の瞬間に単純な指の握力によって角が砕かれる。


 そうなってしまえば、ホーン・ダウンが強制的に解除されてしまい彼女が完全に自由になる。


「早っ……!?」

「なるほど、良く鍛えられている。出力も高い、操作も精密……磨けば光るな」


 瞬きの間に、五本の角はアウストラリス様を地面に叩きつけてやるどころか逆に地面に叩きつけられており、彼女は既に私の隣に立っていた。

 それが、私がアポロ一緒に連れて行かれるまでの最後の記憶だった。





異世界メモ:マジシャン系スキル

この世界では最も保有例が多いスキルだよ。

ざっくりと説明するとレッドなら、火とか熱を操るね。ブルーだったら今みたいに凍らせたりできるよ。



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