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序列10位 シャンクパドマニール・カラブアラブラーク/阿頼耶沙

名前迷ったけどこのまま

『理解不能』


 モニタの先に移る3つ目のそれに、感情の動きはない。


「上位知的生命様も分からないことがあるらしい」


 この星のトップと軍の代表は、10万光年離れた星々で会談をしている。


 本来そこまで離れた距離に対してリアルタイムで意思疎通する方法を、人類はまだ持ち合わせていない。


 これは敵族がわざわざ人類用にダウングレードしたものを用意してもらっているものを使用しているだけだった。


『この場は、猿型原住民が降伏する場のはず』


 10年前、上位知的生命体は太陽系に生活圏を広げた人類に対して宣戦布告をしかけた。

 当然、人類は抵抗らしきものを行った。

しかし、銀河を超えることのできない彼らに、銀河の外から攻めてくる生命体と正しく戦争をすることはできない。防戦一方の敗戦処理しかできなかったのは自明の理である。


 完全に滅びなかったのは、本部との距離が10万光年離れていることと、奴らの目的が資源であり星そのものを傷つける気はなかったことだ。


「我々が自滅して資源が減らないよう、上位知的生命様は時間的猶予を与えていただいた。その猶予の合間に人族は迅速かつ平和的に絶滅する手段を考えそれを実行する。今回はそのロードマップをここで報告する。そのはずだった」

『同意。我々と猿型原住民の戦力差は絶大である。それすら分からないとは言わせない』


 上位知的生命体は最も合理的主張をした。

 銃を突きつければ命令に従う、従わなければ撃つ。

 単純が故の自明な理。


 それだけで宇宙の4割を支配した上位知的生命体ことバル星人。

 宇宙で最も恐れられ、最も畏怖される彼ら。


 知っていれば道をあけ、知らなければ三下の低能種族。


 売られた喧嘩は全て勝利し、滅ぼした星や種の数は億を越える。


 そんな彼らに対して


「もう一度言う。君たちに明け渡すより先に、僕はこの星を売った。そのことを伝えに来た」


 人類の代表は喧嘩を売った。


『理解不能』

「ある企業が僕らの星を一帯事買いたいって打診があったからね。色々手筈は大変だったけど、多数決により売ることが決まった」


 上位知的生命体は理解できない。

 こんなふざけたことをされた経験がない。


 何億年続いた歴史の中で、初めてのことであった。


『理解不能』

「僕らはその企業の庇護下に入るから、戦争したいならそっちにケンカを売ってくれ」

『理解不能、理解不能』


 上位知的生命体に初めて感情らしきものが見え隠れする。

 それは果たして、怒りか混乱か。


「……解析結果:この宇宙領域内において、我々=上位知的生命体群を凌駕する存在体または組織体、検出不能。結論:上位知的階層における最終到達点=我々。」

「だろうね。みんな同盟を持ちかけてもお前らの名前を出すだけで逃げ帰っていった」

『妄言と判定。推奨処理:思考中枢の交換、もしくは代替演算個体の用意を要請』

「初めから、そのつもりだ。これからは総帥のぼくではなく、社長の彼女が引き継ぐ」


 そういうと画面が切り替わり、一人の女性が映し出される。


 上位知的生命体にマナーという概念はないが、彼らにマナーというものがあることは知っている。フォーマルな格好をしていない。


 何しろ上はジャージ、下は股引で映っているのだから。


 この女も自分たちをなめている。

 違う。

 この女が舐め切っているから奴らが上位知的生命体に対して無礼を働いた。


「ここからは儂が話すさかい」


 恰好からは想像できない気品に満ちた声だった。


「シャンクパドマニール・カラブアラブラーク/阿頼耶沙。姓は阿頼耶沙やから呼ぶときはその認識で頼むで」


 その星の命名規則にはない名前だった。


『……』

「こっちから伝えたいことは2つや」


 咳ばらいを一つ間に挟む。

 ふざけた格好、ふざけた名前、そんな彼女から初めて発せられる真面目なこと。


「社員は家族。子に手を出したら親は怒る。こいつらはもう家族になったから手を出すなら儂らが相手になる。ちなみに年中求人募集中やから。お前らの場合、年俸100万でどうや」


 それは自分の会社がアットホームであるという大々的なアピールだった。


『認識差異を確認。

状況評価:こちら側、戦闘行為未実行。

補足観測:猿型原住民側、独自に抵抗行動を想定中。実態=非攻撃』

「そうか。そういうと思った。だからあの評価なんや」


 双方自分の主張を歪めることはない。

 これは商談でもなく交渉でもない。


『我々の兵力総数を正確に把握していないと判断。

補足:情報欠落率、致命的水準』

「そうなんか。どれくらいや」

『兵士級232340235623432315541体、母船級4546474325535224224体、惑星級3254353255体……』

「もうええって。数を数えるのがお得意なことは分かった」

『当該過小評価は戦略的誤算を誘発し得るため、容認不可。 我ら――――その実力を過小評価する者に対し、対応策を選定中』


「こっちは10の100乗や」

『――――――』

「全軍で相手するきはないから、安心せい。企業なんやから損益は考えとるで」

『発言内容=虚偽と判定。判断:当該申告、信頼性=ゼロ。処理対象外』

「ええって言いとるやろ。ちなみにもう一つの伝えたいことなんやけど」

『対話継続不要と判定。指令:即時停止、処理―――――【hello world. 聞こえてます?】』

「聞こえてるでー」


 もう星と星との戦争の空気ではない。

 ただの緩い会議の有様だった。


「うまくいったようやな」

『はい。完全にハッキング出来たわけではないので、ブラックボックスの解明は必要ですけど、コア部分の掌握は終わったので報告しました』


 シャンクパドマニール・カラブアラブラーク/阿頼耶沙は、終末否定俱楽部で唯一といっていい非武闘派の人間である。その彼女が終末否定倶楽部という超越者の組織内で末席とはいえ入部できているのか、それは彼女が持つ組織力。軍事力が要因である。


 今回は一つの生命体による生命ネットワークが構築されている構造だったため、ハッキングが得意なエンジニアを派遣した。ただそうでなくとも企業が持つ軍事力だけで彼女たちはこの生命体を制圧せしめた。


『あ、すみません。最後の力で盛り返されそうなんで、少し落ちますね。3分ほどお待ちを』

「やるやん。見くびっとったわ。待機させとる戦略兵器出すけどどうする?」

『いらないです。そんなのよりエナドリください。では』


 宇宙規模のネットワークをハッキングできた技術者がすごいのか

 そんな相手に数分とはいえ奪い返した上位知的生命体がすごいのか


 誰一人、興味はなかった。


『――――理解不能、理解不能』

「やってること自体は理解できるやろ。概念自体はむっかしからあるバックドアをつかったハッキングや。こんなの理解できない知的生命体はおらんで」

『……分析結果:貴殿=超上位知的生命体。こちらの情報収集プロトコルおよび安全機構に欠陥を検出。認識:自己の過失。しかし、疑問:なぜ上位存在が下等知的個体群へ協力行動を選択? 論理的整合性、確認不能』


 資源の為に星を侵略する側が発するとは思えないもっともな意見である。


「金になるからや」

『』


 なぜ終末を否定するのか。


「征服、虐殺? あかんあかん。金にならん。だから許さん。それだけや」


 資本主義。

 それがシャンクの有様。


「一つの意思。そういうのもええやろ。ただそれしたら金にならん。不格好でも不ぞろいでもばらけや個体差が金になるんや」

『理解不能領域:動機=説明不能。認識差異=存在』

「やろうな。正直な所、システムとして優れてるんはそっちかもしれん」

『前提条件確認。提案内容=技術提供および共同参画。評価:受容可能性大。処理待機中。詳細条件確認待機中』

「せやけどな」


 蟻のように一つの組織が完璧に統率を取れる集団こそが理想かもしれない。


「力を持っている方が強い。猿でもわかるで」


 だが所詮、蟻は蟻なのだ。


「そりゃこっちの組織をお前達みたいに組織化できればもっと上にいけるかもしれん。でもそうなるためにこっちは色々なことやってきた。えぐいことドン引くこともやってきて、死体の山の上に妾がいる」


 幾らシステムとして優れていようが、そうなるための前提がそろわない。

 より強い食物連鎖に、蟻は食われるのみである。


「もう一つ伝えたいっていったのはそういうことや。お前達は一人で完結しとる。それは決して美徳やない。ただの致命的な欠点や」

『……解析結果:発言内容=否定。判断:提案、断固拒絶。受容可能性=完全ゼロ。警告:当該行為、絶対に許容不可』

「せやろうな。仮に逆の立場で言われても、絶対に否定する。だから妾はお前を愚かだとは思わん。そんかわり、話すことはもうない。終わりなんや」

『F異常を確認、致命的損傷を確認。リカバリー不可。救援要請。救援要請。救援――――』


 それから先の言葉はなかった。


 会議室の後ろで大歓声が鳴り響く。

 それは侵略種が完全に駆逐された故の理由。

 納得の雄たけびだった。


 ただその中で、シャンクも苦虫を噛んだかのように途切れた画面を見る。


 咆哮のような歓声が、騒音に変わるまでシャンクだけが無言でいた。


「もうええやろ。ビジネスの話をするで。これからビシバシ働いてもらうからな」

「そのことなんですが、戦争してたのでまずは復興の方を」

「当たり前やろ。復興して人力を十全に活用せな、金にならん」

「あ、ありがとうございます!」


 馬車馬のように働ける機械も、それを可能とする技術もいくらでも用意できる。

 必要なのはそれをする人間とさらに消費する人間。


「だから、感謝は不要や。それにもう一つのこと忘れるんやないで」

「はい。ゴルボールの普及と、ウィズ酒の提供ですよね」


 もう一つ、シャンクの趣味。

 スポーツ観戦や酒を飲むこと。


 しょうもないことかもしれないが、そのしょうもないことに金が絡むのも資本主義の真実である。


「せや。ナイスショットされたくなかったら忘れるんやないで」

「------」

「わ、笑い所やぞ」


 そこにいる彼らは、皆リーダーとして人心やコミュニケーション能力に長けていたが、その致命的な親父ギャグは、分かってても誰も笑えなかった。




10位 シャンクパドマニール・カラブアラブラーク 阿頼耶沙 財 茶

プロトコル:経済的観点から解決すると利益になる終末、もしくは解決しないと損益になってしまう終末に介入

概容:宇宙や異世界間で取引をする企業の長。財力を操り組織の資金管理を担当。利益重視で積極的に動く。開発した武器や所持している軍を利用して問題解決を行う

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