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本日の『遭難者』(その四)
おばけ屋敷の外を、一人の男子大学生が走っていた。
給食当番の服装をしていて、それには大量の血がついている。
「六番、了解!」
耳につけている小型無線機にそう告げると、大学生のキョータローは汗びっしょりになりながら走る。
八月の炎天下だ。遊園地のあちこちにあるエアコンの室外機からは、高温になった空気が排出されている。
それらをよけることなく、キョータローは最短ルートを突っ走った。ある場所を目指して、とにかく急ぐ。
少し離れた日陰には、親子連れがいて、
「あれ何ー?」
ソフトクリームを持った小さな女の子が、キョータローを指差している。
すると、その母親が笑顔で、
「何だろうねー♪」
遊園地を激走する、血染めの給食当番大学生だ。大人ならともかく、子どもの目には、不思議に見えて当然だろう。
しかし、そんな声を気にせずに、キョータローは走り続けた。
目的地が見えてくる。
古い売店だ。外の花壇では、いくつものヒマワリが枯れかけている。
キョータローは店の中に飛びこんだ。
「すみません。また『遭難者』が」




