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本日の『遭難者』(その三)
梅雄の言葉は小型無線機を通して、おばけ屋敷のあちこちにいる者たちに伝わる。
一人目がいるのは体育館倉庫の前で、
「一番、了解」
そう答えている間もずっと、二つのボールを床でついている。
そのボールにはどちらも、人間の生首が描かれていた。
二人目がいるのは理科室で、
「二番、了解」
血染めの白衣姿で、今まさに始めようとしていた手術を、即座に中止する。
理科室の机の上では、人体模型が横たわっていた。
三人目がいるのは音楽室で、
「三番、了解」
そう答えながら、グランドピアノの前に座っているのだが・・・・・・。
そのピアノについた無数の目が、一斉に音楽室の入り口を向く。
さらに別の場所。
ある廊下の壁に、なぜか便器がついていて、
「五番、了解ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
目を血走らせた男の上半身が、便器の中から飛び出してきた。
彼らは、このおばけ屋敷のバイトである。
そして、もう一人――。