本日の『遭難者』(その十八)
その頃、売店にいるキョータローは、窓の向こうにあるおばけ屋敷を見ていた。
本部からの無線を聞いた。『今日はおばけ屋敷日和だ』、つまりは、『非常に危険な怪奇現象が発生。最大レベルで警戒せよ』。
あの中は今、大変なことになっていると思われる。
(みんな、大丈夫かな)
自分だけ安全な場所にいる、その幸運に感謝した。
(それにしても、今日は暑いな。設定温度をもう少し下げよう)
キョータローはおばけ屋敷の方を見ながら、エアコンのリモコンを取る。
そして、「ピッ」。
と同時に、おばけ屋敷の中から明かりが消える。
(え?)
予想外のことに、キョータローは驚いた。
売店の外からは、
「停電か?」
「急に冷房が止まったぞ!」
そんな声が聞こえてくる。
売店の中でも、エアコンが止まっていた。扇風機の回転も急に力を失っている。
さらに、耳につけている小型無線機からは、
「ぎゃあああああああああああああ!」
「いきなり明かりが消えたあああああああああああ!」
仲間たちの声だ。
(ひょっとして、俺のせい?)
キョータローはそっと、エアコンのリモコンを置いた。
今の「ピッ」で、このあたりの電気供給量を超えてしまったのかも。
そういうわけで現在、おばけ屋敷は停電中らしい。
それと同時に、怪奇現象も発生中だ。
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああ!」
「出たああああああああああああああああああああああああああ!」
仲間たちの悲鳴が聞こえてくる。
キョータローは耳の小型無線機をそっと外した。
停電になったおばけ屋敷を、売店の窓から眺めつつ、
(おばけ屋敷のバイトは大変だ)
心の中でつぶやいた。
ご愛読ありがとうございました。