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本日の『遭難者』(その十三)
再び売店。
キョータローはエアコンの冷気を浴びながら、【救助マニュアル】のことを考えていた。
(『遭難者』を見つけても、すぐに近づいてはいけない)
おばけ屋敷の中にいるのだ。当然ながら、『遭難者』は非常に警戒している。
そこにいるのが、「本当に生きた人間なのか?」と。もしかしたら、「本物の幽霊」なんじゃ・・・・・・。
そのため、『救助隊』が下手に近づくと、『遭難者』がパニックに陥ったり、別の場所へ逃げてしまったりがある。
そんな過去の失敗から、【救助マニュアル】では次のように指示していた。
まずは足を止めて、優しく声をかけるのだ。
おばけ屋敷の中で、ムーちゃんとアンラク氏はまさにそうしていた。
「あー、良かったー」
「ここにいたんですねー」
笑顔で手をふって、『遭難者』の様子をうかがう。
男の子はパニックになっていない。
それを確認してから、
「足をケガしていませんか?」
「自分で歩けますか?」
そんなことを言いながら、ゆっくりと近づくのだ。
そのように、【救助マニュアル】には書いてある。




